皆さん、こんにちは。
船橋市議会議員の石川りょうです。
 
令和4年船橋市議会第1回定例会は昨日(3月25日)閉会しました。
地方議会の第1回定例会は「予算議会」と言われるように、船橋市議会においても、新年度の当初予算が審議される議会です。
その中でも、一般会計の当初予算案は、新年度に船橋市が実施する主な政策や事業をまとめたものであり、最も重要な議案の一つだと言っても過言ではないと思います。
 
結論から申し上げますと、私は令和4年度の一般会計予算案に賛成しました。
本議案の審議をするにあたって、最も悩み、重視した点は、海老川上流地区のまちづくり(ふなばしメディカルタウン構想/海老川上流地区土地区画整理事業)に賛成するか否かでした。なぜなら、当該事業に関する費用が予算案に計上されていたからです。つまり、新年度予算案に賛成するということは、海老川上流地区のまちづくりを進めることにも賛成することになります。
 
この大きなテーマを考えるにあたって、これまでに私が最も重視してきた点は船橋市の将来財政との関係です。
令和3年度に船橋市がはじき出した将来財政推計では、令和4年度の収支差額のマイナスは約50億円、5年度は約67億円、6年度は約60億円、7年度にいたっては約80億円と推計されていました。こんな多額の赤字まみれの状況で、事業費は総額約191億円(そのうち船橋市が負担する金額は約56億円)もする海老川上流地区の土地区画整理事業なんてできるのか?やってる場合ではないんじゃないか?と考えたのです。
 
▲令和3年度版船橋市将来財政推計
 
本事業には、さらに東葉高速鉄道の新駅設置も計画されており、これには船橋市から約65億円もの支出が現時点で想定されています。さらに、本事業地内には新しい市立医療センターが移転される予定ですが、その費用は総額437億円と見積もられています(設計・工事監理料等、工事費、医療機器等整備費、移転費用等、用地取得費等すべて含む)。
 
海老川上流地区のまちづくりを実施したら、本市の財政状況は大きく傾き、市民生活にも負の大きな影響を及ぼしてしまうのではないか?と危惧したわけです。そこにコロナ禍という国家的危機が重なり、心配はさらに増したわけです。
 
今定例会における「市政執行方針及び議案に対する質疑」(他の定例会でいうところの一般質問と議案質疑を併せたようなもの。船橋市議会では当初予算を審議する1定でのみ採用されている質疑方式)で、私から上記のような懸念を質問しました。
質疑の実際の映像(録画映像)はこちらからご覧いただけます。
 
その結果、令和3年度に想定していた将来財政推計が大幅に改善することがわかったのです。
具体的に金額で書くと以下のようになります。
●令和4年度に約50億円と想定されていた収支差額のマイナスは0円に
●令和5年度に約67億円と想定されていた収支差額のマイナスは約24億円に
●令和6年度に約60億円と見積もられていた収支差額のマイナスは約17億円に
●令和7年度に約80億円と見積もられていた収支差額のマイナスは約41億円に
●その後は変動があるものの、10億円台から30億円台程度で推移する。
 
なぜここまで大幅に改善するのかと言いますと、まず新年度だけを見ても、歳入については、市税において、個人所得や納税義務者が増加すること、堅調に推移する企業収益等により、個人・法人市民税の増収が見込まれること、そして、消費の回復による地方消費税交付金の増収が見込まれていることです。つまり、コロナ禍にもかかわらず、国全体としての景気は良くなってきているということです。
また、新型コロナウイルス感染症対策事業の財源としては、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金が引き続き計上されることもあります。つまり、新年度においても、引き続き国からの交付金が地方自治体に潤沢に投入されるということです。従って、地方自治体の、少なくとも船橋市の財政状況は悪くなってはいないのです。
 
歳出については、令和元年度と2年度の集中取組期間を中心としたこれまでの行財政改革の成果が一定程度出ていることや、予算要求時の政策経費に限度額を設定するシーリングを行ったことなどにより、事業内容や経費の精査が行われました。
その結果、財政の危機的状況を当面は回避できる見通しが立ったということなのです。
 
そして、新年度以降も、国勢調査人口の増加(船橋市は現在も人口が増えています)などが反映された新たな基準財政需要額ベースの交付税算定、新しい公債費の借り入れ見込みの反映、そして、職員の定年延長が考慮された職員退職手当基金の運用変更などを考慮すると、上記した通りの推計になることがわかりました。
 

船橋市における他の財源の状況を見ても、平成25年度をピークに減少を続けていた財源調整基金は、今年度は減らず147億円台を維持できる見込みであるとともに、減債基金残高は約48億円積み立てられています。そして、新年度に新設される公共施設保全等基金は、JR南船橋駅南口市有地の売却金と今後の継続的な賃借料収入などを原資に運営され、約72億円が積み立てられることになっています。

 

これらの要因を総合的に考慮した結果、私は海老川上流地区のまちづくりを実施しても、本市の将来財政はマネージできる範囲になるであろうと判断いたしました。

海老川上流地区のまちづくりに、もろ手を挙げて賛成という立場ではないのですが、強硬に反対する理由がないというのが正直なところです。

 

ただし、財政状況が好転するとはいえ、収支差額は引き続き赤字が予想され、このままでは財源調整基金は取り崩しにより減少する一方となります。海老川上流地区のまちづくりを進める以上、これまで以上に事業の見直しや業務の改善といった継続的な努力が必要になることは言うまでもありません。あらゆることを実施するというのは不可能です。何かをやるのであれば、何かをやらない、何かを止めるという政策判断が必要な時代です。執行部には、この点を強くご認識いただいた上で今後の行財政運営を行っていただきたいと思います。

 

私は、船橋市の行財政改革の余地はまだ残っていると考えています。

ただし、それは市長が主導するトップダウンの行革ではありません。

今後は、事務事業評価や行政評価などを活用した、市役所各担当課(職員)からの自発的なボトムアップの行革を期待します。

その際に各事業のご担当職員の方々に意識していただきたいことは、ご自身が今実施している事業や政策はこのままで良いのかという意識です。今まで続いているから当たり前ではなく、本当に税金(公金)の支出に見合った事業なのか?費用対効果はあるのかなど、根本的なところから改めて問い直していただきたい。役所の仕事、公の仕事というものに関するパラダイムシフトを、各事業を担当されている職員の方々には期待したいですし、全体を見渡せる市長をはじめとする市役所の幹部の皆さんには、そういった意見を受け入れて改革できる組織であってほしいと思います。

 

3月22日に行われた予算決算委員会全体会における石川りょうの令和4年度一般会計予算(議案第1号)に対する実際の討論の様子は、こちらからご覧いただけます。

*委員会全体として通しの録画中継のため、私の討論は、1:17:10くらいから始まります。

 

2022年3月26日 船橋市議会議員 石川りょう

石川りょう公式ホームページ