千葉「京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんです。では小出さん今日もよろしくお願いします」
小出「よろしくお願いします」
千葉「え…今日は毎日新聞論説委員の藤田悟さんと一緒にお話を伺います」
小出「はい」
藤田「ああー、藤田です。よろしくお願いします」
小出「はい。藤田さんこんばんは、よろしくお願いします」
藤田「お願いします」
千葉「ではまず…」
小出「(咳)」
千葉「この質問なんですが。え…東京電力のビデオの公開で、え…新たな事実がわかりました。え…地震発生から2日目の3月の、え…去年3月13日の夜に、危機的状況にあった福島第一原発2号機に海水を注入しようと準備していた発電所の現場に対して、東電本店が、もったいないからなるべく粘って真水を待つという選択肢はないのかと言っていたことが、明らかに、なりましたー。もしこの時真水…が届くのを待って注水が遅れていたりしたら、どうなっていたんでしょうか」
小出「もちろん事態はもっとひどくなっていたと思い…ます。え…あの時はとにかく何としても原子炉の中に水を入れて、冷やさなければいけないという事態、でした」
千葉「はい」
小出「私はもう海水どころか、泥水でもいいから入れてくれと思いました。」
千葉「はい…」
小出「はい。」
千葉「え…」
小出「え…」
千葉「はい…」
小出「はい。そういう事態だということを、東電の本社…の人たちが、全く理解していなかったということなの…ですね。いやほんとに、う……あまりの油断というかですね、原子力発電所はいついかなる時も壊れないと、彼らが思っていたんだろうなと、思います。」
千葉「ふぅーん…、あの、この時点で、1号機と3号機はもっと前の段階で海水が注入されていたというふうに伝えられているんですけれども」
小出「はい」
千葉「おー、そうするとこの2つは廃炉の可能性が強かったということで、この時点でもすぐ近くに、本当にすぐ近くにある2号機は、設備が保てれば将来また動かせると、東京電力は思って、真水を待とうっていうふうに言ってたというふうに、見てもいいんでしょうか」
小出「多分そうなんだろうと思いますけど、余りにも愚かなこと、ですね。すでにもう原子炉溶けてしまっているわけですし。2度と使いものにならないってことはわかっていたは…わかっていなければいけなかった、はずなんですけれども。え…そうならなかった。あまりの楽観主義というか、自分の都合のいいように考えたいという人たちが、東電本社を牛耳っていたということだと思います。」
千葉「うう~~ん…。あともう1つ気になることとして、福島第一原発の同じ敷地内にあります、5号炉6号炉が廃炉ということになっていないことについてなんですけれども。チェルノブイリ原発の事故の場合、事故を起こした4号炉のすぐ近くの1号炉、から3号炉は長い間運転していたというようなことを聞いたんですが、これ本当でしょうか」
小出「本当です。」
千葉「…そんな近くにあるのにもかかわらず…」
小出「はい」
千葉「事故を起こした炉が近くにあるにもかかわらず」
小出「はい」
千葉「運転をしていたんですか?」
小出「はい。え…被曝を覚悟の上で、え…発電所の所員…の、が残って、そこでかなり長い間運転をしていました」
千葉「あ…あ…あ…、それは…ちょっと信じられない…話なんですけれども。」
小出「はい」
千葉「う…やっぱり…電気の確保のためにそういったことをしたということなんですか?」
小出「その通りです(苦笑)。」
千葉「あぁぁ……。(ため息)。なんとも言いがたい話なんですけれども」
小出「そうですね。私もそう思います」
千葉「はあ。そしたら、福島の5号機6号機も、そういうことが行われる可能性が、あるわけですか」
小出「という…東京電力はそれを狙っていると思います。ただし、そこで働く人たちはもちろん被曝を避ける事はできません。」
千葉「あぁぁ……。被曝をしながら…」
小出「はい」
千葉「動かすということですか」
小出「…と、東京電力が狙っているということなんですね。私はもちろんそんなことを願いませんし、え…福島第一原子力発電所も含めて、全て廃炉にして欲しいと思います。」
千葉「はい…わかりました。それから次の質問になりますけれども。お…こんなニュースが入ってます。静岡県知事が、トリウム原発という新しい型の原発に関心を示して、どうやら中部電力が研究を始めているという報道があるんですけれども。お…このトリウム原発っていうのは、プルトニウムを作り出すことがなくて、安全性が高いというふうに伝えられてる…報道もあるんですけれども…」
小出「はい。」
千葉「これ、本当ですか?」
小出「全くバカげたことです」
千葉「はい…わかりました。それから次の質問になりますけれども。お…こんなニュースが入ってます。静岡県知事が、トリウム原発という新しい型の原発に関心を示して、どうやら中部電力が研究を始めているという報道があるんですけれども。お…このトリウム原発っていうのは、プルトニウムを作り出すことがなくて、安全性が高いというふうに伝えられてる…報道もあるんですけれども…」
小出「はい。」
千葉「これ、本当ですか?」
小出「全くバカげたことです」
千葉「はい…」
