2012年05月03日 京都大学原子炉実験所 小出裕章 NewYork 講演 (4) | clapton481のブログ

clapton481のブログ

ブログの説明を入力します。

被曝が一体どれだけの犠牲を生むかといった例を一つ皆さんにご紹介しておきたいと思います。
 平常時と書いたのは、日本の法律でこれまであったと聞いていただいて、法律で定められている被曝量がどれだけ危険をもたらすかということをここに書きました。
 1年間1ミリシーベルトというのが日本の法律、それは完全に安全ではないです。先ほど聞いていただいたように、被曝というのはどんなに微量でも危険があるということで、じゃあ1ミリシーベルトの危険はどのくらいかというと、2500人に1人が死ぬというくらいという危険度です。これは日本という国で生きる時には諦めなさいという、そういう危険度として決められたのが1年間1ミリシーベルト。
 私が京都大学原子炉実験所で放射能を扱って仕事をしている。そのために私は給料を貰っています。だから「被曝は少しくらい我慢しろ」と言われているのです。放射線業務従事者というレッテルを張られて、私は1年間に20ミリシーベルトまでは被曝を我慢しろと言われている人間なのです。ではその基準を超えてしまうとどうなるかというと、20倍の危険を負うことになりますから125人に1人はガンで死ぬという、そのくらいの危険は給料をあげる代わりに諦めろとそういう基準です。


 福島原子力発電所の事故が起きてしまって、日本の国はさっさと法律を変えてしまったのですね。例えば福島原子力発電所の事故を収束させるために働いている労働者は、今回の事故を収束させるという1回だけの作業のために、250ミリシーベルトまで被曝を我慢しなさいと決めました。ではこの危険性はどのくらいかというと、10人に1人の労働者がいずれガンで死ぬという、それほどの危険です。
 そして先ほどから聞いていただいたように、日本の政府は、今汚染地に人々を取り残すという作戦をとっています。もちろん、子供も含まれています。その子供たちが1年間に20ミリシーベルトを越えるようなところは流石にダメだと言って、日本政府も強制避難をさせてるんですけれども、それ以外、つまり19.9ミリシーベルトしか被曝しないから、そこに住めと言ってるわけです。ですから、そこにもし赤ん坊が住むとすれば、1年間に20ミリシーベルトくらいの被曝をしてしまうわけで、そうなると31人の赤ん坊のうち1人がやがてガンで死ぬという危険を負わされるということです。そういうことになってしまうのです。
 本当にこんなことが許されるのだろうかということを、私たちは今問われています。


 もう一つ最後に見ていただこうと思います。
 皆さん、これから日本にお帰りになるかもしれませんが、日本という国は、世界一の地震国です。世界中で起こる地震の1割、2割が日本で起きると言われている国です。ここに世界地図を示しました。


変わっているのは黒い丸印と赤い丸印があるところですね。赤い丸印は大きな地震が起きたところを書いたものです。1903年から2002年までの約100年間、どこでどういう地震が起きたか。もう見ていただいて判ると思いますけれども、この地球という星は、確かに地震が起きると言われていますけれども、どこででも地震が起きるというわけでは無いのですね。地震が起きるということは、非常に特殊な場所でしか起きない。チリの南端からずーっと太平洋側に地震の巣があって、米国だったら西海岸のあたりに地震の巣があって、ずっと太平洋側を通って日本、そしてフィリピンのあたり、それからニュージーランド、太平洋を囲むこの辺りで地震が起きている。それ以外は地震は起きない。もう一つは中国のヒマラヤ山脈から地中海まで続く、ここで地震がある。それ以外は地震は起きないというのが地球という星なんですね。ヨーロッパはもともと非常に安定した地殻の上に国家が成り立っていて、そこには150基の原子力発電所を持っている、つまり地震が無いから建てられる。米国を見てください。もちろん皆さんご存じのとおり、米国の原子力発電所はほとんど東海岸にある。東海岸では地震がないと。皆さんNYで地震を経験することはほとんどないと思いますけれども、地震が無いからこそ米国は原子力発電所が建てられた。約100基ですね。先ほど見ていただいたとおり。
 それに比べて、ここが日本です。もう日本の地図すら見えないくらいに日本では原子力発電所を連立させてしまった。大変異常な国だと思います。

