皆さん、こんにちは。
今日の船橋市は、無事に台風が過ぎ去り、ものすごい夏日になっております。暑い~~!!

さてさて、今日はチョット真面目な話題を。
先月の3日に、早稲田大学マニフェスト研究所が、2013年度の「議会改革度調査ランキング」を公表しました。この調査は、2011年からマニフェスト研究所が毎年実施しているもので、全国すべての議会(都道府県、市町村)に対して調査票を送り、回答してもらっているものです。今年は、80%を超える議会から回答を回収できたそうです。なので、相当信頼度の高いランキングになっているものと思います。

「議会改革度調査ランキング」の結果はこちら

先日、早稲田大学公共経営大学院の授業の中で、この「議会改革度調査ランキング」を題材にしてレポートを書きなさいという課題をいただきました。今日は、私が書いたそのレポートの内容を紹介させていただきたいと思います。

チョット長いですが、お時間のある方は是非お読みください。

早稲田大学マニフェスト研究所「議会改革度調査2013ランキング」

からの考察 -ランキング1位の三重県議会に学ぶ-

201463日、早稲田大学マニフェスト研究所が「議会改革度調査2013ランキング」を発表した。2012年に続いて、三重県議会が第1位に輝くという結果であった。都道府県議会別に見ると2位が鳥取県、3位が京都府、4位が宮城県、5位が滋賀県となっている。

 まず始めに、当ランキングがどのような指標に基づいてランク付けを行っているのかにつき確認しておきたい。1点目は「情報公開」という指標である。マニフェスト研究所から日本全国の議会に送付されているアンケートを参照すると、この点に関する質問は、議事録の公開状況や公開までにかかる日数、議会の映像やインターネットによる公開状況、会議の議案や資料の事前公開状況、議会交際費や政務活動費の公開状況、視察報告とその公開状況、議会だよりと議会のホームページに関する状況についてなどである。2点目は「住民参加」という指標である。同様にマニフェスト研究所からのアンケートでは、議会や委員会などへの傍聴機会、議会報告会や住民説明会などの開催状況、パブリックコメントやモニター制度、夜間議会や休日議会、議場のバリアフリー対応などについて尋ねている。3点目は「機能強化」である。この点に関しては、議会基本条例の制定や検証状況、議員による政策提案条例、議会改革のための検討組織の設置状況、議会での討議方法の整備状況、議長マニフェストの導入状況、学識経験者や法務担当者などの採用といったサポート体制、議場へのPC及びスマートフォンなどの持ち込みなどペーパーレス化への取組などについて尋ねている。

 当ランキングの指標について確認したところで、再び都道府県議会別のランキングについて話を戻したい。上位にランク付けされた府県の共通点に気が付くのではなかろうか。多くの府県の知事は、改革派と呼ばれる首長ではないだろうか。1位の三重県は北川正恭知事、2位の鳥取県は片山善博知事、3位の京都府は山田啓二知事、4位の宮城県は浅野史郎知事、5位の滋賀県は嘉田由紀子知事、7位の岩手県は増田寛也知事といった具合である。ここから導き出せる一つの結論は、議会改革にあたっては、知事のリーダーシップなり意識改革といった側面も重要な要素となりうるということであろう。

 しかし、これら上位の府県の中でも2年連続で1位を獲得した三重県の議会改革に対する取組がどのようなものであるかについて関心を持つのは、筆者だけではないであろう。本稿は、ホームページの情報からのみではあるが、三重県議会の取組について調査した。

 まず情報公開についてであるが、三重県議会のホームページの見やすさは特筆すべきであろう。議会の活動、議員の紹介、お知らせ、広聴広報などの大項目ごとに各小項目がまとめて整理されている。そして各小項目からも追加の情報については適切にページリンクが設定されている。わかりやすく整理されたホームページが情報公開を促進することについて異論のある者はいないであろう。マニフェスト研究所からのアンケートに記載されている指標との関連では、議事録の公開という側面に関して、本会議のみならず、委員会、調査機関、検討会、議会改革推進会議、代表者会議など全ての会議や委員会の議事録が公開されている。テレビ及びインターネットによる中継も、本会議のみならず、常任委員会から特別委員会、さらに各種委員会(議会運営委員会など)及び全員協議会まで行われている。インターネット上では公開されていないが、議会図書室に行けば、政務活動費の明細や議員の資産まで公開されている[1]。三重県議会の情報公開状況に関して、筆者が最も特筆すべきと考えているのは、パブリックコメントに対する丁寧なまとめと回答である。パブリックコメントを実施している回数の多さにも目を見張るものがあるが、それら一つ一つに関して、市民からのコメントをまとめ、議会としての見解を丁寧に回答している点に感銘を受けた。

 次に住民参加に関する取組についてであるが、マニフェスト研究所からのアンケートの指標という点に関して言えば、本会議から各種委員会まで全ての傍聴が可能であり、手話通訳や赤外線補聴システムを用意し、議場はバリアフリー対応である。特筆すべきは、議会による住民参加を促す様々な取組であろう。議会による県政報告会の実施などは当然であり、それに付加して、みえ現場de県議会[2]、みえ県議会出前講座[3]、みえ高校生県議会[4]など、およそ他の議会では目にしたことのない取組の数々を実施している。住民により近い存在である市町村議会であれば実施していても不思議ではないと思える数々の取組(実際の市町村議会でこのような取組を行っているところは少ない)を、県議会が実施していることに感銘を受けた。

