米金融大手JPモルガン・チェースの巨額損失を受けて、銀行が自らの資金で投資を行う「自己勘定取引」の防止を目的とした規制の文言の厳格化を米政府は目指しているようです。
このような取引規制を幾ら作っても、その裏道を探すのが金融市場の投資の王道というもの。これも選挙対策か気休めの規制文言のようなものにしかならないとは思いますが、これによってまた大手金融機関が資金的な救済がなされてしまうと、99%の人々の怒りはマジで爆発してしまいそうですね。
(以下引用)
○リスクヘッジかギャンブルか―JPモルガン損失、ボルカー・ルールの曖昧さを露呈(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)
http://jp.wsj.com/Finance-Markets/Finance/node_441377?mod=Center_mostpopular
【ワシントン】リスクヘッジのための取引か、それとも利益追求のためのギャンブルか――。
米金融大手JPモルガン・チェースが金融派生商品の取引で20億ドル(約1600億円)の損失を出したことを受けて、金融機関の取引の線引きをめぐる議論が再び高まっている。
ボルカー元FRB議長(左) Agence France-Presse/Getty Images
議論の的は2010年成立の金融規制改革法(ドッド・フランク法)に盛り込まれたいわゆる「ボルカー・ルール」。金融機関による自己勘定取引とその他の投機的な取引を原則的に禁止する規制だが、同ルールの詳細はいまだに策定作業が続いている。
ボルカー・ルールを作成した上院議員らとJPモルガンとの間には、同法に対する見解に相違がある。
JPモルガンのジェームズ・ダイモン最高経営責任者(CEO)は10日、20億ドルを超える損失を出した取引はリスクヘッジのために行ったものであり、ボルカー・ルールに違反していないと述べた。
米金融業界はドッド・フランク法の緩和を目指しており、ダイモン氏はこれまでも業界を代表して、大手銀行への過剰規制がもたらす危険性を指摘していた。
一方、ボルカー・ルール作成に参加した民主党上院のカール・レビン議員(ミシガン州)とジェフ・マークリー議員(オレゴン州)はJPモルガンの取引がボルカー・ルールに抵触しているとの見方を示した。
レビン議員は11日に電話記者会見を行い、「この取引は同法で規定されているリスクヘッジには当たらない」と述べた。
同議員によると、ドッド・フランク法では、銀行が保有する個別の資産や持ち高に関するリスクを軽減する目的でのみリスクヘッジが認められており、「今回の取引はこれに当たらない」という。
しかし、ルールの詳細が確定しない限り、どちらの見方が正しいかは判断できない。
米連邦預金保険公社(FDIC)の前総裁、シーラ・ベア氏は「リスクヘッジとしての適用除外に関する定義があやふやなままでは多くの問題が起きる恐れがある」と指摘した。ベア氏は「連邦準備理事会(FRB)はこの状況を受けて、リスクヘッジの定義を強化することを検討すべきだ」と述べた。
FRBはボルカー・ルールの実施細目の策定を主導している。FRBの広報担当者は個別の金融機関に関連する監督問題について議論しないと述べ、コメントを差し控えた。
ボルカー・ルールの策定は7月に期限を迎えるが、関係者はこれまでに、期限に間に合わない可能性が高いと指摘している。
FRBや米証券取引委員会(SEC)などの関係当局者が昨年10月に公表したボルカー・ルールの規制案によると、銀行が保有する証券ポートフォリオのリスクを軽減するための取引は規制の適用外とされている。
マークリー、レビン両議員は規制当局が規則案に「抜け穴」を仕込んだと主張している。
規制案では、銀行は「個別または全体のポジション(持ち高)」に関連するヘッジを行うことが認められている。
景気悪化やその他の一般的な出来事に対するリスクヘッジのための取引がこれに含まれるかどうかは明確でない。
元米通貨監督庁長官で現在は金融コンサルティング企業プロモントリー・フィナンシャル・グループのCEOを務めるユージン・ルドウィック氏は「マクロヘッジが認められなければ、銀行の安全性と健全性が大いに低下するだろう」と述べた。
規制の目的は金融システムから誤りや損失を完全に排除することではないとの主張もある。
米証券会社の主要業界団体である証券業金融市場協会(SIFMA)の社長兼CEOのティム・ライアン氏は「あり得ることだ」と述べた。ライアン氏はJPモルガンの取引は同社にとって許容範囲内にあるリスクヘッジだと思うと話している。