皆さん、こんにちは。

船橋市議会議員の石川りょうです。

 

ブログの投稿はだいぶ久しぶりになってしまいましたが、1月24日に会派(飛翔)で視察に行った柏市の部活動地域移行化について報告させていただきます。

 

これまでにも何度かご報告させていただいている通り、私は、現在文科省が進める部活動の地域移行化に賛成の立場をとっています。しかし、これまでに何度も船橋市議会で質問を重ねてきましたが、本市の教育委員会は「進めていく」とは答弁するものの、「国や県、他市の動向を見極めてから」という条件付きであり、様子見という感じに終始している印象です。

 

文科省は、令和5年から3年間かけて、土日の部活動の地域移行化を完了すると言っていますが、現時点で多くの自治体は、船橋市同様、どうしていいか分からず、国や県の具体的な動き待ちという状態なのではないでしょうか?

 

しかし、そのような状況にあって、いち早く部活動の地域移行化に動き出している自治体が千葉県内にありました。それが柏市です。船橋市と同じ中核市であるため、類似団体としても参考になるだろうということで、今回、視察させていただきました。

 

今回の視察で私が明らかにしたかった点は次の2点です。

(1)部活動の地域移行化にイニシアティブを取ったのは誰(どの部局)か?また、なぜそれができたのか?

(2)地域移行化を具体的にどのように進めているのか?

順に記載していきます。

 

 

(1)部活動の地域移行化にイニシアティブを取ったのは誰(どの部局)か?また、なぜそれができたのか?

 

結論から申し上げると、イニシアティブを取ったのは、柏市教育委員会とのことでした。市教委の中の誰なのですか?と尋ねたのですが、属人的なものではなく、組織としての教育委員会が率先して考え、取り組んできたということなのです。そうであればなおさら素晴らしい。

 

なぜそれができたのか?

これは大きな疑問でして、船橋市教育委員会とやり取りをしていると、部活動の教育的意義を大切にされている市教委の職員や教員の方々が多く、そもそも論として、部活動の地域移行化に乗り気ではないところがあります。これは多くの自治体でも同様のことと思います。

 

しかし、柏市ではなぜそれができたのか?

つまり、教育委員会内だけでなく、学校現場のコンセンサスも取れていることがすごいのです。

 

柏市教育委員会には、部活動の今後の持続可能性に対する強い危機感があったということでした。

その危機感の理由は以下の2点です。

 

①生徒の人数が減ってきており、一つの学校だけではチームを組めず、存続の危機にある部活動が増えてきていること。練習内容が限定されてしまうこと。部活動数削減により選択肢が減ってしまうことなどです。

②教職員の働き方改革の観点。時間外勤務の増加、顧問の配置数減少、時間外勤務上限(国の定めた公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン)による活動時間減少などです。

 

この状況。

船橋市もまったく同様の状況です。

①の観点からは、船橋市でも一つの学校ではチームを組めない部活動がすでに発生してきています。②の観点も同様で、船橋市では、昨年、教職員による部活動に対する意識調査を行っているのですが、8割以上の教職員が、部活動を負担に感じていることがわかっています。

 

状況は同じなのに、なぜ柏市では進めていて、船橋市では進まないのでしょうか…。

教育委員会のやる気の問題だと思います。

 

 

(2)地域移行化を具体的にどのように進めているのか?

 

柏市では、上述したような危機感(先見の明)から、平成29年には「柏市部活動・特設クラブ活動のあり方に関するガイドライン」を策定しています。この翌年に、スポーツ庁(国)は「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定しているので、柏市は国に先んじて部活動のあり方に関するガイドラインを策定していたことになります。

 

その後、国のガイドラインを受けて、平成30年に第2版を策定し、令和3年に第3版を策定するとともに、部活動の外部委託のあり方を調査研究するためのワーキンググループを教育委員会内に設置しています。そして、同年度にはすでに実施検証を行なっているのです。それが、令和3年度地域部活動推進研究事業です。大津ヶ丘中学校において、4つの部活動を、土日どちらか1日3時間程度の活動を計45回(年)実施したのです。活動主体はプロポーザルで選択された柏市のNPO法人スポーツライフさんです。

 

検証事業の結果は良好で、生徒・保護者双方からの満足度がとても高かったということです。

 

この実証結果から、柏市は独自の地域移行の仕組みを構築します。

柏市のモデルについてはこちらをご覧ください。

 

 

まず、全体の統括と危機対応を行う「柏市地域部活動推進協会」(仮称)を設置し、全種目の運営を担います。推進協会は将来的に社団法人化を想定しているようで、その中には柏市教育委員会の職員も参加する予定とのこと。この推進協会が地域指導者の登録、研修、謝金支払いなどを行います。指導員には時給1,600円、補助員には時給1,000円が想定されています。その費用を賄うために、参加希望生徒からは、年間29,000円の参加費(保険、備品、システム管理等含む)を徴収することになります。民間のスポーツクラブと比べるとかなり安い料金設定です。しかし、学校の部活動の延長であるということを考慮すると、困窮家庭などから徴収するわけにはいかず、国や県からの補助も含めて今後の課題ではあります。柏市には約10,000人の中学生がいますが、このうちの2,000人が利用してくれれば指導者への謝金等は賄える(運営できる)計算になっているとのことです。

 

今後のスケジュールですが、今年の1月31日から地域の指導員の募集を開始するとのことです。この中には、教職員の兼業兼職も含まれています。教職員への兼業兼職の許可は市でできることです。

 

令和5年度の1学期から生徒の参加者を募集し、夏休み以降、指導者などの準備が整った学校や部活動(種目)から、順次地域部活動(土日のみ)が開始される予定とのことです。

 

かなり進んでいることがわかります。

しかし、先進自治体として、たくさんの課題や困難があると思います。説明くださったご担当の職員の方も「パンドラの箱を開けてしまった感じです」と率直におっしゃっておりました。

 

しかし、現状の部活動(の持続可能性)に危機感を抱き、それを教育委員会内だけでなく、現場や生徒・保護者と共有し、いち早く地域移行化を具体的に進めていっているという柏市教育委員会の皆さまには感銘を受けました。視察を受け入れてくださり、誠にありがとうございました。とても学びの多い視察でした。

 

船橋市も状況は同じであり、しかも県内の類似団体(中核市同士)。

教育委員会のやる気次第で進むか進まないかが決まるということが如実にわかる事例でした。

部活動の地域移行化に関して、船橋市は柏市に大いに学ぶべきと考えます。

 

2023年1月25日 船橋市議会議員 石川りょう

石川りょう公式ホームページ