皆さん、こんにちは。
船橋市議会議員の石川りょうです。
 
今日は、図書館総合研究所(TRC)が主催する自治体政策研究会のオンライン研修に参加しました。北海道大学法学研究科・公共政策大学院の宮脇淳教授による「2021年度政府予算と地方行財政運営の課題」というタイトル。
 
宮脇教授の講義はいつも素晴らしいのですが、今日の講義は特に素晴らしかったです。
令和3年度(2021年度)の国の予算の動向(特に地方自治体の財政に関わる部分)を詳しく解説いただきました。
 
 
まずは2021年度の政府経済見通し。
当然ですが、新型コロナウイルス感染症禍において、今年度(2020年度)はかなり厳しい結果となっています。名目GDPでマイナス4.2%です。額で言うと、536.1兆円でした。
 
令和元年度の名目GDPは559.7兆円、2年度が上述の通り536.1兆円でしたので、約23.6兆円もの減少でした。
 
政府は、来年度(2021年度)の名目GDPを4.4%増と見込んでいます。
おお~、今年度が4.2%減だったから、来年度に4.4%増えればもうプラスじゃないか!と思ってしまいそうですが、金額で見ると559.5兆円。令和元年度(559.7兆円)とほぼ同じに戻るだけであり、今年度で減ってしまった分(23.6兆円)は今後に大きくのしかかるのです。
 
そして、これはあくまで政府による経済見通しなのです。
民間はもっとシビアに見ています(下の図は、第一生命経済研究所による経済見通し)。
 
 
今年度の名目GDPは5.2%減。
来年度の名目GDPは3.6%増を予想しています。
こちらが正しかったとなると、国や自治体にとってはもっと厳しいことになります。
ちなみに、世界銀行は、我が国の来年度の名目GDPを2.5%増と予想しています。もっと厳しいですね。
 
 
企業の経常利益動向を見てみましょう。
2020年7~9月の前年同期比は、全産業で28.4%減、製造業で27.1%減、非製造業で29.1%減と大変厳しくなっています。増加しているのは、製造業では、石油・石炭、金属製品、非製造業では、電気業や不動産業のみとなっています。そして、企業の資本金別で見ると、中小企業ほど減少の幅が大きくなっていることが見て取れます。
 
 
こうなると、当然ですが、国の税収は落ち込むことが予想されます。
上の表を見ると、平成24年度以降、一般会計の税収は伸び続けていました。
令和2年度は63.5兆円。
しかし、令和3年度はガクッと減って57.4兆円と試算されています。
これはあくまで政府の見通し。
上述した民間や世銀の予想通りになってしまうと、さらに2~3兆円の減少になってしまう可能性もあるのです。
 
 
国の一般会計の歳出と税収を折れ線で表したのが上のグラフになります。
歳出と税収との開きは年々大きくなっています。
何かの形に似ていませんか?
これがいわゆる「ワニの口」です。
 
しかし、このワニの口ですが、コロナ対策で借金をしまくった今年度はレベルの違う歳出増となっていることが見て取れます。致し方の無いことと言えるかもしれませんが、将来が心配です…。
 
 
国税動向を見ると、各税金の収入の落ち込みが明確にわかります。
●所得税計:前年度8,620億円減
●法人税:約3兆円減
●消費税:約1.4兆円減
等々です。
●一般会計分計:約6兆円減
 
 
このような国の動向から、来年度の地方交付税を見てみると、その主な財源である国税4税(所得税、法人税、酒税、消費税)の減少額と率が深刻なことになっています。
 
2019年度から21年度までの3年には、一般財源総額ルールが閣議決定されており、一般財源の総額が2018年度の地方財政計画の水準を下回らないように担保されているのですが、2022年度以降がどのようになるのかは不透明であり、このような財政状況を見ていると心配されます。
 
船橋市も来年度以降、税収の落ち込みが予想されます。
船橋市は典型的な住宅都市であるため、法人税よりも個人住民税が中心です。住民税の動きは法人税よりも緩やかな傾向があるので、その減少も緩やかになりそうですが、回復も遅れることが予想されます。税収(担税力)がコロナ前の水準に戻っていくには4~5年くらいかかってしまうのではないかというのが宮脇教授の予想でした。
*当然、今後のコロナの収束状況によって情勢は大きく変わることが予想されます。
 
いよいよ来月15日から、令和3年船橋市議会第1回定例会が開会します。
令和3年度の当初予算を審議する議会です。
その内容をしっかりと見ていかなければならないと思います。
 
2021年1月27日 船橋市議会議員 石川りょう