生き方の多様化を示す世帯の多様化 | 考えてみよう

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あなたは何人世帯ですか?
2030年には一人暮らし世帯が全世帯の37%と、様々な種類の世帯の中で最も多くなるという推計が出されました。
「おじいちゃん、おばあちゃんと一緒」の三世代家族が主流であった時代から、「サラリーマンの夫と専業主婦の妻、2人の子ども」が標準となった時代も過ぎ、いよいよ本格的な「世帯の多様化」時代に突入です。


厚生労働省国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(2008年3月推計)によると、2005年と2030年の比較で、増加するのは「単独世帯」ならびに「ひとり親と子から成る世帯」。

一方で減少するのは「夫婦のみの世帯」「夫婦と子から成る世帯」「その他の一般世帯」とのこと。


「単独世帯」を詳しく見てみると、2005年には1,446万世帯、29.5%を占めていますが、これが2030年には1,824万世帯、37.9%と、まさに「日本の標準世帯」となります。

特に目立つのが、いわゆる「独居老人」と言われる65歳以上の高齢者の1人暮らし世帯。

2005年には387万世帯であったのが、2030年には717万世帯と、四半世紀の間に約1.9倍、単身世帯の39%を占めることになります。
また「ひとり親と子から成る世帯」も増加する推計となっています。2003年の411万世帯から、2030年には503万世帯へ。
一方で2005年では最も多い「夫婦と子から成る世帯」は、1,465万世帯、29.9%から、2030年には1,070万世帯、21.9%まで減少します。

かつては一般世帯総数の40%を占め、「日本の標準世帯」であった「夫婦と子」でしたが、減少の一途をたどっています。


こうした「世帯の多様化」の背景には、「生き方の多様化」があります。
「単身世帯」の増加には、「高齢化」はもちろん、「非婚化」が急速に進んだことが、数値を押し上げる要因となっています。
また「ひとり親と子から成る世帯」の増加は、離婚の増加が主因です。

3秒に1組が離婚する日本社会。2030年には10世帯に1世帯が、シングルマザー・シングルファーザー、もしくは連れ合いを亡くした老親と独身の子ども(「パラサイト・シングル」という言葉も一時期大流行しましたよね)の世帯となります。

これだけ世帯、生き方が多様化してきたにも関わらず、国の制度は、これまでの画一的な見方に捉われているようです。

例えば「宙に浮いた」騒動で話題の年金。

厚生労働省が支給の「モデル」としているのは、「夫は20~60歳の40年間働いた会社員で、平均月収(平均標準報酬月額)は36万円。妻は20~60歳の40年間、専業主婦」という世帯です。

前回のトピックスでも紹介した「労働力調査」が開始された1953年以降、半世紀以上継続して、女性の労働力人口比率は45%を超えているにも関わらず、「専業主婦」がモデルとなっているのです。


東京大学大学院教授であり、ジェンダー学がご専門の、上野千鶴子さんの著作「おひとりさまの老後」が60万部を越えるベストセラーになっていることからも分かるように、私たちは既に、「一人暮らし世帯」になることを実感し、将来に備えた行動を取りつつあります。
「世帯の多様化」から垣間見える「生き方の多様化」。ダイバーシティはこんなところにも表れているのですね。


2008年3月15日付「日本経済新聞」


「日本の世帯数の将来推計」が掲載された厚生労働省国立社会保障・人口問題研究所HPはこちらをクリック
http://www.ipss.go.jp/
女性の労働力人口が掲載された総務省統計局「労働者調査」はこちらをクリック
http://www.stat.go.jp/data/roudou/
上野千鶴子著「おひとりさまの老後」はこちらをクリック

http://www.amazon.co.jp/%E3%81%8A%E3%81%B2%E3%81%A8%E3%82%8A%E3%81%95%E3%81%BE%E3%81%AE%E8%80%81%E5%BE%8C-%E4%B8%8A%E9%87%8E-%E5%8D%83%E9%B6%B4%E5%AD%90/dp/4879546801/ref=pd_bbs_sr_1?ie=UTF8&s=books&qid=1206083111&sr=8-1