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皆さん、こんにちは。
船橋市議会議員の石川りょうです。

本日は、午前10時から12時半まで「船橋市主権者教育研修会」に参加させていただきました。船橋市の姉妹都市であるデンマークのオーデンセ市から、実際に主権者教育に携わっている公立中学校の社会科の先生お二人をお招きしての講演会とパネルディスカッションでした。メインの聴衆は、船橋市立の小中学校及び高等学校の社会科の教員の皆さん。なので、私は傍聴させていただくという形でした。

「主権者教育」とは、文部科学省によると、「単に政治の仕組みについて必要な知識を習得させるにとどまらず、主権者として社会の中で自立し、他者と連携・協働しながら、社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一人として主体的に担うことができる力を身に付けさせること」とされています。

私は主権者教育というものを、「社会の一員として、自分や家族のことのみならず、コミュニティや地域、ひいては日本のこと、世界のことまで主体的に考え、積極的に行動していけるような人を育てる教育」だと理解しています。

このような主体性を、デンマークではどのように学校教育の中で育んでいるのかというのが今回の研修会のメインテーマでした。デンマーク国民の「主体性」を計るものさしの一つが、投票率であり、デンマークでは、国政選挙の投票率が80%をゆうに超えるということでした。ちなみに、この前(今年の7月10日投開票)の日本の参院選の投票率は54.7%でした。

投票率というのは、あくまで、「主体性」や「主権者教育の実効性」を計るための一つの指標でしかありません。しかし、デンマークでは、なぜこのように投票率が高く、日本では低いのかというのは、考えてもいいテーマなのではないでしょうか?

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【さすが!デンマークの社会科の先生は、プレゼンテーションもSteve Jobsのようでした】

私が最も感銘を受けたデンマークの教育スタイル。
それは、大テーマは先生が与えるのですが、それに基づく小テーマは、全て学生たちが決め、それらを個人ワークやグループワークで学生たちが考え、判断し、発表(プレゼンテーション)する。先生は、あくまでファシリテーターとして子どもたちの議論をリードするというスタイルです。たとえば、大テーマを「権利」として先生が導入の授業を行った場合、その後には、「権利」に関する小テーマにつき、学生たちに挙げてもらう。子どもたちから、「子どもの権利」、「女性の権利」といった小テーマが挙げられたら、個人やグループに分かれてそれぞれ関心のある小テーマにつき勉強し【思考力】、自分(たち)の考えをまとめて【判断力】、発表する【表現力】。デンマークでは、日々このような訓練を積んでいるのです。

デンマークの教育スタイルこそまさに、日本の「新しい学習指導要領」が掲げる【思考力】、【判断力】、【表現力】を育成するための教育スタイルではないでしょうか。

しかし、現在の日本の教育制度で、デンマークのような教育が可能か否か?
私はかなり難しいと感じています。指導要領で、ここまでこうやって教えなさいと教員をガチガチに縛る日本式と、要領では大まかな指針までしか示さず、その指針を実現するための方法は各教員の裁量に任されているデンマークでは自ずと違いが出てくるでしょう。大テーマだけを与えて、小テーマを生徒たちに考えさせるような教育スタイル(Active Learning)は、日本ではなかなか難しいと思います。

もちろん、日本の教育スタイルをただ批判しているのではありません。良さだってもちろんあると思います。しかし、私が子どもだったら、デンマークスタイルの教育を受けたいなと思うのです。

日本の有権者たちが選挙に行かない大きな理由の一つに、「選挙によって政治はよくならないと思ったから」という理由があります。日本の有権者の中には、自分たちの一票では何も変わらないといった諦めの気持ちや、「行っても無駄」「面倒くさい」という気持ちがあるのだと思います。そして、その割合がデンマークよりもはるかに高い。。。

なぜそうなるのか?
その回答への一つのヒントが、今日の講演会に潜んでいたと思いました。
上述しましたが、デンマークの学生たちは、自分たちで小テーマを挙げて、勉強(調査)し、みんなの前で自分たちの考えを発表するという機会を子どもの頃からたくさん得ています。それを先生をはじめとした周りの大人、そして、クラスメートたちはしっかりと聞いてくれる。その後の発展授業では、良いアイデアを実現させるために、役所や議会に働きかけるなどといった実践までするそうです。

つまり、デンマークの子どもたちは、小さい頃から、「自分(たち)の意見は耳を傾けられて然るべきものなんだ」、「自分たちの声は大人たちに届くんだ」ということを実感している。そのような成功体験を積んでいるんです。日本ではどうでしょうか?先生や教科書のみから与えられたテーマばかりで、評価手法も試験ばかり。自分たちで【考えて】、【判断して】、【表現する】という機会(成功体験)が、デンマークの子どもたちより圧倒的に少ないのです。それでは、自分たちの意見なんてどうせ通らないと思いますよね?大人(政治)に訴えても無駄だと考えますよね?自分たちの意見や考え方なんて微力だと諦めますよね?

デンマークの教育と日本の教育では、将来的にこのような大きな差が生じてくるのではないでしょうか?

今日一日だけ聞いたお話からの思索であるため、事実誤認も多々あるかと思いますが、今日の研修会は、私にとって非常に興味深いものでした。あとは、様々な制約を抱える各学校の先生たち(今日の主役)が、これから実際の現場でどのように今日のお話を活かしてくださるのか?注目していきたいと思います。
2016年8月9日 船橋市議会議員 石川りょう
石川りょう公式ホームページ