皆さん、こんにちは。
船橋市議会議員の石川りょうです。
今日のブログのテーマは「生活困窮世帯等への学習支援」についてです。
私は、努力の結果による格差について否定はしませんが、生まれてきた境遇や環境などに起因する格差については「仕方がない」という一言ですませたくありません。子どもたちになるべく同じスタートラインを作る努力こそが政治や行政に求められている仕事であると考えています。
我が国(政府)も同様の考え方に立っています。
2014年1月に施行された子どもの貧困対策法では、子どもの学習支援について第10条で「国及び地方公共団体は、就学の援助、学資の援助、学習の支援その他の貧困の状況にある子どもの教育に関する支援のために必要な施策を講ずるものとする」と定められています。
その後、同年8月に発表された子どもの貧困対策大綱では、「生活保護世帯の子どもを含む生活困窮世帯の子どもを対象に、生活困窮者自立支援法に基づき、平成27年度から、地域での事例を参考に、学習支援事業を実施する。また、児童養護施設等でくらす子どもに対する学習支援を推進するとともに、ひとり親家庭の子どもが気軽に相談できる児童訪問援助員の派遣や学習支援ボランティア事業を通じ、子どもの心に寄り添うピア・サポートを行いつつ学習意欲の喚起や教科指導を行う。そのほか、放課後補習や、放課後子ども教室、学校支援地域本部、土曜日の教育活動等を推進し、放課後等の学習支援を充実する。その際、NPO等と各自治体との連携を促進するなど、子どもの状況に配慮した支援の充実を図る」と述べられています。
国の方針に従い、船橋市も平成26年度から学習支援事業を実施しています。
「船橋市生活困窮世帯等学習支援事業実施要項」の第1条(趣旨)には以下のように書かれています。「この要綱は、子どもの将来が生まれ育った環境によって閉ざされ、貧困が世代を超えて連鎖することを防ぐため、生活保護世帯、ひとり親世帯、生活困窮世帯等の中学生に対して学習支援事業を行うとともに、進学相談、進路相談その他の相談を通して自立を促進することを目的とする。」
こ事業の概要を以下にまとめます。
【対象者】
①ひとり親世帯等の中学生(児童扶養手当を受給している又は同程度の所得)
②生活保護世帯の中学生
③生活困窮世帯の中学生(就学援助を認定された世帯)
【実施方法】
株式会社への業務委託にて実施
【対象世帯への周知方法】
①ひとり親世帯等に対しては、児童家庭課にて児童扶養手当を受給している又は同程度の所得である対象世帯に案内している。
②生活保護世帯に対しては、生活支援課にてケースワーカーが対象者のいる世帯に案内している。
③生活困窮世帯に対しては、就学援助の認定通知を市内中学校経由で配布する際に案内を添付している。
【定員】
300名
【事業実施会場】
市内4会場6教室で実施。実施会場は非公表。
①南部(火・金)18時~20時
②東部A(月・木)18時~20時
③東部B(水・土)水:18時~20時、土:17時~19時
④西部(月・木)18時~20時
⑤北部A(火・木)18時~20時
⑥北部B(水・金)18時~20時
【事業実施形態】
●2~3人の生徒に1人のインストラクターが学習指導を行う。
●教科は英語、数学、国語、理科、社会の5教科
●教材は基本的に生徒が使用する教科書や問題集を使用する。
【高校生への支援】
平成30年度より、過去に学習支援に参加し、高校等に進学した人を対象に、進学後の状況確認や面談を実施している。*高校生には学習指導は実施しないが、座席に余裕がある場合は、自習スペースとして利用してもらっている。
【参加者数(学年別)】
平成26年度:合計109人(1年生:31人、2年生:26人、3年生:52人)
平成27年度:合計219人(1年生:72人、2年生:60人、3年生:87人)
平成28年度:合計255人(1年生:66人、2年生:89人、3年生:100人)
平成29年度:合計237人(1年生:73人、2年生:72人、3年生:92人)
平成30年度(8月31日時点):合計212人(1年生:68人、2年生:70人、3年生:74人)
参加者数は平成28年度をピークに減少傾向にあることが少し気になるものの、まずはしっかりと学習支援事業を実施して下さっている船橋市には敬意を表したいと思います。
しかし、厳しいことを申し上げるようですが、現行の施策だけでは必要な人に学習支援の手が届いていないこともまた事実だと思います。この広い船橋市を4つのエリアに分けて実施している事業です。対象者は中学生ですので移動範囲は限られてしまいますし、時間は夜です。近くの学生は良いかもしれませんが、離れたところに住んでいる学生は通えないのではないでしょうか?
