旅立ちの日 | Un bel giorno di tredici

Un bel giorno di tredici

~ある素敵な13日~

イタリアに関することを中心に、
楽しいこと好きなことを書いていきます。

いよいよパドヴァに発つ時が来た。


出発前日は、

いつも通りオリーブを収穫し、

いつも通り叔父さんと怒鳴りあい、

いつも通り叔父さんと冗談を言い合い、

いつも通りお昼はお医者さんを交えて

叔父さんのパスタを食べ、

お医者さんの煎れたエスプレッソを飲んだ。


「明日、出発でしょ?」


お医者さんに、そう聞かれた。


「そうなんだよ~。寂しいよ~。」


というと、お医者さんは、いつもの調子で


「え~~~。」


と気のない返事をしてベランダに出た。


Un bel giorno di tredici


「キッカ。なんでパドヴァなんだ。遠いぞ!

 ジェノバの学校には変えられないのか!!」


ここ数日、何度か叔父さんが、そう言ってくれている。

実はお姉さんにも


「サボーナにだって学校はあるし!

 私はスペイン語を教えてたりしたことがあるから、

 イタリア語だって教えられるのよ!!

 なんでパドヴァなの!!」


と言ってもらったんだ。


私も出来ることなら、そうしたいけど

パドヴァの学校に全ての授業料を前払い済みなんだよね。

学生ビザだから、事前に入金証明が必要だったの。

それを説明すると


「うぬぅ~。」


と苦い顔をする叔父さん。


「いつでも戻ってこい!

 もし部屋がないっていうなら俺の家に泊まれ!

 寝る場所は用意するから。

 いいな、お前の好きな時にいつでも戻ってこい。」


嬉しさと離れがたさで涙が出そうになる。


「ありがとう。ブラック(犬)の小屋も一つ空いてるから、

 いざと言う時は、ブラックの小屋に寝るよ。」


寂しさを抑えて、冗談を言う。


Un bel giorno di tredici


「パドヴァに行ったら自炊だろう。

 オリーブオイル持って行け!!」


皆で拾い集めて搾油場でオイルになったオリーブオイル。

新鮮で香りがよくて、まろやか。

オイルだけを口に含んでも、

油の嫌な感じがしない。


「ペットボトルと、瓶、どっちに入れる?」


叔父さんに聞かれたので、瓶がいいと答えた。


樽の中からオリーブオイルをすくい取り、

瓶にオリーブオイルを入れてくれた。

そして、2本目の瓶を手に取る叔父さん。


え?!2本目?!

この1ヶ月でオリーブの実を集める大変さを

十分すぎるほど知っているので、

そんな貴重なオリーブオイルを

私に2本もくれるなんて、もったいないよ!!


叔父さんを止めようとしたが


「2本もっていけ!!」


と譲らない。


「3本目も持って行け!!」


と言うので、

今度は『もったいない』というか『重い』という理由で断った(笑)


みなさん思い出してください。

私の荷物は元々30㎏あるんです。

そして10㎏のリュックを背負ってるんです。

しかも、マンマにもらったヌテッラ(大きいやつ)も

荷物に入ってるんです。


「だから最初にペットボトルと瓶、

 どっちがいいか聞いただろ!!

 ペットボトルにすればよかっただろ!!」


いやいやいや!!

ペットボトルでもオイル3本は重いから!!


「私は瓶が良かったの!

 また来るから、その時に3本目をくれ!!」


最後まで言い合いです(笑)


Un bel giorno di tredici


本日も焚火をする白ヒゲのおじさん。


「キッカ。これ食べな。キッカが好きだと思う。」


そう言ってエスプレッソのチョコをくれた。

チョコの中に入っているのはエスプレッソそのもの!!

なんて美味しいんでしょう!!

喜び小躍りする私。


白ヒゲのおじさんは、

いつものように焚火の注意点を教えてくれた。

そして焚火を眺めながら、ぽつりと話し出す


「明日出発かぁ。リグーリアの方が温かいのに

 なんでパドヴァに行くんだぁ?

 キッカは叔父さんと相性が良かったと思うよ。

 ほら、叔父さんはいつも怒鳴ってばっかじゃん。

 でもキッカは上手くやってたよ。」


ちょっと2人でしんみりした後に


「キッカ、おいで。ほらこのブドウ食べな。」


そう言ってブドウ棚から白ブドウを獲ってくれた。

種が多くて酸っぱくて、ちょっと切ない味です。


Un bel giorno di tredici


前にも使った写真だけど。

犬のおじさんともお別れの挨拶。

いつもちゃんと私の名前を覚えててくれて、

叔父さんと白ヒゲのおじさんが、

私を「キッカ!」と呼ぶと毎回毎回


「キッカじゃないよ!ciusca(チュスカ)だよ!!」


めげずに訂正してくれていたなぁ。


そして再び、ボートの近くで

作業中のお医者さんが声を掛けてきた。
ちょっと話をした後に


「明日は何時に出発なの?」


朝の出発だということをつげると


「あ~。俺、今夜、夜勤だから明日は会えないんだぁ。」


じゃあ、会えるのはこれで最後なので


「いろいろありがとう。さよなら。」


と別れの握手を求めると


「ダメ!ダメダメ!

 さよならは言わないよ。また、すぐに会おう!」


『いや~ん♪カッコイイ~♪』


なんて思った人、大間違いですよ!!


この1ヶ月、共に過ごしてきて、私は知っているのです。


この男、作業中に手袋脱ぐの面倒だったから、

そんなセリフでごまかしたんだと!!(笑)


『お前は姫川亜弓かっ!!

 (『ガラスの仮面』を参照ください。)』


心の中で、そう突っ込んだ。


Un bel giorno di tredici

お姉さんが「寂しくなったら食べなさい。」

と言ってお菓子をプレゼントしてくれた。

Un bel giorno di tredici


マロングラッセと、飴の詰め合わせ。

うぅ・・・。

お姉さんには一番お世話になったなぁ。


「チェッレとパドヴァは遠いけど、なにかあったら

 助けるから、かならず連絡してね。

 家に来たい時は、好きな時に来るのよ。

 電話もして、メールもして、パドヴァの写真も送ってね!」


もう、涙が出そうです。


最後に台所にいるマンマに


「マンマ、いろいろありがとう。

 本当に楽しくて、快適で、

 素晴らしい経験をさせてもらったよ。」


と言ったところで、思わず涙が出てきた。


「なんで泣くの!!

 学校が休みになったら、すぐに戻ってきなさい!

 ciusca(チュスカ)が好きな時に来ていいんだから!

 これは別れじゃないんだから泣く必要はないのよ!」


この家族に出会えただけでも、

イタリアに来て本当に良かったと思う。


な~んて思ってると、

すぐさまマンマは


「さっきciusca(チュスカ)が台所で泣いてたから、

 すぐ戻って来いって言ったのよ!」


と義理のお兄さんに大声で報告。


えぇ!

なんで、大声で言うの~!(爆笑)