最後に機能強化に関する取組についてであるが、三重県では、他の都道府県に先駆けて、2006年に議会基本条例を制定している。しかし、ただアクセサリー条例として制定したのではなく、1995年より議会に係る諸問題検討委員会を設置し、「分権時代を先導する議会」を目指して議会改革に取り組んできた結果として制定されたのである。すなわち、取組の実践の上での実効性を伴う策定なのである。その見直しも行われており、2012年及び13年に一部改正を行っている。同議会は、この議会基本条例に基づいて機能強化に関する様々な取組を実施しているが、特筆すべきは、議員による政策提案条例の数、各種調査機関や検討会などの付属機関の設置、通年議会の採用であろう。三重県議会基本条例第10条において、議員の役割の一つとしての政策立案及び政策提言の重要性を謳っており、その機能強化のために調査機関や検討会といった付属機関を設置できる旨を12条~14条で定めている。その成果もあって、同議会における議員による政策提案条例または改正案の提出状況は、他の地方議会と比しても多くなっている[5]。通年議会に関しては、三重県議会は、平成251月からスタートさせたが、年末年始を除いて議会活動が停止する閉会期間がなくなるため、議長の判断でいつでも本会議を開催でき、かつ十分な審議日数を確保できることが最大のメリットと言われている。会期に左右されることなく議論を深めることができるため、仮に東京都議会が同制度を採用していた場合には、セクハラ野次問題に関して、会期を理由に中途半端な形で決着させるような事態には陥らなかったはずである。都道府県議会では7府県しか実施しておらず(長崎県議会は平成262月に廃止)、先進的な取組と言える。

三重県議会によるこれらの先駆的な取組を調査して、議会としての一体性を感じることができた。普通、議会というと、議員一人ひとりによる個人プレーの集まり、あるいは会派毎の集まりという印象を受けるが、三重県議会に関しては、議会が全体として一つにまとまっている印象を受けた。筆者の住む千葉県船橋市の市議会からはこのような議会の一体性を感じたことはない。会派を超えての議員同士の勉強会の話を聞いたこともなければ、議会としての市政報告会も実施されていない。提案される政策提案条例案は共産党からが大半であり、一つとして議会を通過したことはない。まさに、議員個人、または会派のみによるまとまりのない議会である。全国の地方議会はこのような議会が多いと推察される。

三重県議会における議会としての一体性に貢献している一つの大きな要因として議会基本条例の存在があるのではなかろうか。同条例によって、議員一人ひとりが、二元代表制の片方の軸としての「議会」というものを強く認識するに至っていると考える。このような意識が浸透していれば、もう一つの軸である首長に対抗するためには、議会全体としてまとまって行動をとっていく必要があると考えることが可能になる。そういった意識が、議会として実施する様々な広報広聴機能や議員による政策提案条例につながっているのではなかろうか。議員個人としてではなく、議会全体として見る目が必要になるという北川教授の言を、このような視点から理解することができた。

議員としては、議会を構成する一員であるという意識を持つことが重要になってくるのであろうが、それを当選1回の若手議員が「議会全体としてまとまってやっていきましょう」などと口だけで呼びかけてもうまくいかないことは火を見るよりも明らかである。その意識を持ち始めた議員から行動で示していくことが重要になってこよう。個人で開催する勉強会やタウンミーティング、シンポジウムなどに他の議員を誘う、議会報告会を他の議員と協働で開催する、政策提案条例案の作成を協働で行う等々である。このような議員同士の協働の広がりが、議員間討議や議会全体による議会報告会の開催、様々な広報広聴会の開催などにつながり、さらにその積み重ねが、実効性のある議会基本条例の制定につながっていくのであろう。今こそ地方議会には二元代表制の一翼を適切に担うべき役割が期待されているのである。



[1] 政務費不正疑惑の野々村議員の所属する兵庫県議会も政務活動費の公開を行っていた。それにもかかわらず、今回のような結果となっていることから、公開しているからといって完全に抑止力になるということではなさそうである。しかし、公開をしているからこそ、発覚したという側面もあるかもしれない。

[2] テーマを設定し、そのテーマに関わっている県民からの直接の意見を議会が現場に出向いて直接聞くという試み。例:観光産業の振興、子育て支援など。

[3]  「開かれた県議会」に向けた県民への情報提供の推進、また真の地方分権、住民自治の促進を図るため、学校からの申込を受けて、児童・生徒・学生に対して、三重県議会の仕組みや議会改革の取組について、広聴広報会議の委員が出向いて分かりやすく説明し、質疑応答を行なうことにより、三重県議会をはじめとした地方自治に対する親近感を醸成するとともに、将来の住民自治を担う県民としての意識の涵養に寄与するための取組。

[4] 広聴広報活動の一環として、高校生が議会活動を体験することで議会に対する関心を高めるとともに、高校生の意見を直接聴くことで議会での議論に反映していくための取組。

[5] 2013年では7つ提出されている。