YOU THE ROCK / THE SOUND TRACK '96 | 5000VOLTもの電撃を受けるとシビれます

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自分がビリビリと刺激的電撃を受けたCDやレコードなどの音を中心に、レビューっぽい感じで綴っていきます。よろしくです。



JAZZY JEFFとのメガネ繋がり+日本のウィルスミス願望発言。必然的にYOU THE ROCKを書く流れになった。96年4月発売の3rd「THE SOUND TRACK '96」。今作からDJ BENと離れて独り立ち。

過去に当ブログで散々YOU THE ROCKをこき下ろしてきたけれど、けして彼が嫌いな訳ではないし、このアルバムが出た当時、まだHIP HOPに触れ始めたばっかりで、様々な盤やミックステープに手を出していた熱心なヘッズと化した俺には、これは正に愛聴盤だった。友人からの影響もあったのだろうけど、当時の国産HIP HOPは殆ど聴いていた。

1曲目「INTRO」はテープをBOOM BOXにセットする所から始まる。2曲目「MIC MASTA」はDEV LARGE制作で、YOU THE ROCKの愛称でもある「真っ赤な目をした梟」というフレーズが飛び出す。夜にクラブで活動する、その夜行性のライフスタイルをなぞらえて梟と称したのだろう。大阪のLOW DAMAGEがオリジナル梟だとYOU本人も言っていたから、サンプリングした愛称ではあるが(笑)

3曲目「GOTA FLAVOR」は同年に発売された、さんぴんCAMPのサントラに後に収録される曲で、この珠玉揃いのアルバムの中からコンピへの収録曲を選ぶのなら、俺も確かにこれを選ぶだろう。イノベーダー制作のトラックは当時のトレンドとも言える、暗く重く遅いビート。そこに乗るYOUのRAPも、ハーコーなリリックで良い。4曲目「REAL SHIT Pt. 1」は、当時のヘッズを虜にしたラジオ番組、YOU THE ROCKのHIP HOP NIGHT FLIGHTのオープニング風味で、5曲目「FUKUROU (YAKANHIKOU)」はそのテーマ曲だった。当時はこのプログラムの事を知らず、テープに録ってた友人から後で聴かせてもらった(そもそも福岡まで電波は届いていたのだろうか?)んだけど、当時のHIP HOPシーンの、今にも沸点に届きそうだが、それでいて爆発する機会を伺っているような、あの空気感や熱気が詰め込まれた番組だった。フリースタイルなんかは今聴くと稚拙なライムしか出てこないか持ちネタ使用のどちらかだが、熱気が違う。

6曲目「BACK IN THE DAYZ」は前半戦のハイライト。トラックはDJ YAS、マイクを握るはRINOとGAMAという、盟友LAMP EYEを全面的にフィーチャーした曲。LAMP EYE名義の作品って少ないんだけど、これはかなりの上出来。YOUも触発されてガシガシ食い込んで来る。RINOは当時MC志望の若いB-BOY連中に凄い人気で、キレッキレのRAPスタイルは確かにカッコ良い。声もフロウもかなりオリジナル。でも俺はGAMAのちょっと字余りで、韻も踏みドコロを間違えそうな危なっかしいRAPの方が好きだった。まぁ、2人のそのバランスが半端ないんだけどね。この時期にLAMP EYE名義でアルバム作って欲しかったな~。

8曲目「FREE」は12インチも切られたチルアウトチューン。TWIGYをゲストに迎え、トラックはDJ MAKIことMAKI THE MAGICが制作。YOUとTWIGY、2人の掛け合いはかなり息が合っているし、さすがMASS対COREや、その後も様々な曲でマイクを回す2人だなと思う。DJ WATARAIのスクラッチも良い味を出しているし、かなりの名曲。10曲目「BAD BOY BLUES」は当時のYOUの彼女、HACが参加。フックの「喰う寝る遊ぶ、バッドボーイブル~ス♪」は癖になるね。

13曲目「BLACK MONDAY '96」は、西麻布のクラブZOAでやってた同名のイベントの空気を出そうと、当時の出演者やフリースタイルで参加していた連中も拾って録音した曲。参加MCはMACKA-CHIN、SHIKI、HAB、GAMA、YOTTY、E.G.G.MAN、RINO、PATRICK、G.K.MARYAN、DAMAGE、TWIGY、MUMMY-D、DEV-LARGE。パトリックがギリギリっちゃギリギリだけど、他には目立って足を引っ張るヤツもおらず全員カッコ良いが、トラックには不満が残る。12分弱の長尺で、この単調トラックはない。MUMMY-Dのトラックだけど、もうちょっと抑揚つけたりとか、構成を練って欲しかった。

14曲目「BIG SHOUT OUT」は、仲間達へシャウトを送る曲。当時活動していた連中はLB以外、殆ど名前が出て来る。この頃のYOUは仲間、シーン、HIP HOPへの愛に溢れていた。けしてRAPスキルが高くはないYOUだが、こういう真摯な姿勢がヘッズからプロップスを受けていた理由の一つでもあるだろう。アルバムラスト間際の15曲目「BOOM BYE BYE (HIP HOP NEVER DIE 2)」では、UZIを迎えて、「RAPも死なない、俺も死なない」と声高らかに叫ぶYOUがいる。

しかしこの頃のYOUは死んでしまった。

最近のYOUの活動はよく知らないが、今のヘッズからプロップスを受けているとはとても思えないし、興味も湧かない。2000年辺りからテレビに飲まれてしまったのか発言にも一貫性を失い、HIP HOPの受け皿の広げ方にも全く共感できなかった。よりによってAPEかよ。出される作品がカッコ良いと思えなくなったのが1番の原因だけど。

俺の職場は中目黒で、帰りに山手通りでたまに彼を見かけるけど、特別何も思わない。当ブログで揶揄しているのはここ数年前からの彼であって、この頃、ひいてはこのアルバムは今でも大好きなのに。

戻らない青春の日々にマイク5本、いや、5000VOLT。