週休7日の歌うたいは、惨めに貯金残高を眺めていた。

その類稀なる才能と、反比例するようなヒモジイ生活の中で

これまで大切に温めていた才覚に期待を抱く事を恐れるようになった。


嗚呼、若年化するこの音楽業界で30近くにもなって芽も出ないなんて・・・
私は誰の為に、全てを捨てて音楽に賭けてきたのだろう。


成就しない初恋も、
病気で苦しみ逝った親達も、
線路に吐き捨てたガムも、

みんな私を恨んでいるんだろ?


大丈夫安心したまえ。

ツケはちゃ~んと僕の荷重となって苦しめてくれているよ。


駅前で僕を見過ごした何万人って人達は、
今頃温かい布団で眠っているのかな。

マックでコーヒーを三杯お替りして歌ったバラードは、
甘ったるくは無かった筈だが。


嗚呼、
ギター一本で、怪獣退治が出来る時代に行きたい。

人の歌をパクッてでも、武道館でご機嫌なシャウトをかましたい。


敬愛する映画監督に起用されたい。
左手の指の皮が無くなるくらい歌ったあの歌を。


さて、誰を恨もうか。
公務員に転んだ、盟友のベーシストか、
資本主義をぶちまけたアメリカか、
学校で「あなたの歌かっこええな」とそそのかした可愛いコちゃんか、
ギターをくれた兄貴か、
イカ天で最高にイかしてた斉藤和義か、

働き口を絶った私の性か、
自分の声が好きなナルシストである私か、
人の愛情に応えられない臆病な私か、

数え上げたらキリが無い。


空想の中でも俺は売れていない。
それは悲しい事、哀れも無い真実。


それでも、私は下北沢の北口に向かう。
「ねえ、お父さん。
 タバコを吸っている間だけでいいから聴いておくれよ。」
そんな視線が痛々しい。

タオルで隠したハゲ頭が痛々しい。
一銭も残っていないギターケースを今日も畳む。

この六弦の価値よりも、私の歌は無能であるのか。


今日も、どこかでロックスターが客とベットで遊んでるよ。
本当に歌いたい唄も歌わずに、
抱きたい女と寝ずに、
吸いたくないタバコを吹かして
吸いたいハッパをぷかぷか隠れてやって

今日も、あそこで彼女が寝ているよ
誰にも邪魔されない聖地が、月に照らされていて綺麗だ。
GOOD SLEEPそいつを守る為に、僕はアリになった。
いつかキリギリスを笑ってやるんだ。
「俺はお前より高いギターで、
 彼女の眠りを守っている。」って