◆日本のNPT脱退は米国が許さない◆
小出「もちろんそうじゃないですか。これまでだって、日米原子力協定、日米
安全保障条約という枠組みのなかで、日本は原子力を許されてきたわけだし、さきほど聞いていただいたように、ウラン濃縮、原子炉、再処理、その三つの技術
を日本だけは許してもらってきたわけであって、それを日本という国家、政府の人たちも失いたくないでしょうし、原子力を進めてきた人たちも失いたくないで
しょうから、なんとか米国の機嫌を損なわないように、これからもやるんだろうと思います」
岩上「NPT、核拡散防止条約を脱退する。IAEAの査察もかかわしながら核を保有していく。こういう戦略は可能なんでしょうか? インド、パキスタンのように」
小出「NPTを破棄するなんてことは、日本は到底許されない」
岩上「許されない?」
小出「はい。米国が許さない」
岩上「なぜ、インド、パキスタンは戦勝国ではないのに核兵器を保有できるのでしょう。さっき言った5カ国は第二次大戦の戦勝国ということで、特権的 な地位を持ってしまっている。これが現在の世界秩序であることは、まあ今のところ変えようがないとは思います。けれどもそうすると、インド、パキスタン、 イスラエルは持ちうるのに、なぜ日本は持てないんだというふうに言う人はいると思います」
小出「そうですね」
岩上「それがいいか悪いかは別として、答えていただくと、NPTを破ったり、誤魔化したり、IAEAの査察を誤魔化しながら、日本が核保有するってことは許されないとお考えなんでしょうか? なんか許してもらったりして、こっそり持つという手はないんでしょうか?」
小出「こっそり持つ手ですか?」
岩上「ええ」
小出「ありますよ。いっぱい」
岩上「ありますか?」
小出「もちろん、ありますよ。ですから、日本は再処理工場を持っています。今、六ケ所村に作ろうとしている巨大な再処理工場がありますし、それより前には、東海村に再処理工場というのを作ったわけですね。
それ、1977年から動き始めていますけれども、当時はカーターが大統領で、カーター自身は、商業用の再処理なんてやったら、核兵器の拡散が、歯 止めが効かなくなるので、自国でも、米国のなかでも、もう商業用の再処理はいっさいしないと言って、そこまで踏み込んだわけですよね。
でも、日本は、どうしても再処理やりたい。核兵器を作るためにやりたいということで、フランスに作ってもらって、最後は米国を説得して、日本は許してくれということで、まあ、交渉を続けて、包括協定で許してもらったわけですよね。
それで、すでに再処理工場は動いているわけですけれども、東海の再処理工場のなかで、行方不明になっているプルトニウムというのがある。工場です から、巨大な工場で、ずっと流れていくわけで、あっちの端にくついたり、こっちの壁にへばりついたりって、もちろんそういうのはあるわけですけれども、 元々あったはずのものと、再処理して取り出したプルトニウムのあいだには、何十キロもの差があります」
岩上「何十キロというと、またこれは大変な数の核弾頭を作りうる・・・」
小出「原爆を作れる。まあ、昔の技術でも8キロのプルトニウムがあれば、原爆ができると言われていましたし、まあ、たぶん原爆何発分かは、行方不明」
岩上「いま現在?」
小出「はい。ですから、それを本当は行方不明じゃなくて、ちゃんとちょろまかして、どこかで」
岩上「へそくりのように、貯めている可能性がある?」
小出「はい。私はその証拠を持っているわけではないけれども、ちょろまかすということは、たぶんできると思いますし、場合によってはもうすでにやってるいかもしれないと思います」
岩上「なるほど。奥の手ですね。でもこれは今のところ、アメリカから注意を受けているぐらいで止まっているわけですか?」
小出「IAEAというのは、米国の手先なわけじゃないですか。そのIAEAがこれまで、どの国を中心に査察をしてきたかといえば、日本なんです」
岩上「一番注文を払ってきたのは、日本だった!?」
小出「そうです。IAEAの国際的な査察にかかっているお金の半分以上は日本にかけていたというぐらいに、長い間日本を注目して、IAEAは査察してきた。だから東海村の再処理工場だって、ずーっと査察を続けてきたわけですよね。
