本当に悲しかったことを、人は憶えていられないのかもしれない | 阿蘇の国のクララ

 

7月14日(水)...

 

「雷雲が近づいてきた...」

 

「急ごう!」

 

「水はどうかな?」

 

「普通」

 

私たちは青葉の香りの強い山中を歩き、

川へと向かい合いました。

 

青葉の瀬

 

川はおだやかに流れていました。

 

「サチさん、一緒に遊ぼう♪」

 

サチさん(10)は、去年7月31日、

この場所でおぼれて亡くなった少女です。

 

「今度、そうめん流ししたいね」

 

「...キャンプ場で遊ぼうか?」

 

「クー」

 

(楽しかった、また遊んでね...)

 

(私のこと忘れないでね)

 

その時ふと、

自分のものではない声が

聞こえたような気がしました。

 

息を詰めて、耳を澄ましました。

 

もう一人の声が

私の声に重なって、

同じ言葉をなぞり、

その残響がまだ、

耳の奥に残っているような...

 

忘れないでね。

 

「忘れないよ、また遊ぼうね!」

 

クルミ

 

丸重本舗(山都町)

 

「矢部のケンチキ買って帰ろうか?」

 

「3本ください」

 

水神社(御船町)

 

吉無田水源

 

七夕の節句食は、

そうめんなんだそうです。

 

7月7日の命日に、

そうめんをともに食べることで

しあわせを願うんだとか...。

 

私は今更ながら思い知る...

 

本当に悲しかったことを、

人は憶えていられないのかもしれない。

 

「クゥ」