最近、楽譜が読めない子供たちが増えています。
連載していたヤマハの雑誌「GO!GO!吹奏楽」でも、それは何度も話題になっていて、私の連載していた「楽典講座」では、難しいことはやめて、まずは自力で楽譜が読めるようにしようというコンセプトで始めました。
(ちなみに、音符の長さについては、全音符を一枚のピザに例えて、ピザの絵を切って説明したのでした。)
連載当時、私は、「個人的にレッスンを受けている子供たちは、この心配はないだろう」と思っていたのですが、最近、何人もの先生とお話しすると、やはり個人レッスンに通っていても、楽譜の読めない子供たちが増えている…というのです。
実を言うと、私のところに現在、通っている生徒さんの中にも、楽譜が読めない生徒さんはいます。
なかには、「以前からピアノを習っていたけれど、どうも楽譜の読み方を習っていないようで、心配で先生を変わりたい。」という理由で、私のところに来ている生徒さんもいますが、最初から私のところでレッスンを受けていて、楽譜の読み方は、一から教えているにもかかわらず、やっぱり読めない…という生徒さんもいらっしゃいます。
この方たちは、みなさん、ピアノの生徒さんなのですが、しかし、不思議とピアノは弾けるのです。
しかも、ものすごく上手に弾けちゃったりします
「練習したの」と聞くと、「うん
」と嬉しそうに答えてくれますが、「じゃ、最初の音は何の音だっけ
」と聞くと、しばらくの沈黙の後、全然違う音の名前を言ってきます
それが、どうしても私には理解ができません
なんで、まったく楽譜が読めないのに、正確にピアノが弾けるの
ヴァイオリンだとよくある話なのだそうで、ヴァイオリンの宮下要先生によると、「指番号で音を覚えてしまっていて、この音はなにって聞くと『D線の3です。』って答えが返ってくるんだよ
」と。
「それでは、ジプシーと同じになってしまう」というのが先生のご意見。
確かに、ジプシーは楽譜が読めないどころか、楽譜を持っていない場合が多く、口伝えで曲を教えていくので、それで成り立ってしまうんだとか。
しかし、最近、ピアノの先生に聞いても、「楽譜の読めない生徒さんの方が、多いかも。」と言われます。
(ちなみに、私が何人かの生徒さんのお母様に、ジプシーの話をしたら、「ジプシーってなんですか初めて聞きました。」と言われました。若い方はご存知ないのかな…
この記事を読んでいて、ジプシーがわからない方は、検索して調べてみてください~
)
これは、あるピアニストに聞いたお話。
小学校5年生の生徒さんが、どうしても楽譜が読めず、さらに四分音符とか二分音符の長さが覚えられないのに、付点音符が出てきてしまったので、丸いケーキの絵を描いて、説明しました。
「お誕生日とかに、大きな丸いケーキを食べたことある
」と聞くと、
「ある」と生徒さん。
「じゃ、(絵を描きながら)家族四人で分けるとして、ちゃんが4つに分けた1つを食べました。残りはいくつでしょう
」
と聞いたところ、「わからない」と。
どうしてか聞いたところ、
「あのね、お母さんはお誕生日ケーキをちゃんとまっすぐに切らないから、いろんな形のケーキになるの。
だから、そのうちの一つを食べた場合、残りが全体のどれくらいなのか、想像つかない。」
という回答が帰って来たそうです
この先生は、まず、この生徒さんのお母様に「お願いだから、一度、等分にケーキを切ってください。」とお願いしたそうです。
私も中学生のクラブでクラリネットを指導していたとき、同じようなことがありました。
私の場合は、ピザの絵を描いて説明していたのですが…
「先生~私の家で取るピザは、4等分になってないから、想像できないんですけど
Mサイズは6等分だし。」
「Lサイズなら8等分じゃない」と私が聞くと、
「あー、うち、Mしかとらないから、わかんないです
」
う~ん困ったね
この子は二分音符のことを「白丸に棒のついてるヤツ」と言ってましたので、ぜひ、覚えてほしかったのですが、分数の話をしてもさっぱりでした。
そこで、「クワトロってピザ、あるじゃない」
と、クワトロピザの絵を描いてみたのですが、まだ、キョトンとしている
「先生~先生んちってどこのピザ取ってんの~
私んちはピ○ーラなんだけど、クワトロって言わないんだよね。だから、全然わかんないんだけど…」
うーーーーん
反抗期、恐るべしっ
結局、一年かけてこの生徒さんには、音符の長さについて説明しましたが、読むことはできませんでした。
やはり、分数に関しては、さっぱり理解できていなかったのですが、特に成績も悪い方ではなく、高校も普通に受験して、進学していきました。
しかし、どの子も発表会や定期演奏会に出られるほど、ちゃんと楽器は演奏できるんですよ
これでいいのかなぁ~
悶々とそう思いながら、毎週のように「この音、何の音かな」とニコニコ聞きながら、全然違う音名を言われてもめげずに、片手ずつピアノを弾きながら、音符を歌わせるレッスンの毎日です…