でも、そのIAEAが査察をしてきても、何十キロかは、行方不明になっちゃったままで分からないと言っているわけですよ。でも、米国から見ると、日本はいま属国だから、まあいいだろうということで、見逃してきてくれた。
でもそれが、これからどうなるか分かりません。例えば、韓国というのでは、米韓原子力協定というのがありますけれども、韓国には再処理を認めないとして、米国の態度は一貫しているのですよね。
今年、米韓原子力協定は切れるんですけれども、韓国としてはなんとしても再処理をやりたいと思っているわけで、原子力協定の切れるのをとにかく2 年間延長して、その間に韓国はなんとかして米国から再処理の許可を取ろうとしているんだと思いますけれども、たぶん米国は与えない」
岩上「与えない?」
小出「はい」
岩上「韓国では、原発が稼働していますけれども、だからといって、日本のように、即時に核兵器を保有するだけの技術的ポテンシャルを持っているとは言えないわけですね?」
小出「ないのです。それは、米国が許さないから」
岩上「この日韓の差はなんですか?」
小出「たぶん、日本のほうが制御しやすいと、米国が見たんでしょうね」
岩上「制御しやすい?」
小出「はい。要するに、属国として、抱え込んでおきやすいと。まあ、韓国という国の地理的な条件というか、要するに朝鮮民主主義人民共和国と接している」
岩上「そうですよね」
小出「もう、戦争状態に今でもあるわけですから、そこはやはりあまりにも危険すぎるという判断ではないでしょうかね」
岩上「なるほど。朝鮮戦争は勝ったり負けたりの戦争で、前線が上がったり下がったりして、アコーディオン戦争とまで言われました。もう一度やった時 に、今度、北が圧勝して南が包摂されることがあったりしたら、その原子力技術を持っていかれることも含めて、リスクっていうふうに見てるってことです か?」
小出「いや、技術を持っていかれることを心配していることはないと思いますけれども、例えば韓国に再処理を認めてしまうと、すでに先程から聞いて頂 いてるように、再処理というのは原爆製造の中心技術なのであって、それをもし、韓国に米国が許すということになれば、朝鮮民主主義人民共和国のほうからの 猛烈な反発があるだろうし、俺たちがなんで原子炉をもっていけないんだ。俺たちだって再処理もっていいだろうって、そういうことになってしまう。
米国としては、今6カ国協議をやっているわけですね。なんか6カ国協議の目的というのは、日本の人たちから見ると、朝鮮民主主義人民共和国に核を放棄させると、そういうことになっている。マスコミもなんだかんだそんなことを言っているわけですけど」
岩上「そうですね。北朝鮮だけが問題があって、それを周りの国があの不良を何とかしようみたいな」
小出「でしょ?」
岩上「そういう話になっていますけど」
小出「日本のマスコミが言っているわけですけれども、6カ国協議の目的というのは朝鮮半島の非核化なんですよね」
岩上「南北の非核化」
小出「南北とも非核化なわけですから」
岩上「だから、韓国が持ってしまったら、話にならないと」
小出「そうです」
岩上「なるほど」
◆東アジアの非核化に向けて、「攻める平和主義」を◆
小出「ですから、米国としては、まあ日本と韓国はやはりちょっと違うというふうに思っている。まあ自分が支配をするためにやりやすいやり方として、いま韓国は許さないけれども、日本は許しておくということだと思います。
でも、安倍さんのような政治家が出てくると、米国としてもこのままでは済ませられなくなるかもしれません」
岩上「この南北朝鮮半島の非核化と、日本の非核化はつながっていますね。実際そうなるかどうかは別として、小出さんは、自分が正しいと思うあるべき姿というのは、憲法のもとの絶対平和主義を、核技術を含めて実現することだとおっしゃっている。
でもこれは、日本一国平和主義というよりは、隣接する南北朝鮮両方を非核化するということと連動しているんじゃないですか?」
小出「そうです」
岩上「それが実現しないと、日本もしづらい。日本と、この両国とがともに非核化する。東アジアの非核化ということで進んでいくなら可能性があるかもしれませんけれども、そのどこか一箇所でもほころびが出ると、逆に核武装の誘惑が高まると」
小出「そうですね。ですから、日本国憲法のことを、ある人達は、一国平和主義でけしからんというようなことを言うわけですけれども、そうじゃないんですよね。
