ママの退院 | 阿蘇の国のクララ

 

「クー!」

 

ママ...、

パパとふたりで冬の久住山に登ったよ。

 

私たち...見える?

 

いつかまた、一緒に登ろうね。

 

病院へ...

 

「...ママ、元気かしら?」

 

空を見上げ、雨を顔で受けました。

 

この冷たさが、

いい加減に目を覚ませと

身に起きた現実を教えてくれました。

 

「...そろそろかな?」

 

ママのもう消えないかもしれない

転移したがんという時限爆弾を思うと、

感傷的になることもあります。

 

※12日間の入院でした

 

でもいまはそれ以上に、

ママが自宅に戻って

一緒に暮らせる時間を、

何よりありがたいと感じています。

 

ママはしっかりと私を抱きしめてくれました。

 

「クー...泣いてるの?」

 

ママが入院してから、

悲しみよりも、

幸せが淋しさを

誇張させるのだと知りました。

 

菊池神社

 

「パパがこのあと温泉に入ろうって♪」

 

「よかったね♪」

 

雨は降っていたけれど、

風は冷たくありませんでした。

 

ママが入院をする前の風とは、

あきらかに違っていました。

 

パパ

「...今年も福みくじ引こうかな♪」

 

「...六等来い!」

 

「もっと、六等を!」

 

「もっと!もっと!」

 

ママは固まったからだをほぐすように

ゆっくりと歩きました。

 

ママの新しい薬はローブレナ...

 

ブレは頭という意味だそうです。