皆さん、こんにちは。

船橋市議会議員の石川りょうです。

 

3月末が地権者の同意取得期限であったはずの海老川上流地区のまちづくり(船橋メディカルタウン構想/土地区画整理事業)ですが、2か月が経った今、ようやく船橋市役所(執行部)から議会へ経過の報告がありました。

 

結論から申し上げますと、船橋市は本事業を実施する方向で進めていくという決断をしました。

なぜ実施するという判断を下したのか?という点に対する執行部の論理を、執行部から提出された資料の通りに青字で以下に記しました。それに対する私の解釈と意見を赤字で記します。

以下は、

青字=執行部(船橋市役所)からの資料

赤字=石川りょうの解釈と意見

となります。

 

1.海老川上流地区土地区画整理事業については、海老川上流地区土地区画整理組合設立準備会において、本年1月より、事業計画案及び定款案についての同意取得作業を行ってきたが、準備会及び他機関等と調整し期限を1か月程度延長したものの、取得した同意率は人数ベースで90%に達したが(90.1%)、面積ベースで90%に至らなかった(87.3%)。

 

3月末時点で90%以上の同意取得率を目標にしていたが、その時点での取得率は、人数ベースで81.2%、面積ベースで76.2%だったとのことです。しかし、この時点で同意見込みを含めると90%を超えていたため、もう少し時間が欲しいと準備会から船橋市にお願いがあり、船橋市が千葉県に交渉して4月27日まで引き延ばしたということです。

 

議会には「3月末まで」と明言していたので、この間に何の報告も説明もなかったことは信義則に反すると感じますし、議会での明言を反故にしたことについてはそれなりの責任があることと思います。しかし、そういう建前的なところは事業の可否を決めるための本質ではないと私は考えますので、この点についてこれ以上申し上げることはありません。

 

同意率に関してです。

議会では、「9割の同意取得をもって本事業を実施する」と明言していたので、面積ベースで9割取得できなかったにもかかわらず実施するという結論を出したことに関しては疑義が残るところです。しかし、もともと土地区画整理法では、「土地所有者および借地権者のそれぞれ3分の2以上の同意を得て」いれば土地区画整理事業を実施することは可能なので、この取得率でも法的には問題がないことになります。船橋市が9割にこだわっていた理由は、①同意率が高ければ高いほど事業の円滑な実施ができること、②千葉県の土地区画整理事業マニュアルでは9割の取得率を推奨していることがありました。しかし、結果的には面積ベースで9割に届きませんでしたが実施するという決断を下しました。繰り返しになって恐縮ですが、この判断は、議会で明言した内容とは異なりますが、法的には問題がありません。

 

2.これを受け、市としては、現時点での同意状況等を踏まえ、事業の円滑かつ着実な実施が可能であるか、留意点を整理し、この点について業務代行予定者から複数回ヒアリング等を行いつつ検討した。その上で、市から準備会及び業務代行予定者に確認を行い、回答を得た。

 

~留意点とヒアリング結果~

 

(1)医療センターの整備について

【船橋市が想定したリスク】

現在のスケジュールは、起工承諾を根拠とした仮換地指定前の造成工事着工を前提としたものであり、換地先に対する不満等により組合内での合意形成に至らず、予定されている令和5年9月までに仮換地指定が行えない場合や、仮換地指定後も移転先に納得しない地権者に対し直接施行を行う場合には、医療センターが、予定している令和8年度までに開院できない恐れがある。

 

【準備会及び業務代行予定者の答え】

「令和5年9月までの仮換地指定及びその後の速やかな医療センター建替え用地の引き渡しについて、総力を挙げて取り組む」との意向が示された。

(注)準備会及び業務代行予定者の考え方は、

①仮換地指定及びそのために必要な基準については、組合員から選出された総代の過半数が出席すれば成立する総代会の過半で決議可能

②仮換地指定後は医療センター予定地は組合管理地となり、直後から医療センター建設のための工事を行うことが可能

③仮換地指定等について不満が示されても、このことにより工事を中止する義務は発生しないため、工事は続行可能

という前提に立ったもの。実際には、地権者の理解を得るべく丁寧な調整を行うことが一般的であり、予定どおりに引き渡しできるかは、準備会及び業務代行予定者の調整次第である。