一国だけ平和国家が成り立つわけがないのであって、要するに全世界を平和的に解決できるようにしなければいけないと。そのために、日本は軍隊を放 棄して、諸国民の公正と信義に信頼して守るという国にするんだと宣言してるわけですから、それをどんどんどんどん、地理的にも、東南アジアの非核化を含め て、広げていくという方向でやらなければ、もちろん日本一国だけで国は守れない」
岩上「じゃあ、攻める平和主義ってことですね? 安倍さんが言ってる積極的平和主義と全く意味が違いますけれども」
小出「はい。そうです。ですから、平和というのは別に簡単に作れるわけではないわけですから、どんどん世界にそういう考え方、あるいは体制を積極的に広めていくという、その努力がなければ、もちろんできない」
◆「宇都宮さんに都知事になってほしい」◆
岩上「都知事選の候補について、どんなふうに思いますか? 今、選挙のさなかで言いづらいとは思いますけれども」
小出「はい。まあ私は、政治は嫌いだし、政治に関わらないとずっと言ってきた人間ですけれども、みなさんが私に物を言えと、さんざんせっつくので、まあ仕方なくて意見表明をしたわけです」
岩上「この前、出されたメッセージとして」
小出「そのなかで私ははっきりと書いたつもりですけれども、宇都宮さんに賛同すると書きました。彼に都知事になってほしいということも書きました。
ただし、選挙というのは勝つか負けるかということが決定的に重要なことなわけですし、私は舛添さんだけには勝たせたくないと思っていますので」
岩上「田母神さんでもいいわけじゃないんでしょ?」
小出「あ、もちろん、田母神なんて論外ですけども(笑)。まあ、舛添さんだって、あんな人になってほしいとは思わないので、とても難しい選択だと思います。
ですから、私は、まあ原子力に反対してきて、私の仲間、たくさんいますけれども、今は宇都宮さんのほうに行った人もいる。細川さんのほうに行った人もいる。
お互いにお互いを非難すると言うような関係になってしまっていて、私は大変残念ですし、できれば、本当だったら一本化してほしかったのですが、も うここまでくれば、できないだろうと私は思いますので、もうこうなれば、自分の信ずる道で戦うしかないと思いますので、宇都宮さんにもきっちりと戦って欲 しいし、細川さんもきっちりと戦ってほしいと思います。
でも、先程から岩上さんが聞いてくださっているように、原子力の問題って、原子力だけの問題ではないので、全体をやはり議論できるような形のやり方が正しいし、全体という意味で言えば、私は宇都宮さんが正しいと思います。
ただし、選挙に負けられないので、細川さんを支持するという人たちがいることも私には分かります。ですから、あとはもうみなさん一人ひとりがどうするかということを考えていただくしかないと」
岩上「そうですね。つまりは運動のようなことを皆さんしているけれども、選挙というのは一人ひとりの自分の判断で一票を投じるわけですから、最後は自分はどの陣営にいるんだとかじゃなくて、自分で考えて判断を下すということだろうと思うんです。
自分の票を死に票にしたくないって考える人もいるだろうし、自分がこの候補が正しいんだから、勝てないかもしれないけど、一票投じたいと、いろいろ思うんだろうと思うんです。
ただしその前に、情報をできるだけ有権者に開示してほしいですね。つまり、判断するための情報。そのためには、議論において初めから、脱原発以外には、もう何も語らないというのは、ちょっとあまりに幅が狭い。
やはり今言った安全保障の問題も語ってもらいたい。調べましたら、細川さんは、池上彰さんのインタビューに答えていた。緊急出版された池上さんの本の中に、この核兵器の保有について語られている箇所がある。それを見つけたので、ツイッター等でも出しました。
多くの人がこれは知らないだろうと思って、ご判断の材料にと思って出したんですけれども、『私はその核兵器の保有ということを考えている人がい るって言われるけれども、これは非常に時代遅れな考えで、私はそんな考えはない』と、細川さんはここで割とはっきりとおっしゃっているんですね」
小出「そうですか。はい」
