皆さん、こんにちは。
船橋市議会議員の石川りょうです。
 
令和4年船橋市議会第3回定例会における石川りょうの一般質問の内容について解説させていただきます。
今回のテーマは2つでした。
1.アウトカム(成果)評価について
2.市立船橋高校(市船)に対する寄附金の募集について
*実際の録画映像はこちらからご覧いただけます。
 
今日は1点目のテーマである、アウトカム(成果)評価について解説します。
市中(民間企業等)では、アウトカム評価が当たり前になってきていますが、行政においては、その意識はまだまだ不十分だと感じています。自治体議会における決算審査は、毎年9月・10月に行われます(第3回定例会)。地方自治法233条の規定により、普通地方公共団体の長(船橋市においては市長)は、議会に対して、当該決算に係る会計年度における主要な施策の成果を説明する書類その他政令で定める書類を併せて提出しなければならないと定められており、この規定に則って、船橋市でも「主要な施策の成果に関する説明書」という書類が決算書と併せて作成されています。
 
この「主要な施策の成果に関する説明書」は船橋市のホームページに掲載されているので、こちらから実際に目を通していただきたいと思います。
*令和3年度のものについては、まだ議会の審査を経ていないため一般公開はされていません。
 
基本的に見開きのページで構成されており、左側のページに「事業名」や「担当課名」、「決算額」などが記載されており、右側のページに「主要な施策の概要及び成果」が記載されていることになっています。しかし、右側のページを見ると、主要な「施策」というよりも、「事業」の概要が書かれているだけであり、ひどいものになると、「成果」が書いてあるどころか、「産出(アウトプット)」までしか書いておらず、中にはアウトプットすら書いていない事業も多々あります。これで「主要な施策の成果に関する説明書」と言えるでしょうか?
*「施策」というのは、同じ目的をもった複数の事業を束ねて一体的にする取り組みのことであり、この点について船橋市役所は私への答弁の中で認めています。
 
これが、議員になってからこれまで毎年の決算時期に浮かび上がる私の疑問(問題意識)でした。
執行部もそれは認めるところのようで、来年度以降、「主要な施策の成果に関する説明書」の作り方については、よりわかりやすくなるように再考していくということでしたので期待しています。
 
ただ、この書類は、款・項・目・節といった、各所属による事業を単位として作成されている性質のものである以上、(施策ではなく)あくまで「事業」のアウトプットやアウトカムまでを示すものだという執行部の主張は変わりませんでしたので、「それでは、船橋市はどんな機会に施策のアウトカム評価を実施しているのですか?」と問うたところ、実施計画の中で行っていますという回答でした。
 
実施計画というのは、3層で構成する第3次船橋市総合計画の3階層目に位置する計画です。
市の重点課題の解決や市の将来の発展に寄与し、重点的に推進する事業を中心に位置付けています。
実施計画の計画期間は3年間とされており、毎年度事業の追加や見直しを行うローリング方式となっています。
*実施計画に関する解説と原本はこちらからご覧いただけます。
 
▲第3次総合計画の3層構造:実施計画は3段目
 
それでは、実施計画の中でちゃんと施策のアウトカム評価まで行われているのかというと、私には不十分だと感じられます。
例えば、基本施策1の健康増進ですが、確かに「基本施策における成果指標」という表があり、指標名や基準値、目指す方向性などの記載はあります。
 
 
 
しかし、これも「施策のアウトカム」ではなく、「事業のアウトプット」にとどまってしまっている指標が多いのではないかというのが私の感想です。アウトカムが記載されている指標もありますが、あくまで「直接成果(一次成果)」までです。実施計画とは基本施策を実現するための施策や事業をまとめたものです。基本施策を適切に評価するためには、直接成果(一次成果)だけではなく、それよりも一段上の中間成果(二次成果)まで評価する必要があります。そうでなければ、基本施策よりも上位である「目指すまちの姿」(最終成果:三次成果)まで評価することはできないからです。船橋市の総合計画の目指すところは、あくまで基本構想:「人もまちも輝く笑顔あふれる船橋」(将来都市像)であって、それを実現する6つの「目指すまちの姿」なのです。船橋市はそこまでの指標を設定できていませんし、そこまで評価できていないと思います。
 
▲ 基本構想と目指すまちの姿、そして24の基本施策
 
実施計画におけるアウトカム評価の重要性について、これを所管する杉田副市長に尋ねたところ以下のような答弁がありました。
「市の施策、それから、事業の成果や効果については、アウトカム指標を用いて評価することが重要であることは私も認識している。さらに重要なことは、各施策、事業の推進によって、課題の解決や目的の達成につながったという視点を持つことであると考えており、この点については、過去に自分も含めて様々な形で検討を行ってきたが、いまだ十分ではなかった。そこで、今回、第三次総合計画に基づく今後の進捗管理に当たっては、アウトカム指標を用いて、指標が推移した要因等を適切なツールなどを用いて分析することにより、施策事業を所管する各所属が主体的に、これまで以上にしっかりと評価を進めていければと考えている。」
 
副市長もアウトカム評価の重要性をご認識されているとのことですし、今後、実施計画の中により良い形で反映していけるように研究するという決意表明もありました。私自身も、今後の船橋市政を評価するにあたっては、最小単位の事業だけではなく、それを束にした施策、めざすまちの姿など、全体像をしっかりと見ていきたいと思います。その際のポイントは、これだけの投入(ヒトモノカネ)をして、活動を何回行ったとか、何人参加したか、といったようなアウトプット(産出)のみならず、その結果、どのような成果(アウトカム)をもたらしたのか?という点に注目していきたいと思います。
 
2022年9月26日 船橋市議会議員 石川りょう