 

ここでのポイントは、仮換地指定さえできれば、反対があっても強制的に事業の実施ができるということです。

それが土地区画整理事業なのです。

その仮換地指定を行うために必要な基準については、地権者総数202人のうちの25人くらいを想定している組合員から選ばれた総代(代表)の過半数(13人以上)が出席する総代会で、これまたそのうちの過半数が賛成すれば決定できるのです。仮換地指定さえできれば、その土地は組合の土地となりますので、医療センターの工事を行うことが可能となります。この仮換地指定は令和5年9月までに行う予定とされているため、計画通りにいけば、少なくとも令和5年9月以降は、反対者がいたとしても、強制的に工事ができるのです。もちろん、そういう事態にならないことが大切であって、そのために「丁寧な調整を行います」と市からの資料には書いてありますが、平たく言えば、強制性が確保されているため、法的には医療センターは実現可能という意味です。

 

市が心配しているのは、仮換地指定が令和5年9月までかかってしまった場合、令和8年にオープンさせたい新医療センターの開院がもっと遅れてしまうかもしれないじゃないか!?ということです。遅れてしまう可能性はあります。しかし、これも繰り返しで恐縮ですが、遅れたとしても、最後は強制的に実施できるのです。

 

ただ、医療センター予定地に関しての現状を説明しておくと、端っこの2か所のみから「起工承諾」を得られていないだけで、地権者からの100%の同意は得ているとのことです。仮にこの2つの土地が使えなくなったとしても、いざとなれば、この2か所を切り離してでも医療センターは造成できるということです。つまり、医療センターに関しては、強制性を利用しなくても大丈夫であろうという状況です。

 

(2)新駅の開業について

【船橋市が想定したリスク】

現在のスケジュールは、起工承諾を根拠とした仮換地指定前の造成工事着工を前提としたものであるが、新駅(事業主体:東葉高速鉄道株式会社)工事の予定地やその前提となる飯山満川(事業主体:千葉県)工事の予定地においては、同意及び起工承諾を取得できていない地権者が存在する。このため、工事の着手が仮換地指定後になれば、新駅の開業が3~4年遅延する恐れがある。

 

【準備会及び業務代行予定者の答え】

新駅開業については、3年程度遅延する可能性があるとの認識が示された。

 

新駅に関する結論としては、新医療センターのオープンである令和8年度との同時オープンを目指しているが、3年程度遅れる可能性があるということです。しかし、上述した令和5年9月までの仮換地指定という土地区画整理事業の伝家の宝刀により、反対者がいたとしても、仮換地指定さえしてしまえば、最後は強制的に工事に着工することができるのです。なので、新駅は「できない」ことはなく、遅れるかもしれないが必ず実現はできるという意味です。

 

(3)事業費の確保について

【船橋市が想定したリスク】

仮に新駅の開業が遅れる場合には、医療センター予定地の保留地価格が下落する可能性があり、これにより組合が事業の推進に必要な資金を確保できず、事業計画が成り立たなくなる恐れがある。

 

【準備会及び業務代行予定者の答え】

「必要な資金については事業計画変更を行ったうえで事業計画に定められた保留地処分金額にて業務代行予定者または業務代行予定者が指定する者が保留地を取得する予定であり、資金支出は可能である」との考え方が示された。

 

ここでのポイントを平たく説明すると、お金が足りなくなってしまった場合には、業務代行予定者(フジタ)なり、フジタが指定する者が、最終的には(いざとなったら)、責任をもって自ら保留地を買い取るので大丈夫という意味です。もちろん、フジタは民間企業なので、こんな状況にならないように全力を注ぐことと思います。しかし、いざとなったら責任を取りますという意味なのです。