岩上「こういうことをきちんと言ってもらいたい。じゃあ安全保障をどうするの? 日米原子力協定はどうするの? ということとあわせて、包括的に 語ってもらいたい。さらにこれを田母神さんや舛添さんと一緒にあなた達のその考え方でいいんですか?という論戦とか、討論会をやってもらいたいんですよ ね」
小出「やってほしいです。はい」
岩上「こういうのが行われない。討論会が15回も流れたんですよ。この前はじめて実現したんですけど、これは、どう思いますか? 僕、叱ってやってほしいんですけど」
小出「おっしゃったとおりです。議論はやっぱりちゃんとしなければいけないし、たった一回で終わらせるんではなくて、まだまだ一週間あるわけです し、やまほど議論をして、やはり一人ひとり投票する人がきちっと判断できるようにするべきだし、もちろん一番大切なのは、一人ひとりがどう考えて、誰に一 票入れるかということなわけで、様々なことがもちろん判断の基準に入ってくるでしょうから、最後は一人ひとりだと思います。
ただ、私としては原子力にこれまでずっと反対してきたわけですし、舛添さんのような人だけには入れて欲しくないし、この選挙戦を通じて、原子力に反対してきた人たちのあいだに亀裂が入ったりすることは避けてほしいと思っています」
岩上「また、田母神さんのことを忘れてましたね」
小出「まあ、田母神さんが入るなんて可能性はないですよ」
岩上「でも、田母神さんは街頭演説では意外な人気で、自民党の支持者のなかでは、舛添さんを担ぐぐらいだったら、なんで田母神のほうにいかないんだと」
小出「まあそうでしょう。だって、舛添さんなんて自民党を除名されたわけで、自民党が舛添さん担ぐなんて、そんなありえない話を今」
岩上「そうですよね。筋違いもいいとこですよね」
小出「そうです」
岩上「そういう意味ではここ(自民党)も非常にねじれた変な状態にあるわけですけどね。だからこそ、きちんと話し合わなくちゃいけない。国家としての運命の分かれ道みたいなところですから、重要な問題として話し合うべきですよね」
小出「はい。そう思います」
◆今回の選挙が「最後のチャンス」ではない◆
岩上「最後にまとめたいんですが、それでも今の細川さん、小泉さんの動きはやっぱりとてもエポックメイキングな、人の関心を呼ぶ動きではあることは事実ですね。
元首相がリタイヤしていたのに再びカムバックしてくるってことも一つのドラマです。小泉さんと細川さん、実は行政改革研究会を一緒にやっていて、規制緩和にすごく熱心な人達で、かたや日本新党、かたや自民党で、違う立場に立つ人にも見えていた。
そこにさらに、表にはあまり出ませんけど、小沢一郎さんがくっついていて、生活の党が支援してるわけですよ。これもまた、小沢一郎、小泉純一郎といえば、ぶつかり合ってたんじゃないのと思う。
不思議な関係だなあというふうに思ってる方も多いと思うんです。これを『不思議だ、あるいは疑わしい』と思うのと『不思議だ、だからこそ期待でき る』と『こんな組み合わせはない、奇跡だ』というふうに思う人と、それはいろいろなんですけれども、小出さんは、小沢一郎さんとはお会いしてるじゃないで すか。
小沢一郎さんが原発をもうやめようと表明された。私のインタビューでも『核兵器の保有なんて、俺は絶対考えない』ということを言いきっています。 本当かどうかっていうのは、それぞれご判断があるかもしれません。ですが、この細川・小泉連合に合流したというのは、それなりに真剣な選択だったのかもし れません。左を切って、中道のところに戻ったというのか。
ここ、小泉さん、細川さん、小沢さんをどういうふうに評価してますか?どういうふうにみなしてますか?」
小出「(笑)」
岩上「どんなふうにご覧になってますか?」
小出「岩上さんって、私がしゃべりたくないことばっかり」
岩上「いやあ、この議論はやっぱりいま日本中がみんな考えたいと思っていることなんですよ」
小出「小沢さんはここまで来てくださって、私の話も聞いてくださって、その私との対談が終わったあとに、随行記者団がいたわけですけれども、その記 者団を前に、私は原子力反対だと明言してくださったわけで、私はありがたいと思います。私の言うことを聞いてくださったうえで原発反対と表明してくださっ た。小沢さんどうもありがとうと思いました。
