3秒に1組が離婚する国、日本。
2006年の離婚件数は25万7千件にのぼります。
離婚件数とともに増えているのが、ひとり親家庭。
母親、もしくは父親と子どもで構成される家庭です。
厚生労働省は母子家庭の母親の就業支援を打ち出しました。
現在ひとり親家庭はどのような環境にあるのでしょうか?
今回厚生労働省が打ち出した母子家庭の就業支援は、母子家庭の母親をパートから正社員に切り替えた中小企業に、一時金として15万円を支給するというもの。
2008年度から制度化される予定です。
母子家庭の母親の85%は仕事をしています。
ところが半分はパート勤務です。
世帯年収の平均は213万円、うち就労による収入は171万円(ともに平成17年)と、女性給与所得者の平均271万円(平成18年)と比較して、50万円以上の差があります。
女性給与所得者には、世帯主の夫がおりパートで働いている方、一人暮らしで養育費を稼ぐ必要のない方、未婚で親と同居しており家計を担う立場ではない方等を含んでいますので、「家計を担い、かつ養育費を稼いでいる母子家庭」の生活がどれほど厳しいものであるかが分かります。
女性は男性より賃金が低く設定されています。
2005年の男女賃金格差(女性賃金が男性賃金と比べ何%低いか)は32.0%。欧米と比較して大変高い数字となっています。
そこに「夫の収入が得られない」「子どもがいるため長時間残業、転勤は難しい」といった条件が加わり、ますます収入を押し下げています。
そんな中、2002年度の「児童扶養手当法」改正により、母子家庭に支給されている「児童扶養手当」が、2008年度から削減される予定になっていました。
「児童扶養手当」とは、母子家庭に所得に応じて世帯当たり月額9,850円~41,720円(子どもが1人の場合)を支給する制度、母子家庭の母親が子どもを安心して育てるために、なくてはならないものです。
ところが「母子家庭の就労による自立を促す」という目的により、「受給期間が5年を超える世帯は、2008年4月から手当を最大で半減する」ことが決定されていたのです。
幸いなことに、野党からの改正案提出の動き等もあり、削減は事実上凍結されました。
収入だけを見ても大変なことが伝わってくるひとり親家庭。
これが父子家庭となると、さらに悩みは複雑になります。
平成17年の母子家庭が約74万9千世帯であるのに対して、父子家庭は9万2千世帯。
母子家庭と比較すればまだまだ少ないものの、平成12年の8万7千世帯、平成7年の7万1千世帯から比較すると、着実に増加していることが分かります。
父子家庭の世帯年収の平均は421万円、うち就労による収入は398万円と、母子家庭と比較すれば高いものの、男性給与所得者の平均539万円(平成18年)と比較すると、100万円以上の差があります。
これは離婚により、これまで妻に任せていた子育てを自分が担うことによって、これまでのような働き方ができなくなる、場合によっては転職せざるをえない状況が発生するためです。
徐々に変わりつつあるといってもまだまだ終身雇用、年功序列が残る日本企業では、特にある程度の年齢になった男性の転職は、収入面においては非常に大きなリスクを抱えることになります。
家事をやったことがなければ、料理は出来合いのものを購入、残業のある職場ならば、帰宅まで子どもを預かってくれるサービスを利用する等、母子家庭にはない出費もかさみます。
それに加えて、母子家庭に支給される「児童扶養手当」は、父子家庭は対象外です。
「子どもは(離婚した場合でも)母親が育てる」方針が、こんなところにも表れています。
2008年1月からフジテレビ系列で放映されている「薔薇のない花屋」では、SMAPの香取信吾さんがひとり親家庭の父親を演じています。
「世帯のかたち」や「親の性別」によって差別されるのではなく、「一人ひとり」の生き方を支援できる社会になること、ダイバーシティの社会が実現されることが、すべての親子が安心して過ごせることにつながりますね。
2008年2月3日付「日本経済新聞」より
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-setai06/index.html
↓2006年の婚姻・離婚件数が掲載された「人口動態統計」結果はこちら
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http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei06/index.html
↓ひとり親世帯数が掲載されている「国勢調査」結果はこちら
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http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/index.htm
↓民間給与実態調査」が掲載されている国税庁のHPはこちら
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