 地震というものを最後に皆さんにお伝えしたい。
 地震というのはマグニチュードという単位で表しますね。マグニチュード7の地震が起きた、8の地震が起きたというように測るわけですが、マグニチュードというのは、地震が起きた時に放出されるエネルギーを尺度にしています。それをある特殊な数式で変換して、マグニチュードという値に直しているのですが、ではどんなくらいのエネルギー放出になるかというのを今から見ていただこうと思います。マグニチュード3から10まで書いてある。そしてこの縦の方に真ん中に1というのがあって、1段上がるごとに10、100、1000、10000、100000と上がっていく数字が書いてありますし、1段下がるごとに0.1、0.01、0.001、0.0001というように、10分の1ずつ減っていくという、ちょっと変わったグラフ用紙です。対数グラフ用紙と私たちが呼んでいるグラフですけれども。


縦軸の方は何を意味したのかというと、広島の原爆が爆発して放出したエネルギーの何発分かと、そういう単位でこのグラフを作っています。つまり、1というのが広島原爆が爆発した1発分のエネルギーということですね。
 ではマグニチュードとのの関係がどうかというと、これです。


 例えば、マグニチュード6の地震が起きた時は、ここにぶつかっている。つまり、広島原爆1発分です。マグニチュード6の地震が起きたよと皆さんがニュースか何かで見ていたら、それはその場所の地下で広島型の原爆が1発分爆発したと思っていただければいいと思います。ただ、このマグニチュードというのは数式で変換すると言いましたけども、少し変な変換の仕方をしていまして、マグニチュードの値が2上がると、つまり6から8に上がると、放出するエネルギーは100倍になる。そんな関係に換算されます。日本では関東大震災が1923年に起きて、東京がかなり破壊を受けた時がありました。これマグニチュード7.9だったんですけど、広島原爆の・・・これでマグニチュード7.9で広島原爆の700発分くらいの地震が起きて東京が破壊された。1995年に阪神淡路大震災というのが起こりました。それはマグニチュード7.3でした。これは広島原爆に換算すると82発分の規模です。1995年の1月17日の朝早く、淡路島から神戸、西宮の辺りにかけて、広島原爆が82発次々と爆発していたという状況を想像していただければいいと思いますが、それによって神戸の町が破壊されて、6500人もの人が死んでしまったというのがこの地震です。そして2004年にはスマトラ沖地震というのが起こりました。これはマグニチュード9でした。そのために津波がインド洋を渡りインドまで到達した、或いはアフリカまで到達したというような規模で、何十万人もの人がやはり死んでいきました。
 そして、この間起きた東北地方太平洋沖地震というのもマグニチュード9でした。ものすごい地震でした。これは広島原爆3万発分です。
 想像できるでしょうか・・・?
 人間なんかができることとは違うんです。
 想像もできないような猛烈な力で自然が襲ってくる。
 もっと巨大な地震もありました。1960年のチリ地震。マグニチュード9.5という地震。広島原爆の20万発という・・・。
 こんなものが襲ってきたらば、もう何も為す術がないと思うしかありません。
 『今、日本周辺は大地動乱の時代』と東海大学(名古屋大学)の石橋(克彦)さんが言いましたけれども、地震の大活動期に入っています。これからいつまた地震があるかわからないというような状態の中で、54基の原発が動いてきて、それをまた再稼働させようという政府があるのです。
 皆さんにとって日本という国がどういう国なのか、私には判りませんが、できることなら帰らないほうがいいのではないかというくらいに忠告をしてしまいたいという、それほどの危機にあると私は思っています。
 長々としゃべりました。
 終りにします。ありがとうございました。
<会場拍手>



【NYC在住日本人からの質問】
(川井氏)一番多かったのがお子さんに対する影響のことです。一時帰国にせよ、本帰国にせよ、例えばですね、お子さんを日本に連れて帰る場合、どうしたらいいのかということですね。
 こちらは全文を読み上げます。
「千葉県流山市が実家です。1歳、5歳の子供を二人連れて、里帰りをしたくてもできません。悲しくて仕方がありません。子供への影響を考えると帰らないほうがよいでしょうか」