小泉さんにしても、私は小泉さん嫌いだとずっと発言をしてきています。小泉構造改革ということをやって社会的弱者をどんどん切り捨てるということをやった張本人なわけで、私は小泉さん嫌いです。
ただし、小泉さんがオンカロまで見に行って、これはダメだということを理解して、原発に自分は反対すると言った。そのことは正しいことだと私は思っていますし、細川さん自身がどうなのかは、よく分かりません。
彼はたぶん、このような日本のエネルギー政策全体に異議を言いたいんだろうなと思いますけれども、まあでも、細川さんも原発反対と言ってるわけ で、細川・小泉連合は、原発反対のシングルイシューでいくと言ってるわけですよね。それに小沢さんが今乗ってきてるわけで、原発反対ということ一点でその 三者が連合を組んでるわけですね。
ですから私は『わたし原発反対』と言ってきたわけだし、そのシングルイシューでいえば、彼らの言っていることは正しいと思います」
岩上「彼らの言ってることは正しいんですけれども、彼らの言っていないことがどうなのかですよね」
小出「そうです。ですから、本当ならば、その裏にたくさんのことがあるわけであって、本当なら議論をしなければいけないのです。本当の議論をするならば。
議論もしてない時に私が言うべきではないけれども、私は宇都宮さんに賛同すると、はじめから明言しているわけですが、でも選挙はたんにそれだけでは決められない要因があるので、だから私の友人たちも、引き裂かれてしまっているわけですね。
だから、とっても難しいことだと私は思います。歴史は流れているわけですし、選挙が終わったら世界がなくなってしまうわけでもないし、やはり原子 力に抵抗するということは続けなければいけないと私は思いますので、こんなことで、仲間割れをしたり、お互いに傷つけ合うようなことだけは、しないでくだ さいと頼んでいます」
岩上「なるほど。最後のところが非常に重要だと思うんですけど、『最後のチャンス』論というのがすごく唱えられたんですね。これが最後で、もう二度とチャンスは来ないから、この一点で、他のこと一切目をつむって今回だけはと。僕はそれはすごく強い抵抗を感じました。
最後のチャンスなんてことはありえない」
小出「そんなことない」
岩上「先生はどういうふうに?」
小出「もちろん、そんな『最後のチャンス』なんてことはありません。歴史はずーっと流れているので、戦いは今も戦いだし、昨日だって戦い、明日だっ て戦いで、それはずっと続くわけですから、もちろん戦いには負けたくない。わたしはもう原子力をやってる連中には負けたくないので、どうすれば勝てるかと いうことは、やはり長いスパンで考えなければいけないと思います。
ただ今回の都知事選で、舛添さんが勝つのか、あるいは彼を負けさせることができるかということは、運動にとってかなり重要だと思います。もちろん最後ではないですよ。でもかなり重要だと思うので、一人ひとりやはり考えていただくしかないと思います」
岩上「そうですね。一本化というのは、やっぱり当事者があっての話で、当事者に意志がないときに、ないんですよ」
小出「一本化なんてないです」
岩上「ないですね。だから、有権者が結局、こっちとこっち、良いこと言ってるな。どっちを選ぶかということに、やっぱりかかってるってことですね」
◆負け続けても戦いは続く◆
小出「そうです。ですから、それは全体の流れを見て、舛添さんに勝たせるのか、それとも阻止したいのかとか、原子力を含めた全体の問題をやはりちゃんと見たいのかと。それぞれの人の判断によると思いますけれども」
岩上「今回、『最後のチャンス論』ともう一つ同時に言われたのは、負けたら一切無意味、無駄っていう言い方もずいぶんされました。勝たなきゃダメだ というのは正論なんですけれども、負けたら全部が無意味で無駄だという論が出ている時に、小出さんが発表された文章のなかに、私はずっと敗北し続けたって 書かれてあったんですね。
これは僕にとって、非常に心を動かされた一節でした。どういう意味で、私は負け続けてきたとおっしゃったか。勝てない戦いをやってきたが、そのことは無意味でも無駄でもないという意味の文章をお書きになられたんでしょうか?」
小出「私は、1970年に原子力をやめさせたいと思いました。そのときには、日本国内には、三つの原子力発電所しか動いてなかった。東海原発、敦賀、美浜という。それ以降、一つも作らせたくないと私は思ったわけですけれども、何をやっても勝てない。