 

(4)メディカルタウン構想の実現について

【船橋市が想定したリスク】

業務代行予定者と協議を重ねているものの、「メディカルタウン構想」を実現するための具体的な手法等が示されておらず、メディカルタウン構想が実現されない恐れがある。

 

【準備会及び業務代行予定者の答え】

「メディカルタウン構想実現のためにすでに市に提示した項目については確実に実施するとともに、その他の項目の実現についても最大限努力することと、提案事項を実現するうえで必要があれば事業計画の変更を行う」との意向が示された。

 

ここでのポイントは、組合と業務代行予定者は、船橋市と約束している「メディカルタウン構想」実現のために最大限の努力はしますということです。メディカルタウン構想というのは、船橋市が打ち上げた海老川上流地区のまちづくりに対するコンセプトです。健康寿命日本一を目指して健康に力を入れた街を実現させようというものです。

 

建前として、このコンセプトにのっとったまちづくりに協力するということで、土地区画整理事業は進んでいますが、本音の部分では「最大限努力する」ということだけであり、それを実現する義務や責任はありません。したがって、このメディカルタウン構想というコンセプトは、土地区画整理事業が実施できるか否かといった前提に関わる問題ではないのです。

 

(5)財政について

これまでも、少子高齢化による社会保障経費の増のほか、公債費や公共施設の老朽化への対応等に多額の財源が必要となり、大幅な歳出超過が続き予算編成が困難となることが見込まれていた。このため、今後も将来にわたり安定的な財政運営によって必要な行政サービスを継続して提供するために行財政改革に取り組んできたところである。この行財政改革によおり令和元年度及び2年度については一定の財政効果を上げることができたが、今後も相当規模の収支差額のマイナスが続くことは避けられない状況である。今回、土地区画整理事業を実施することによって、収支差額のマイナスがさらに拡大することは確実であるので、これまで取り組んできた見直しに加え、あらゆる見直しを行って財源を捻出する必要がある。

 

技術的にも法的にも、本事業は実施できることがわかりました。

したがって、私が本事業に対する態度を決めるための唯一の根拠は、この財政についてになります。

しかし、(5)に書いてあることは何の具体性もありませんので、ここからは全く判断ができません。

財政担当の副市長が約束した「将来財政推計」の発表を待ってしっかり考えたいと思います。

ただ、現時点でも言えることは、本事業を実施することにより、市の借金は増え、公債費も増え、市の貯金は減り、ただでさえ厳しい財政状況はより悪化するということです。本事業を実施することにより、具体的にどのような影響が出るのか見極める必要があります。

 

(6)地元への説明

現在のフジタの提案内容はk、準備会の理解が必要であり、その内容が準備会と共有されていることが必要である。

 

(7)その他

現在の同意取得状況のままであると、事業を予定通り進めるために重要な土地において、仮換地指定等について不満が示されるリスクは否定できない。そのような状況において、組合は、地権者の理解を得るプロセスを丁寧に進めてから工事等に入ることが一般的であり、直接試行で強力に進めることは想定しづらい。このため、事業計画に示された完成時期が大幅に遅延する可能性がある。また、事業期間が延長された場合には、それに伴う事業費増が見込まれるが、これについては組合または業務代行予定者が負担することとなる。仮に組合が負担する場合、仮換地指定が行われた後の費用増であれば、賦課金等において工面することとなる。さらに広域的な視点で見ると、周囲を市街化調整区域に囲まれていることから、土地区画整理事業区域外における無秩序な宅地化の進行を抑えていく必要がある。

 

3.これらを踏まえて5月21日に開催した政策会議において、市長が、市の中央部に位置し、中心市街地にも近く、東葉高速線が東西に走るという地理的利点がある海老川上流地区において新たなまちづくりを進める必要性は極めて高く、一定のリスクは存在する者の、これまでの土地区画整理事業の実施に係る確認結果等を踏まえ、

