皆さん、こんにちは。

船橋市議会議員の石川りょうです。

 

今日のテーマは行政による「創業支援」についてです。

民間活動なのだから行政がわざわざ支援する分野ではないというご意見もいただきました。しかし、私はある意味、時代の要請であると考えています。少子高齢化社会を迎え、多くの経営者の方々も高齢化を迎えている中で新しい若手の創業者(経営者)が必要でしょう。また、男女ともに働くことが当たり前になりつつある現代にあって、起業は女性が活躍できる重要なステージだと考えます。日本に企業や会社が増えれば経済は活性化しGDPも上がるでしょう。生きがいややりがいを見つけた国民が増えれば生き生きとした社会(日本)になると思います。仕事や生きがいは病気や認知症などの予防にもなり社会保障費の抑制につながるかもしれません。何より、チャレンジ精神に溢れた人々が増える社会(日本)が私の理想です。そのような意味で創業支援は時代の要請だと考えています。もちろん、行政の行う創業支援がどれほどの有効性を持つのかという問題はありますが…。しかし、私の調べた範囲では、行政が実施する創業支援は民間に委託しているものがほとんどであり、その内容も充実したものになっていると思いますし、何より値段(参加費)がリーズナブルです。このような観点からも、私は行政による創業支援には意義があると思っていますし、今後、自治体においては力を入れるべき分野の一つであると考えています。

 

さて、国(政府)の動きを見てみましょう。2005月に中小企業新事業活動促進法を制定し、新事業支援機関を各都道府県と政令指定都市に置くことを定め、この機関が中核となって各地域における創業支援を行う体制を整えました。その後、2014年に産業競争力強化法が制定され、これに基づいて市区町村はそれぞれの地域における創業支援等事業計画を定めることになりました。要するに、政府は、国や地方公共団体による創業支援に力を入れているということです。

 

船橋市も産業競争力強化法に基づく創業支援等事業計画を平成2610月にまとめて国の認定を受けました。船橋市の創業支援等事業計画はこちらからご覧下さい。

 

創業支援と一口に言っても様々ありますが、創業支援等事業計画では、相談窓口や創業者向け融資、単発のセミナーなどの業務を「創業支援等事業」と位置づけ、財務、経営、販売拡大、人材育成の4項目の知識取得が見込まれる継続的(1か月以上)な支援を「特定創業支援等事業」としています。

 

私が注目したのは、後者の「特定創業支援等事業」です。

船橋市は船橋商工会議所と分担して3段階のセミナーを実施しています。

 

(1)船橋ハッピー創業塾オープンセミナー(船橋市主催)

●毎年回開催(月と月)

●船橋ハッピー創業塾への導入講座として実施

●講演会・先輩起業家によるパネルディスカッションにより、起業を考えている方への啓発活動を実施している。

日だけの単発セミナーとなるため、こちらは特定創業支援ではなく、創業支援事業

 

【参加状況】

H28.513人(参加者)/50人(定員)

H28.1032人/50

H29.545人/50

H29.927人/50

H30.547人/70

H30.950人/70

 

(2)船橋ハッピー創業塾(商工会議所主催)

●毎年回開催(6月~と10月~)

●財務、経営、販路拡大、人材育成についての知識取得講座、グループワークを多く取り入れ、創業仲間を見つけることや、創業に対しての意欲向上を目的としたカリキュラム

 

【参加状況】

H26.1040人(参加者)/50人(定員)

H27.648人/50

H27.1044人/50

H28.648人/50

H28.1038人/50

H28.647人/50

H28.1038人/50

H29.647人/50

H29.1060人/60

H30.637人/50

 

(3)船橋創業実践塾(船橋市主催)

●毎年回開催(月~)

●船橋ハッピー創業塾卒業生等を対象に創業に関する深い知識の取得を目指す。

 

【参加状況】

H29.17人(参加者)/10人(定員)

H30.16人/10

 

船橋市は国が定める「特定」創業支援等事業(財務、経営、販売拡大、人材育成の知識取得のための長期間のセミナー)を最低限こなしていることは事実です。参加者数を見ても、ばらつきはあるものの、毎回評価できる人数の参加がある状況がうかがえますので、創業支援に対する市民ニーズはあることと、行政の行う創業支援に対する人気もあることがわかります。