向こうは、国家権力があって、巨大な産業がみんなそれに乗ってるわけですし、マスコミもみんなそれにグルになってるわけだし、学者なんていうの は、もうどうしようもない連中ばっかりなわけですから、それもグルになってやるということで、私の力など、ほとんど何の意味もないような形で、負け続けて きたんですね。
それでも、負けても負けてもやっぱり戦わなければいけないということはある、と私は思ってきましたし、負け続けながらも自分のできることをやろうと思って今日まできたんです。
選挙だって、私が選挙、政治嫌いだったので、あまり投票ということにも積極的には行きませんでした。でも、私が投票した時には、必ず、私の投票した人は負けるのです。でもまあ、それでも仕方がないと思うときには、それもやりましたし」
岩上「死に票だと思っても投じると」
小出「はい。そういうこともありました。だからまあ、それは何度も言いますけど、歴史は流れているわけですから、負けることはもちろんあるし、負けたからといって、終わりでもないし。そうですね。力は。
大阪で昨日集会をやっていたんですけど、その集会の主催者が最後に挨拶して『自分たちは微力だけれども、無力ではない』と言って締めくくられたけ れども、確かに私の力なんて、本当に微々たるものだけれども、でも無力ではないはずだし、それは昨日も今日も、また明日も無力ではないはずなので、できる ことを担おうと思います」
岩上「人間というのは一人ひとりの人生に限りがあって、有限なわけですね。力も限界がありますが、それだけではなく、時間の限界もある。
人間みんな自分の晩年が近づいてくれば、自分にとって最後のチャンスだと思うのは、これは当然の思いだと思うし、必死、切実になるんだろうと思うんですけど、大事なことは自分の代で終わりではなくて、次の世界、次の代というのがあるはずだっていうことではないかなと。
沖縄で、名護市長選がありました。それの取材をずっとやっていました。名護では、奇跡的な勝ち方をしてるわけですね。あんな絶望的なところまで、崖っぷちまで追い込まれながら、だけどだれも最後のチャンスだとか、だれもこれでおしまいだとか言わないんですよ。
おじいおばあがみんな、次の代に引き継がれていくのが当たり前のように思ってる。これは、僕はすごく胸を打たれたといいますか、心動かされたんですけど、この次の代に引き継いでいくということの重要性について、どのようにお考えでしょう」
小出「まあいま、岩上さんがおっしゃった沖縄の名護の選挙のことに関していえば、沖縄の人たちずっとこれまで戦ってきたし、1回選挙に負けたからといって、戦いをやめるわけじゃないんですよね。彼ら。
絶対自分たちでもやると思ってるわけですから、最後の戦いなんて言葉はきっと彼らからは出てこないと思います。で、いま岩上さんがさらに、1人の人間が終わったとしても、そうではないはずだと。もちろん、そうですよ。
だから歴史は流れているわけだし、運動だって流れているわけだし、ここにあるのは田中正造さんの像ですけれども、正造さんはもう亡くなって100 年経ってしまったけれども、でも、正造さんがいたという事実はあるわけだし、歴史のなかに正造さんの足跡が残ってるわけですから、ありがたいと思うし、1 人の人間なんかどうでもいいことだと、私は思います。大切なのは、歴史ですね」
岩上「自分が去るけれども、世界は残る」
小出「はい」
岩上「世界は続く」
小出「はい」
岩上「歴史が続く。そこにどれだけ影響を残せるか。そのあと託すことができるかという考えをどこかに持ってないと」
小出「要するに、微力なんですよね。ですから、個人の力なんて本当に微力だと私は思いますけれども、でも、生きているわけだし、私という命はいまここに生きて、今ここですね。時間の流れの中の一点。そして世界の広がりのなかのここに生きている。
私以外だれでもない私なわけですから、それが微力だろうとなんだろうと、私らしく生きるのが一番いいのであって、そうしなければ、損だと思いますので、私の足跡がどれだけ残るかって、そんなことどうでもいい。私からみるとどうでもよくて、できることだけやりたいと」
岩上「それは、無意味ではないということですよね」
