「モルダウ」と呼ばれる川 | そんすブログ「映画もええが読書も徳っしょ」

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みなさんは「ヴルタヴァ」という曲を知っているだろうか?

それなら、「モルダウ」という曲を知っているだろうか?

ふたつとも同じ曲を指す言葉である。
しかし、「モルダウ」という題目がより世間に広まっている。
音楽の教科書にも載るほどの有名な曲だ。

ベドルジフ・スメタナの代表作。
6つの交響詩からなる連作交響詩「我が祖国」の第2曲目である。
ヴルタヴァはチェコ国内最長の川・ヴルタヴァ川のこと。

スメタナはヴルタヴァについてテキストを残している。
「ヴルタヴァ川上流の2つの小さな源流から溢れる水が1つの川となり、チェコの美しい草原や森林、そして農村の結婚式の踊りのそばを流れて行く。夜、月の光の下妖精たちが静かに舞う。朝になり川は廃墟となっている宮殿や古城のそばを流れ、突如急流にて渦を巻く。やがてそこを抜けると遠い昔戦場となった高い城の側を経てプラハを通り、最後はさらに大きな川へと合流する。」

チェコは昔、ドイツやオーストリア、ハンガリーの支配下にあった。どの国もドイツ語圏である。
第1時世界大戦後、チェコスロバキア共和国は独立。
第2時世界大戦後は共産主義政権を設立し「人民民主主義」を宣言したチェコスロバキア共和国であったが、1989年の「ビロード革命」により共産党体制は崩壊、翌1990年には複数政党制による自由選挙が行なわれ、1993年にチェコとスロバキアは平和的に分離(「ビロード離婚」)した。

「モルダウ」とはドイツ語である。
過去の植民地によりヴルタヴァ川は「モルダウ川」となってしまったのだ。
しかし解放・独立された今も、世間の認識は「モルダウ」である。

スメタナは、悲しみを乗り越え美しく発展する祖国チェコを想い、聴覚を失ってもなお「我が祖国」を作曲した。

今こそ、私たちこそ、あの川、あの曲を「ヴルタヴァ」と呼ぶべきではないだろうか。