 

短期的な結果(アウトプット)としての参加者数はそれなりに評価できることと思います。しかし、重要な視点に中長期的な成果(アウトカム)があると思います。ここでいうアウトカムを、私は、これらの創業支援事業(セミナーと研修)によって実際にどれだけの人が船橋市で創業したかという点に置きたいと思います。

 

中小企業庁のホームページによるとその成果は以下のようになっています。

*支援対象者数というのは、特定創業支援事業を受けた人の数

*創業者数というのは、特定創業支援事業を受けた人の中で実際に創業に至った人の数

 

●創業支援事業計画に基づく創業支援事業による船橋市の支援実績

【平成27年度】

支援対象者数:(目標)100人⇒(実績)92

創業者数:(目標)40人⇒(実績)10

【平成28年度】

支援対象者数:(目標)130人⇒(実績)94

創業者数:(目標)65人⇒(実績)9

【平成29年度】

支援対象者数:(目標)112人⇒(実績)120

創業者数:47人⇒(実績)20

 

この数値をもってコメントするのはなかなか難しいというのが本音です。

いくら研修を受けたからといっても、実際に創業に至ることは簡単なことではありませんし、創業するかしないかは個人の自由と言うこともできますので。

 

しかし、支援対象者数と創業者数で、目標を達成できたのは平成29年度の支援対象者数のみであり、船橋市が自ら掲げた目標に届いておらず、船橋市の特定創業支援事業は期待通りの効果をあげられていないというように言うことができると思います(目標の数値設定が適切なのかという根本的な問題もありますが…)。

 

したがって、これから私が確認しなければならない事項はこの時点で以下の2点になります。

①目標の数値の設定根拠は何か?そしてそれは適切なのか?

②実績(特に創業者数)をもっと上げるために今後どうしていくのか?

 

ちなみに、近隣市で成果を上げているところはあるのかと思い調べてみたのですが、千葉市と松戸市の実績は注目に値すると思います。

 

●千葉市(人口:約98万人)

【平成27年度】

支援対象者数:(目標)115人⇒(実績)172

創業者数:(目標)42人⇒(実績)44

【平成28年度】

支援対象者数:(目標)127人⇒(実績)122

創業者数:(目標)44人⇒(実績)31

【平成29年度】

支援対象者数:(目標)134人⇒(実績)94

創業者数:(目標)45人⇒(実績)21

 

●松戸市(人口:約49万人)

【平成27年度】

支援対象者数:(目標)260人⇒(実績)342

創業者数:(目標)20人⇒(実績)45

【平成28年度】

支援対象者数:(目標)350人⇒(実績)337

創業者数:(目標)51人⇒(実績)39

【平成29年度】

支援対象者数:(目標)350人⇒(実績)456

創業者数:(目標)51人⇒(実績)53

 

両者に共通するのは支援対象者の目標値が高いことです。千葉市は100万人弱の人口を抱える大都市ですので船橋市より多いのは自然ですが、船橋市(約63万人)よりも少ない松戸市(約50万人)が船橋市よりも野心的な数値を掲げていることは注目に値します。これから調べてみる必要はありますが、おそらく、松戸市は創業支援に力を入れており、特定創業支援事業(長期の創業支援セミナーや研修)のメニューが充実しているのだろうと思われます。

 

千葉市については少し調査をいたしました。

まず、千葉市は政令指定都市ということがあり、先に述べた中小企業新事業活動促進法に基づいて新事業支援センターを独自に設置しています。これが公益財団法人千葉市産業振興財団です。ここを中心にして、千葉市はかなり充実した創業支援セミナーや研修を多数実施しています。先ほど、船橋市はつのセミナーを実施していると書きましたが、千葉市は11ものメニューを用意しています。詳しくはこちらをご覧ください。

 

