皆さん、こんにちは。

千葉県議会議員(船橋市選出)の石川りょうです。

 

先週金曜日(3月8日)に開かれた千葉県議会総合企画企業常任委員会に出席したご報告をさせていただきます。私からは2点の質疑をさせていただきましたが、今日はまず、そのうちの「外国籍の子どもの日本語学習等支援事業」についてご報告いたします。

 

有料記事ですが、3月9日の千葉日報の1面で紹介されたテーマです。

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千葉県では、令和6年度より、外国籍の子どもが地域の一員として暮らし活躍できるよう、高校就学に必要となる日本語や教科等の指導に取り組むNPO法人等への支援を行います。本年1月から施行された多様性尊重推進条例の理念を実現するための事業の一つと言えると思います。

 

新規事業であることから、私からはEBPM(証拠に基づく政策立案)のロジックモデルに基づいて本事業を考えてみました。施策には基本的に、①投入➡②活動➡③産出(アウトプット)➡④成果(アウトカム)の流れがあります。

 

本事業では、①投入として500万円の予算を使い、②活動として「県内の民間団体による教室で義務教育年齢を超過した日本語指導を要する外国籍の子供に日本語や教科を教え」ます。その結果として③産出があるはずなのですが、執行部(県庁)からの説明ではこの部分が不明瞭でした。そこで、私から「産出」の具体的な数字や証拠を確認するために以下のような質問をし、執行部からの答弁を得ました。

 

 

【石川の質問①】

事業の対象者(義務教育年齢を超過した日本語指導を要する外国籍の子ども)は本県に何人いるのか?

 

【執行部の答弁①】

〇 親の仕事による来日など、日本語の指導が必要と思われる「家族滞在」の在留資格で、高校在籍の年齢に相当する15歳から17歳の子供の、本県における人数は、法務省の統計によると、令和3年6月時点で464人となる。

○ 一方、千葉県の高校に在籍している、日本語指導が必要な外国籍の子供の数は、文部科学省が実施している調査によると、262人と なっている。

〇 令和3年時点の数字ではあるが、この差の約200人が、 支援の対象となる可能性がある子どもの人数と推計される。

 

 

【石川の質問②】

本事業を実施することによって、この対象者(約200人)のうちの何人に日本語学習等の支援を行いたいと考えているのか?

 

【執行部の答弁②】

〇 本事業では、子どもたちを直接支援するのではなく、受け皿となる団体への支援を通じ、子供たちへの支援につなげることを目的としており、本事業を進めることで、支援を行う団体の増加や、支援の充実が図られることを期待している。

〇 学校に在籍する、日本語指導が必要な児童生徒等の数については、文部科学省の調査で把握が可能であるが、一方で、この事業が対象とする高校就学を目指す義務教育年齢を超過した子供の数については、公的機関の支援の外にあり、実態を把握する方法がなく、具体的な数を挙げることは困難。

〇 なお、県が把握した範囲で申し上げると、昨年度は、複数の団体が、義務教育年齢を超過した子供、約30名に対し、就学に向けた日本語学習支援を行っており、これ以外の団体においても、支援が行われている可能性があると考える。

 

 

【石川の質問③】

本事業における要件を満たすNPO法人などの非営利法人は何団体あるのか?

 

【執行部の答弁③】

〇 県では、支援団体が合同で開催している子供たちの進学の相談会への参加や、市やちば国際コンベンションビューローからの情報提供などにより、子供の学習支援を行っている団体の把握に努めてきたところ。

〇 県が把握できた範囲では、昨年は少なくとも3団体が、義務教育年齢を超過した外国籍の子供に対する受け皿として、高校就学に向けた日本語等の学習の支援を行っており、これ以外の団体においても支援が行われている可能性があると考える。

〇 今後、制度の活用を広く呼びかけ、さらに多くの団体に支援に加わっていただき、子供たちへの支援が拡大していくよう取り組んでいく。

 

 

【石川の質問④】

予算額500万円の算定根拠は?

 

【執行部の答弁④】

〇 本事業の予算額の算定に当たっては、支援団体の決算状況を参考としながら、団体の運営に大きな負担となっている「人件費」や「会場借上料」の3分の1を補助することとした上で、 先ほどの3団体に加え、まだ把握していない団体や、新たに支援に加わる団体が出てくることも考慮し、1団体の上限を300万、全体の予算額を500万円とした。

 

 

これらの質疑のやり取りの中で、令和3年度の数字ではありますが、法務省や文科省の統計から推測すると、本事業の対象になるであろう外国籍の子どもたちは、少なくとも約200名はいるであろうことが明らかになりました。そして、県内3団体プラスアルファの団体の人件費と会場借り上げ料の補助という「活動」を行うことはわかりました。

 

しかし、その結果、何人の外国籍の子どもたちを支援するのか、したいのかという重要なKPI(Key Performance Indicator:重要達成度指標)となりうる対象者数については少し曖昧な答弁でした。本来であれば、「困っている人が何人いてそのうちの何人に支援をする必要があるからこの事業をやるんです」と具体的な数字(データ)や根拠(エビデンス)をあげるのがEBPMだと私は理解しています。アウトプットに定量的なデータ、具体的な数字がないと、事業を適切に評価することができず、PDCAサイクルもうまく回せません。

 

そこで私からは、新年度から本事業を実施するにあたり、以下3点の要望をしました。

 

(1)本事業を実施する過程で、対象者である日本語指導を要する外国籍の子どもの人数を本県も把握する努力をしていただきたいこと。国のデータを参考にすることも手段ですが、いかんせん古いデータ。現在は本事業を必要としている外国籍の子どもはもっと多くいるはず。事業を実施する以上、対象者を把握することは県の責務である。

 

(2)支援した団体数だけをKPIにするのではなく、それらの団体から学習支援を受けた外国籍の子どもの数をより重視するKPIにして本事業の評価を行っていただきたいこと。本事業における真の対象者は団体ではなく外国籍の子ども。

 

(3)学習支援を受ける外国籍の子どもたちの数を増やす努力をしていただきたいこと。それによって、再来年度以降の産出である対象者の目標人数が決まり、それを達成するための投入である予算の額や活動の内容も決まっていくはずです。

 

個人的には、本事業は本県の目指す多様性尊重社会の実現に資する事業だと思っています。そうであるからこそ、良さそうだからなんとなく行うのではなく、EBPMに則り、具体的なデータや論拠に基づいて目標を定め、説得力ある形で実施していただきたいと思います。その結果、本事業の成果(アウトカム)である「外国籍の子どもたちが地域の一員として暮らし活躍できる」という千葉県を実現してもらいたいと切に願います。

 

2024年3月11日 千葉県議会議員(船橋市選出) 石川りょう

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