小出「無意味かもしれませんけれども、まあ、無意味ではないですよ。誰だってそうですよ。すべての人の命は無意味ではないです。でも、仮に無意味だとしたって、行きたいように生きればいい」
岩上「51%49%。もしこのわずかな差によって、勝者と敗者に分かれる。そして敗者のほうになったら一切無意味だと、こういう議論もあるんですね。だけれども、そうだろうかってやっぱり思う」
小出「もちろんそうではないんですけれども、ただ選挙ということに関する限りは、51と49の間に、猛烈な違いが生じてしまうという、そういう選択なんですよね。選挙というのは。
だから、私は選挙は嫌いなんですけれども。でも、仕方がないですよね。こういう間接民主主義なんていうものを選んでる国なわけですから、選挙をす るしかないでしょうし、できることなら勝ちたいと、みなさん思うだろうし、私もそうしたいとは思うけれども、でも、これで終わりではないので、負けてもい いという選択はやはりあると思います」
岩上「もう今日は本当に論じ尽くして、言いたくないとおっしゃっていたことも全部お聞きして、お話いただいたかなと思います。どうもありがとうございました」
小出「こちらこそ」
岩上「最後に一つだけ。まあある意味余談なんですけどね。選挙つながりで、ここ大阪ですからね。都知事選のあと、ここ大阪市長選になるかもしれな い。ちょっと原発の話からずれちゃいますけども、もう一回大阪市長選をやり直すということを、橋下市長、言ってるんですけど、どう思います?」
小出「愚かすぎるし、まあ、あの人らしいなと。常に注目をしてもらわないと困るわけじゃないですか。彼は。もうなんでもいい。とにかくマスコミが取 り上げてくれればいいと、そんなような人ですから、まああまりにもばかげていると思うし、あんな人にはさっさと退場してほしいと私は思います。
ほんと大阪市民の不幸ですよね。あんな人がいるのは。でも、対抗馬もたぶん出ない」
岩上「そうですか」
小出「そうだろうと私は思います。どうなるんでしょうね。いやまあ、あんなもの無視するのが一番いいと思いますし、だって彼が別に返り咲いたって、 市議会の勢力は全然変わらないわけですから、いったいやり直して何になるんだろうかと。実質的にはそうなんですよね。要するに、彼がまた自分に注目を惹き つけたいという、その舞台を作って欲しいと言ってるわけで、本当ならみんな知らん顔しちゃえばいいと思うんですけど」
岩上「なるほど。大阪市民のみなさんもぜひ、そのことをお考えいただきたいと思います。白紙委任するわけじゃないですからね。市長を選ぶってことは。勝手なこと言いすぎですよね」
小出「そうです。『私はもう市長になったんだから、何やってもいいんだ』ってなことを言うわけでしょ。本当になんか考え方を間違えた人だと私は思います」
岩上「ですね。あれだと、ナチスの全権委任法となんにも変わらないですからね」
小出「そうです」
岩上「だから、そういうことは絶対あっちゃいけないと。これだけは間違いないですね」
小出「そうですね」
岩上「ということで、東京都知事選も見据えながら、原発、脱原発ということは、実はここの核戦略ということと不可分なんだというお話、今日、本当に深く掘り下げたお話を聞かせていただきました。
多くの人が、原子力はイコール発電だと思っていますから、その根本から今日、お話いただいたんで、すっきりしました。
核燃サイクルって実は、プルトニウムを保持するためのいいわけなんだと。全く無駄なものなんだ、核兵器保有という目的以外は。無駄で、不効率で、 非常にお金を乱費するようなものなんだということも、ご理解いただけたんじゃないかなと思います。死に物狂いの平和主義ができる覚悟があるか」
小出「そうです。そういうことです」
岩上「さもなくば、核兵器保有して、世界から孤立するか。そういう中庸がだんだんなくなってくる可能性が日本にはあるなという気がします。このあと の政治情勢次第では、この問題がどんどん大きくなる可能性があると思います。中庸がなくなったとき我々はどちらに行くかって問題、我々、日頃からずっと考 える必要があると思います。またその節は、きっとおじゃまして、ご意見をうかがうことになると思いますけど、よろしくお願いします」
小出「はい。こちらこそ」
岩上「本日はどうもありがとうございました」
小出「ありがとうございました」
(了)