 先生、お願いします。
(小出氏)大変切実なご質問ですし、そういうご質問を私は必ず受けるんですね。汚染地帯に住んでいる人の場合には
「どうしたらいいんでしょうか?逃げたらいいんでしょうか?逃げるべきでしょうか?」
 もう必ずのように、どの集会でも聞かれるのですが、それに対する私の答えは、すいませんがわかりませんという答えです。
 私が皆さんにお伝えできることは、被曝をしたらどれだけの危険があるかということはお伝えできます。例えば赤ん坊が1年間に20ミリシーベルト被曝するようなところに住んでしまえば、いずれ31人に1人の子供がガンで死ぬという危険性を抱えてしまいますということを皆さんにお伝えするということはできる。でも、それを避けるためにどういう行動をとるべきなのかということになってしまうと、私の判断ではなくて、やはり皆さんお1人お1人の判断だと思うのですね。
 例えば今、汚染地帯に人々を住まわせ続けると国が決めたわけで、汚染地帯で皆さん生きてらっしゃいます。何とか逃げたいと皆さん思っている。でも逃げるということは、生活を捨てることなんですね。働いて給料を貰っている。その仕事を捨てて本当に逃げることができるのかということが、まず問題になると思うし、男親はもうしょうがないので、汚染地帯で働いて給料を稼いで、母親と子供だけ逃げようという方も日本にはたくさんいます。でもそうすると、今度は家族が崩壊してしまうのですね。小さい子供をもちろん被曝させたくないと私は思うけれども、小さい子供にとって父親だって必要なはずだと私は思います。
 本当にどっちがいいのだろうかということを考えると、私はいつも判らなくなってしまう。私は放射能を扱ってる人間ですから、放射能の被曝というのはものすごく恐ろしいと、今日皆さんに伝えた通り私は思っていますので、全員逃げてほしいと思います。放射線管理区域にしなければいけないような汚染地帯からは、全員逃げてほしいし、国家こそがそれをやる義務があると私は思っている・・・
<会場拍手>
(小出氏)のですが、残念ながらデタラメなこの日本という国があってそれをしない。そうすると人々は本当に途方に暮れて、もうどっちに行けばいいのか判らないという状態にあるのです。
 申し訳ありませんが、そして私は、その前にはどうすべきだということは皆さんに対してお答えできないと、そういう状態です。
 千葉の流山は確かそれなりに汚染していたと私は思いますので、できることなら小さい子供は連れていかない方がいいと思いますけれども、でも里帰りとおっしゃったか、小ちゃい子供たちをおじいちゃん、おばあちゃんのところに連れていくということは、それはそれで人間の営みとして多分、必要なことだと思いますので、どっちが重いのかということを、すいませんがご自分で判断してください。以上です。
(川井氏)次の質問ですが、海洋汚染の件です。海洋汚染で海産物が食べられるのかどうかということですが、こちらの方の質問は、
「日本沿岸の放射能汚染は、親潮、黒潮に乗り、アラスカからカナダ、アメリカ北部にまで達するとお考えですか?その汚染程度はどのくらいになるのでしょうか?」
(小出氏)必ず達します。というのは、先ほど空気中に出てきた放射能は、既に米国の西海岸に達しているというような地図を見ていただきましたし、全部繋がっているんです、地球っていうのは。一か所汚染すれば、それは必ず世界に広がる。当たり前のことなんですね。チェルノブイリ原子力発電所の事故の時だって、ソ連だけが汚れたわけじゃない。日本だって汚れたし、米国だって汚れたし、全部が汚れた。当時日本では、『地球被曝』という言葉が出ましたけれども、全てが繋がっています。そこで、海へどんどん放射能が流れていっているのですが、それはやがて海を汚染しながら、もちろん米国まで届くだろうと思います。ただし、汚染というものが顕著に発見できるようなところはどこまでなのかというと、大変微妙な問題があります。
 例えば、さっきも見ていただいたけども、大気圏内の核実験でもう全部の地球が汚されていたのですね。米国もそうだし、太平洋だって大西洋だって汚されていた。そしてチェルノブイリの事故でまた上乗せされて汚された。そして今度福島の事故でまた上乗せされて汚されていくわけです。それがどこからどこまでが大気圏内核実験の汚れであって、どこからどこまでがチェルノブイリ、どこからどこまでが福島というふうに分けるということは、なかなか難しい作業になるだろうと思います。おまけに太平洋をずっと拡散して米国の方に来る頃までには、特定ができないほどに薄まっていると思いますので、福島からの汚染というものを検出できるかできないかというのは、私は今の段階ではまだ判りません。