(1)令和8年度の医療センターの開院の可能性が高く、地域医療や高度医療が持続的に提供できること

(2)医療と健康をテーマにしたメディカルタウン構想が土地区画整理事業の中で実現されることで、本市の中核となる新たな拠点形成が可能になり、今後の市の発展に寄与することが期待されること

から、医療センターと土地区画整理事業とを切り離さずに、都市計画の手続きを進めていくという判断をした。

 

今までのまとめが書いてあります。

強制性はできるだけ発揮したくないので、仮換地指定のタイムリミットである令和5年9月までは、組合と業務代行予定者は地権者の理解を得るために丁寧に説得をして事業を進めていきますが、それ以降は強制力を発揮します。事業が遅れてしまった場合、それに伴う資金不足が発生するかもしれないが、仮にそうなってしまった場合でも、いざとなったら組合と業務代行予定者が責任を取って負担しますということが書いてあるのです。よく読むとなかなか恐ろしい内容が書いてあるわけです。

 

準備会と業務代行予定者からのこれらの回答を受けて、船橋市は、医療センターもできるし、新しい街(メディカルタウン)もできて発展する可能性があるので、100億円以上の市費(新駅建設に50億円、土地区画整理事業への補助金で56億円を見込む)を投じることになっても実施する価値があると判断したということです。

 

4.今後、準備会及び県等関係機関と協議を進め、都市計画の手続きを進めることになるが、上記のプロセスの中で、都市計画案の縦覧をいったん見送っているため、都市計画決定は令和3年12月以降となることが見込まれる。加えて、準備会及び業務代行予定者に対しては、これまでに確認し、及び回答を得た内容を踏まえ、

●土地区画整理事業の円滑かつ着実な実施

●メディカルタウン構想の徹底した実現

について伝えている。また、東葉高速先進駅の設計に係る負担金、土地区画整理事業に係る助成金等について予算措置が必要となるが、これについては、都市計画決定及び組合設立が確実と見込まれた後速やかに議会に提出し、ご審議いただくことを想定している。

 

本事業の実施に関する予算案が議会に示されるのは、千葉県による都市計画決定が令和3年12月以降になされてからなので、早くても令和3年第4回定例会以降に審議してもらうことになるということです。議会による重大な判断が刻々と迫っているということになります。上述した通り、法的・技術的には本事業の実施は可能なので、本事業の可否に関する私の判断材料は、船橋市の将来財政に対する影響になります。ただでさえ厳しいと認識している本市の財政状況ですが、本事業を実施することによってどのような影響があるのか、本市の将来世代への影響はどうなのか?そのような点から議決態度を考えていきたいと思います。

 

最後に一言だけ。

これまで少し悪意のあるような書き方をしてしまった部分があります。

それは本事業に対する私の私見を含んだものであるためです。

しかし、この政策判断をした市長の葛藤がわからないわけではありません。

究極的に悩まれたことと推察します。

議会には3月末までに結論を出すと言ってしまった。9割の同意率を目指すと言ってしまった。しかし、蓋を開けてみれば面積ベースでは9割に至らなかった。しかし、地権者や組合、そして業務代行予定者の熱は高まっている。千葉県との交渉もうまくいった。医療センターの建て替え用地を今から探すことは難しい。メディカルタウンが実現すれば船橋市の新しい街が実現する。人口も増える。東葉高速線の新駅もできる。しかし、財政は心配・・・などなど、挙げればキリがないほどのことを考えられたと思います。その上で実施するという結論を出されたのだと思います。この決断に対して、市民にも議員にも様々な意見があると思います。しかし、これが政治であり、市長なのだと改めて思いました。大きな責任を伴うこの重い判断を下されたことに対しては最大限の敬意を表します。私も議員の一人として、これから出てくるであろう予算案に対し、市長と同じくらい考え、悩んで、賛成か反対かの議決態度を決めていきたいと思います。

 

2021年6月2日 船橋市議会議員 石川りょう

石川りょう公式ホームページ