もちろん、自前の新事業支援センター(産業振興財団)をもっている千葉市と、自前のセンターをもたない中核市である船橋市と単純に比較してはいけませんが、もしも船橋市が創業支援の分野に力を入れたいと考える場合には相当の覚悟をもって独自に実施しなければなりません。なぜなら、船橋市が頼るべき千葉県の新事業支援センター(公益財団法人千葉県産業振興センター)が実施する創業支援セミナーや研修は充実しているとは言いづらい状況だからです。経営関連の各種セミナーの数はそれなりにあるのですが、いかんせん、どの講座も定員が5名だけのものばかりなのです。千葉県は広いです。人口も約615万人います。その規模の自治体が実施する研修の定員が5名しかいないというのは如何なものかと思います。したがって、船橋市は単独事業として拡充する必要があるのです。

 

そこで、本日、私が船橋市役所経済部に対して提言した事項は以下の点です。

 

(1)千葉市のように創業支援セミナーや研修の数と種類を充実させること。

 千葉市の創業支援等事業計画を見ると、創業希望者が通る各段階で、そこで必要になる講座を開いていることがわかります。船橋市も講座や研修の数や種類を充実させて、創業希望者たちの必要な段階に応じたきめ細かな支援を行うべきだと考えます。そうすれば、創業者数の実績ももっと増えるのではないでしょうか。

 

(2)創業支援セミナーや研修の対象者をより細かく分けること。

 私に声を寄せてくださる船橋市内の創業希望者の声をお聞きすると、船橋市の講座やセミナーは、男性も女性も、創業の経験のある人も無い人も、実績をすでに出している人もそうでない人も、幅広く受け入れてしまうことが問題だとおっしゃっていました。あくまで創業支援が目的なので、ターゲットを絞って同じレベルの人たち同士が学べるように細分化することが必要な場合もあるでしょう。本市も以前実施していたように、女性に特化した創業セミナーや、真に創業前の人に限った研修などのメニューを用意すべきです。

 

(3)創業支援セミナーや研修を修了した方々のその後の動きをフォローすること。

 政策の成果を計るためには、定量的な数値はとても大切なものです。船橋市や商工会議所が実施するセミナーや研修を修了した方々のその後の動きのフォローが十分にできていない結果が明らかになっています。研修終了後にも、市や商工会議所の行うアンケート調査などに協力することを絶対条件としてセミナーへの参加を申し込めるようにするなどの工夫が必要です。

 

(4)関係者との連携を船橋市が中心になってより緊密で深くすること。

 船橋市の策定した創業支援等事業計画を見ると、①船橋市、②船橋商工会議所、③市川市、④市川商工会議所、⑤八千代商工会議所、⑥千葉商科大学、⑦千葉県信用保証協会、⑧特定非営利活動法人やまとなでしこ、⑨特定非営利活動法人ちば経営応援隊といった関係者が連携をして、それぞれ創業のための研修やセミナーを開催しており、そこで取得した修了証明書をもって各自治体で創業のための*メリットを受けることができるとされています。しかし、各関係者がてんでばらばらにそれぞれの活動を実施している感が否めず、これではせっかく様々な関係者が連携できる体制が作られているのにもったいないという印象を抱きます。せっかくそれぞれの主体が創業のためのセミナーを開催しているのであれば、例えば、それぞれに得意分野を生かしたセミナーに特化して実施し、他の分野に関しては他の関係者が行うセミナーにつなげてあげるといったやり方の方が効果的で効率的なのではないかと考えます。とにかく、この9つの関係者がもっと協力をして、研修やセミナーのメニューや時期を拡充するような取組を行っていければ、それこそ「連携」していることの意義が発揮されるのではないでしょうか。それを主導する中心的な役割を船橋市には果たしてもらいたいと考えます。

 

*メリットの種類は、以下の6点です

①船橋市において株式会社・合同会社を設立する際の登録免許税の軽減

②創業2か月前から対象となる創業関連保証が事業開始6か月前から対象

③船橋市中小企業融資規則に基づき融資を受けた方が千葉県信用保証協会に支払う信用保証料を全額補助

④国が実施する創業・事業承継補助金へ応募することができる

⑤日本政策金融公庫の新規開業支援資金の貸付利率の引き下げが可能

⑥日本政策金融公庫の新創業融資制度の自己資金要件を充足したものとして、制度利用が可能

 

まずはご報告の第一段階ですが、創業支援については今後も調査研究を続け、ご報告も続けていきたいと思っています。

 

2019111日 船橋市議会議員 石川りょう

石川りょう公式ホームページ