 ただ、日本の近海は今、膨大に汚れてしまっていますので、福島の人たちは、ずっともう漁をやらないということでなんとかしのいできているわけです。ただいつまでもそれが出来る道理はありませんので、これから日本近海で獲れる魚は、かなりの汚染のものが市場に出回るということになるだろうと思います。
(川井氏)次の質問、福島4号機に対する危険度を知りたいという質問です。
(小出氏)さきほど見ていただいたとおりなんです。爆発してしまって、使用済燃料プールが宙吊りのような状態になってしまっていたのです。そこにものすごい危険があるということは、東京電力自身がもちろん気が付いていて、東京電力はあの事故の後ただちに破壊されてしまった建物の使用済燃料プール、底が宙吊りのようにしてたんですけれども、そこに鋼鉄の柱をダーッと並べて、宙吊りの燃料プールが崩れ落ちてこないようにそれをコンクリで固めるというような耐震補強工事というのをやったのです。それは東京電力ですら、「これが崩れ落ちたらダメだ」というのが判っていたからやったのです。ただし、猛烈な被曝環境ですから、ゆっくりゆっくりとそこで工事をするということが許されるような状況ではなかったのです。ですから、私はッ本当にその工事がきちっとできているのかなというのが不安なんです。
 だから何とか大きな余震が起きてくれるなよということを今、私は願っているというような状態です。
 そして多分、東京電力もそのことに関しては、かなり危機を感じてると思います。東京電力が何を最優先で作業してるかというと、使用済燃料プールの底に沈んでいる使用済燃料をとにかく安全な場所に移そうと、その作業を今東京電力はしています。被曝環境で、さっきは4号機の穴が空いた建屋を見ていただきましたけど、今既にあの建屋のオペレーションフロアはもうほとんどむきだしになっています。要するに東京電力が壁を取り壊した。何の為かといえば、プールの底に沈んでいる使用済燃料プールをとにかく早く、一刻も早く安全な場所に移したい。そのために作業をしなければいけないということで、邪魔なものをドンドンどけてその作業を急ごうとしています。
 それでも来年の12月にならないと、取り出し作業が始められないというのが、確か東京電力の工程表だったと思います。ですから、まだ1年半はあるので、それまでの間余震が起きないでくれよと、まずは願うということだと思います。
 申し訳ないけれども、今はそれくらいのことしか私にはわかりません。
(川井氏)次の質問は私たちニューヨークに住むものにとって、バックヤードにある原発です。
「ニューヨーク・インディアンポイント原子力発電所も福島原発と同じくらい古く、ひび割れているとの話を聞いたことがありますが、小出先生の見解をお聞かせいただけますか?」
(小出氏)<苦笑>一般的に言えば、機械というのは古くなると壊れるのですね。どんな機械もそうですし、インディアンポイントというのはかなり古かったと思いますので、危険が増えてきていると思っていただいた方がいいだろうと思います。日本の原発でも既に40年を越えているものもあるし、40年に近いものもあってそういう原子力発電所は、原子炉圧力容器という圧力釜が、予想以上に脆くなってきてしまっているというデータが、最近次々と明らかになってきていますので、古い原子力発電所は注意をしなければいけないというのは本当だと思います。
 ただしですけれども、例えば米国で起きた一番大きな原子力発電所の事故は、スリーマイル島の事故でした。でもスリーマイル島の原子力発電所は、運転を始めて、たしか2か月か3か月でした。いってみれば最新鋭の原子力発電所であんな事故が起きたのです。これまでに起きた原子力発電所の事故で最悪だったのはチェルノブイリ、福島がそれを上回るかもしれませんが、チェルノブイリだと私は思います。そのチェルノブイリの発電所は、運転を始めて2年後でした。ソ連きっての最新鋭の原子力発電所でした。だから古いのは確かに危険だと思っていただきたいと思いますが、新しいから安全だというふうに思ってしまったら、それも間違い。やはり全ての原子力発電所は止めなければいけないと私は思います。
 正面からお答えできなくて申し訳ありませんが、お許しください。