そこで考えられる改善点は以下の4点になります。
(1)開始時間をより早くすること(17時からなど)。【例】八千代市、横須賀市、広島市など
(2)土日や長期休暇の実施を多くし、時間も長く設定すること。【例】帯広市、長岡市など
(3)送迎サービスを実施すること。【例】帯広市、相模原市、長岡市など
(4)訪問型も検討すること。訪問型とは支援を必要としている学生の自宅などに支援者が出向いて事業を実施することです。集合型と訪問型を両方実施している自治体も複数あります。【例】盛岡市、富山市、横須賀市、姫路市など
これらはあくまで考え得る提言であり、予算や人員の問題などにより制約があることは理解しています。しかし、検討してみる価値はあるのではないでしょうか。
学習支援事業の対象者についても一つ提言があります。
対象を小学生にまで拡大することです。
船橋市は去年の8月24日から9月7日の期間に「子供のいる世帯の生活状況等に関する調査」を実施しました。調査対象は、①一般世帯を無作為抽出、②ひとり親家庭手当を受給している全ての世帯、③0~18歳未満の子どものいる生活保護受給世帯です。この調査結果によると、子どもたちが授業についていけなくなる時期は、全ての世帯で、小学5・6年生の頃という割合が多く、貧困世帯では、小学3・4年生の頃という割合も多くなっています。つまり、学習支援に対する必要性は小学生から始まっていると考えられます。もちろん、ここにも予算や人員の壁がありますが、①船橋市における先の教育委員会議の場でもこの点は提言として指摘されていたこと、そして、②他の自治体(帯広市、会津若松市、三条市、彦根市、長岡京市、宇部市など)でも実施している例が多いことなどから船橋市でも検討に値すると考えます。
そして、他の自治体の学習支援事業を研究していて気付いたことは、目的を学習支援のみにおいているのではなく、子どもの居場所づくりの機能も重視していることです。たとえば、旭川市では、生活上の課題を抱えていたりする子どもに「居場所」を作ることを重視し、クリスマス会、3年生を送る会、合宿、農業体験等のイベントも積極的に行っています。なぜ居場所作りを重視しているのかというと、支援対象者が社会とのつながりを持ち、自分の居場所を実感でき、自己肯定力を高めることができるからとしています。さらに、参加しやすい場所というイメージになることによって参加者が増える効果もあります。船橋市は上述した「生活困窮世帯等学習支援事業実施要項」の中で定めているのは、①学習支援事業、②進学相談、③進路相談その他の相談のみです。しかし、先にも述べた昨年の「子どものいる世帯の生活状況等に関する調査」において、子どもの居場所づくりに対するニーズは非常に高いことがわかりました。本市においても、単に学習支援と学習・進路相談事業に絞るのではなく、何でも相談できる場、困った時の憩いの場、友人たちと集まれる場、仲間作りの場といった学習塾とは違った「居場所づくり」という側面に力を入れてもいいのではないでしょうか?
以上の点を踏まえて、私であれば現行の要綱の第1条(趣旨)を以下のように改訂し、学習支援事業の拡充を図ります。
「この要綱は、子どもの将来が生まれ育った環境によって閉ざされ、貧困が世代を超えて連鎖することを防ぐため、生活保護世帯、ひとり親世帯、生活困窮世帯等の小学生及び中学生に対して学習支援事業、進学相談、進路相談その他の相談を実施するとともに、子どもの居場所を創出することにより、対象者にあった進学及びその後の円滑な学生生活を実現し、もって対象者及び出身世帯の経済的・社会的自立を促すことを目的とする。」
2019年1月17日 船橋市議会議員 石川りょう