小出「はい。あの…意味がありません。え…もともと、原子力発電というものがこんにちまで来る間には、長い淘汰の歴史があったわけで。その淘汰の過程を経て、軽水炉と呼ばれている、今日本で動いている原子炉が、ようやくにして勝ちのびてきた、のです。え…その軽水炉、すらが、もう経済性もなければ、危険性も大きいし、生み出してしまうゴミの始末もできないと、いうことで、米国も撤退を、1970年代の前半に始めていますし。ヨーロッパも70年代には原子力発電から撤退を始めているのです。もう原子力に夢がないなんてことはもう歴然とわかっていることだと私は思い、ます。」
千葉「…はい」
小出「え…その上で、トリウム原発というのは、今使っている軽水炉よりもはるかにまた技術的なハードルが高い、ものですし。メリットとい、言えるほどのメリットも何1つないと私は言っていいと思います。」
千葉「はああ……。あの…トリウム原発自体は、新しく、できた技術というわけではなくて、」
小出「ありません」
千葉「もう、だいぶ古い」
小出「そうです、もう60年代に何とかやろうとして、研究を始めたのですけれども。こんなものには、モノにならないということでとっくの昔にあきらめられたものなのです。」
千葉「あっ、それをまた、研究し直そうという話なんですか」
小出「そうです。はい。」
千葉「藤田さんいかがですか」
藤田「んー、ちょっとあんまり現実性がなさそうですよね」
小出「はい。まあもっともあのビル・ゲイツという人がですね」
藤田「ええ」
小出「去年だったでしょうか。え…自分の金をはたいてでもやるとかいう旗を上げたりしているわけですけれども」
藤田「はい」
小出「少なくとも、テクニカルな意味で言うならば、これまでの歴史をしっかりと見て欲しいと私は思いますし」
藤田「うーん」
小出「全く実現の見…も、見込みは無いと、私は断言したいと思います」
藤田「なるほど(苦笑)」
千葉「はあ……。あのー、トリウム原発、というものはですね、具体的にはどういったところがやっぱり難しい点として挙げられるんですか」
小出「え…この、自然界にあるもので、核分裂をする性質を持っている物質というのは、ウラン235しか無いのです。」
千葉「はい」
小出「え…それを何とか利用しようとしてここまで来たわけですけれども。それすらが、もうできない、というところに直面しているのですね」
千葉「はい」
小出「で…う…この直面する前に、ウラン235だけではエネルギー資源にならないので。もう核分裂はしない、ウランの238という物質をプルトニウム239にしてなんとかエネルギー資源にしようとして、今日までずうっと格闘して、きました。」
千葉「はい」
小出「原子力を推進したいという人たちですね。で…それで高速増殖炉というようなものを何とか作ろうとしたのですけれども。全て、出来なかったのです」
千葉「はい」
小出「で、トリウムというのは、もともと核分裂しないのです」
千葉「はい」
小出「はい。ですから、え…トリウムそのものを使えるわけではありませんし。トリウム232番という物質なのですが。それをウランの233番というものに変えた上で、それを核分裂させようというのが現在言われているトリウム炉、というものですけれども。もともとウランをプルトニウムにかえてやろうというその計画すらができなかった…し、核分裂するウラン235を利用するということすらが、今、頓挫しようとしているわけであって。」
千葉「ふうむ…」
小出「トリウムなんてものをウラン233に変えてやろうなんていうことは、もともと、遥か先、というか技術的にはもう夢のようなこと、でしか、可能性がありません」
千葉「はあ…、あの、もともと放射性物質じゃないものを放射性物質に変えて発電をしようということなんですか?」
小出「え…もともとウラ…トリウムの232も放射性物質なんですけれども」
千葉「そうですか」
小出「はい。それを、放射性物質であり、なおかつ核分裂をするという性質を持ったウラン233に変えて、エネルギー源にしようという、そういう計画です」
千葉「ふーん。もちろんこれ、あの、放射性廃棄物も出て…」
小出「はい」
千葉「くるし、」
小出「全く同じことになります」
千葉「はあ……。じゃ、本当になにか新しいことをやるとか、あの…画期的なう…その新技術というわけでは、ぜんっぜんないわけですね」
小出「(苦笑)はい。全然ありません。ただまあ原子力をこれまで進めてきてしま、した人たちが、なんとか生き延びるための方便で今言っているだけだと私には見えます」
千葉「あの、このトリウム原発っていうのは、世界のどこかで、例えば、動いていたりとか。そういったことっていうのはないんですか」
小出「1つもありません」
千葉「1つもないんですか!」
小出「はい」
千葉「えー…。あの、実用化に向けてですね、なにか、進めている国が日本の他にあるとかですね、」
小出「え…インドという国がですね、え…皆さんご存知だろうと思いますけれども。インドという国は、ウラン、の資源は殆ど無い、のです」
千葉「はい」
小出「そのかわりトリウムという資源、え…まあ232番という放射性物質である、それが大量に、インドという国内にあるということがわかっていまして。」
千葉「はい」
小出「え…インドが、ウランを使う原子力はダメなので、なんとかトリウムを使いたいということで、研究をしていることは本当です。ただ、今聞いていただいたように、1つとして実用化していません」
千葉「ふぅーーーん。わかりました」
小出「はい」
千葉「小出さんどうもありがとうございます」
小出「はい。ありがとうございました」