(川井氏)「海外に住んでいる私たちにできることは」という質問がたくさんありましたが、この方の質問は、
「現在、野田政権が打ち出している原発の再稼働方針を取り下げさせるために、海外に住んでいる私たち日本人は、今何をするべきでしょうか?」
(小出氏)<苦笑>こういうご質問もよく受けます。
「原子力発電所を止めたいけども、どうしたらいいのか」
と聞かれるんですけども、私に聞かないでください<苦笑>
<会場苦笑>
(小出氏)と私は思うんですね。私はかれこれ40年間、「原子力を止めなければいけない」と言い続けてきた人間なんです。なんとか一刻も早く原子力をやめさせようと思って、思いつくことは多分なんでもしてきたつもりなんです。
 それでも止められなかった・・・のです。
 事故が起きる前に、何とか止めたいと思いながら生きてきましたけれども、とうとう私の願いは届かないまま、事故になってしまった・・・のです。
「私の人生って、一体何なんだろう、何のために生きてきたんだろう」
と思ってしまうくらいに、私の力は何もならなかったのです。
 ですから、私に「どうしたらいいのか」と聞かれても、すいませんが判りません。私が知っていれば、私がやりました。でもできなかったんですね。
 でも、今日だってニューヨークの町にこんなに皆さん集まってくれている。私はさっきから驚いていますけれども、こうやって皆さん一人一人が、この問題に気が付いてくれて、何がしか自分のことを、「自分はこれができる」ということをやり始めてくださるなら、きっと止められるだろうと私は今でも思っていますので、皆さん、是非お願いしたいと思います。
<会場拍手>
(川井氏)これからずっと続く問題なんですけれども、
「原発を止めた後も続く後の処理は、担っていく人材の確保をどうしたらいいのでしょうか?」
(小出氏)今回は福島第一原子力発電所の事故が起きてしまったのですね。大変悲惨なことになっているし、こんなことが起きなければ良かったと心から私は願いますけれども、では起きなければ原子力に問題はないのかといえばそうではないのですね。原子力というものをやってしまう、つまりウランを燃やしてしまう、核分裂をさせてしまうということをやると、核分裂生成物という放射性物質がどうしてもできてしまうんです。そして、人間にはそれを無毒化する力が無いんです。人間が原子炉を作ったのは、1942年です。もちろん米国です。マンハッタン計画という原爆製造計画のなかで、プルトニウムという材料を作りだしたくて、とにかく原子炉を作ろうとして、シカゴ大学で人類初の原子炉を動かしました。
 その時からみんな知っていたんです。
「これをやってしまったら、大変な毒物を作ってしまう」
 なんとかその毒物を無毒化しなければいけないという研究は、その時から既に始まっている。つまり70年間やってる。でも見えないんです、やり方が。70年間追い求めてきて見えないという科学的な方策というのは、多分見えないというふうにおもわなければいけないと私は、かなり絶望的な気分でそう思っています。それができないとどうするのかというと、100万年間どこかに隔離しようというのです。
 100万年なんて、「冗談を言うな」と私はまず思います。この米国という国、建国されてからまだ234年か5年ですよね、独立宣言を出してから。国家だってそんな歴史しかない。日本が文明開化した明治維新なんて、まだ明治維新から140年くらいしか経っていない。そんな国が、どんどんどんどん「電気だ、電気だ、豊かな暮らし」と言って、原子力をどんどんやって、生み出したごみは100万年管理しますなんて、そんなことは有り得ない考え方だと私は思います。
 なんとかしなければいけないと、このゴミを100万年も子々孫々に重荷を押し付けるのは、どうしても私はやりたくないので、なんとか無毒化を成し遂げたいとずーっと願っています。大変難しい絶望的な状況ですけれども、なんとかやりたいと、やらなければいけないと思いますし、そういう研究をするための若い人たちを育てなければいけないと思います。
 私は原子力に夢を持ってこの場所に来たんですけれども、もう原子力に夢がないということは、若い人たちはほとんどみんな気が付いてしまっているのですね。ですから、ゴミの始末だけに自分の一生を懸けることができるかといってしまうと、なかなか難しいだろうなと思います。
 私は自分で大変愚かなことに原子力に夢を掛けて、原子力の場に来てしまったという人間です。もしその私がもう一度生きることができるなら、私はまた再度原子力の場に戻って、放射能無毒化の仕事をしたいと私は思いますけれども、本当に今の若い人たちが、そういう仕事のために来てくれるかなと思うと、それも難しいかもしれないと思います。
 でも大変重要な仕事が今、あるということを、私は私なりに若い人たちに伝えていきたいと思っています。以上です。
<会場拍手>
(川井氏)あと二つだけ質問をお願いいたします。
「汚染されてしまった地域は、これからどうしたらいいのでしょうか?」
(小出氏)これも難しいですね。でも私はさっき日本という国は法治国家だということを言ってきたという話を聞いていただきました。もし日本が法治国家だと言い続けるのであれば、せめて日本の国家が自分で決めた法律で、放射線の管理区域にしないといけないという場所は、無人にすべきだと思います。2万平方キロメートルを多分超えると思います。日本の国土の何パーセントというようなところを放棄する、失われるということを本当はやらなければいけないと思います。
 まぁ、日本という国家が倒産するということだと私は思いますけれども、でもそれくらいのことが起きているわけですし、「どうしたらいいのですか?」と問われるなら、そうすべきだと私は思います。
(川井氏)最後の質問です。ちょっと難しいですけれども、
「幾人かの政治家が言うとおり、原発は他の国に対しての核の抑止力になると思われますか?」
(小出氏)その「抑止力」というのは、核兵器を作ると、そういう意味でおっしゃってるんですかね?
(川井氏)そうではないかと思われます。
(小出氏)はい。
 日本でこれまでは原子力は平和利用だと言ってずっと進めてきたのですね。でも2年ほど前だったと思いますが、NHKといういわゆる国営放送局が「核を求めた日本」という番組を放送しました。その放送の内容で何を言っていたかというと、この日本という国は原子力をやってきた。でもその本当の理由というのは、実は核兵器を作りたかったからだという内幕を暴いた放送でした。
「日本は戦争に負けて二等国になってしまった。いつまでも二等国でいることはできない。現在世界を支配している戦勝国、国連常任理事国になっている国々は、どうしてそんなそうなのかといえば核兵器を持っているからだ。日本だって国際的にちゃんと一等国になるためには、どうしても核兵器を持たなければいけない」
と言って、同じく負けたドイツにその話を持ちかけるということを1960年代にやっていたんですね。持ちかけられたドイツの方はびっくりして、
「日本という国はこんなことを考えてる」
と言ってドイツの文書に残しているし、日本でもそういう文書が次々と発掘されてきている。日本というこの国は、原子力の平和利用と共謀しながら、実はやりたかったのは、核兵器を作る能力を持つことだったのだということを示した番組でした。
 私は実は、そのNHKの番組を見る前から、日本政府のいろんな文書を読んでそのことを知っていました。本当の原子力の目的というのは、核兵器を持つということなのだから、原子力を諦めてしまうということは、核兵器も諦めるということになるわけだし、今の日本の政治家の中には、
「核兵器を持つ力を懐に入れておくためには、どうしても原子力を手放してはいけない」
「世界に対しても、日本はこれだけの力を持っているんだぞということを見せつけておかなければいけない」
と思っているという人がいるということは、確実です。
 昔もそうでしたし、今もそうなんだと思います。
 であればこそ、私は原子力はやめなければいけないと思っている人間です。
 以上です。
<会場拍手>
(川井氏)小出先生、どうもありがとうございました。
 それから皆さん、これだけたくさんの真摯な、そしてとても意識のレベルの高い史質問をいただきました。この質問は全部小出先生にお渡しして・・・
<会場笑い>
(小出氏)<苦笑しながら頭を抱える>
(川井氏)ニューヨークのお土産にしたいと思います。
<会場拍手>
(川井氏)開始時間が少々遅れましたので、終了時間が変更になって申し訳ありません。
 皆さま、今日のお話ですけれども、ここでとどめずに、ご家族の方々、お友達、職場の方々にお伝えください。そして今日ここに来た皆さん。みんな一人一人で孤立してるのではない。これだけたくさんの人がNY地区、東海岸の地区にいるんだということをしっかりと記憶して、それからもしできましたら、お隣の人たちとも繋がっていくようにしてください。
 お願いいたします。
 ありがとうございました。
【以上】