皆さん、こんにちは。千葉県船橋市は台風のおかげで大分梅雨らしい天気になってきました。外に出るのが少しおっくうになってしまいますが、梅雨は雨が降ってなんぼ!もっと雨が降ってくれればいいなと思っています。でも、土日のフットサルの日だけは降って欲しくないなんてわがままなことも考えてしまいますが…(笑)。

 

 さて、突然ですが、皆さん、「アサザプロジェクト」という事業をご存知でしょうか?一言で言いますと、茨城県にある日本で2番目に大きい湖・霞ヶ浦の環境保全・再生事業です。しかし、この事業、ただの環境保護にとどまることなく、それをきっかけに、農業、林業、漁業、地場産業、街おこし、福祉、教育等にまでその活動を広げ、今では「日本で最も成功しているNPO活動」と称されるまでに至っています。私は、昨日は、このアサザプロジェクトの代表である飯島博氏のお話を聞きました。

 

 環境保護と初めに聞いた私の飯島博氏像は、「理想主義者」でした。いや、これは決して悪い意味で言っているのではありませんよ。お話を聞く前の予習の段階で私は、「やっぱりこの事業をこれだけ大きくした人なのだから、素晴らしい大義名分を持っているんだろうな。人を惹きつける理想を持っているんだろうな。やっぱり事業を始めるに当たっては、万人受けする理想と大義名分が必要なんだ。」と考えていました。ところが、実際の飯島氏は「リアリスト(現実主義者)」、しかも徹底したリアリストでした。飯島氏曰く、「自然保護なんていうお題目では誰も付いてこない。お金を生み出し、新しいビジネスモデルを展開するといったような『価値創造』への発想転換が必要なのだ。」ということなのです。

 

 飯島氏は、親の転勤により、千葉県市川市に引っ越しをして、ここで育ったのだといいます。当時の市川市は、自然に囲まれ、飯島氏は、生物溢れる里山で遊び育ったとのことであり、これが原体験となって環境保全を考えるようになったということです。学生時代の飯島氏は、学校の勉強にはほとんど興味を持てず、成績が悪かったといいます。しかし、自分が興味を持ったことは徹底して突き詰めるタイプで、学校を1週間ほど休んでは、興味のある本を読み漁るという生活を送っていたそうです。飯島さん曰く、「個別の教科が全体にどう繋がっているのか知りたかったんです。ばらばらの断片的な知識よりも全体像、総合的な関係性をつかみたいといつも考えていました。自分の頭は自分で作るという姿勢だったと思います。」まさに天才!小学生の私は、こんなことを考える余地もなく、ただひたすら与えられた宿題やら勉強をしていました。私はこういうタイプの人間を天才だと思っています。

 

 案の定、実際の飯島博氏はすごい人でした。「既存の枠を超えろ。枠の外でものを考えて、自分で新しい枠を作り出していけ。」と。正直、これまで全て学校や、所属先の枠の中でものを考えてきた私には、どうやって枠を超えるのか、今でもピンときません。しかし、飯島氏はこうともおっしゃいました。「本当の政治家というのは、新しい現実(枠組)を生産する人だ。今の政治家でできている人は誰もいないけど。」普通の人に言われたら、なんだこの人は?と思ってしまうのですが、この人には実績があるのです。説得力がありました。

 

 飯島氏曰く、「問題は単独ではない。全てが包括的に繋がっているのだ。」だから、一つだけ解決しようとしてもできないのです。飯島氏はこのアサザプロジェクトを、最初はアサザ(水草の一種)を霞ヶ浦に茂らせようと考え、その里親プロジェクト(近隣の住民や企業にアサザの種を家で育ててもらい、成長したら霞ヶ浦に移植する)から始めたそうです。これだけであれば、誰にでも考えつき、始められそうな事業です(飯島さん、すいません)。しかし、ここで終わらないのが飯島氏のしびれるところなのです。この里親プロジェクトには、数多くの子どもたちが参加してくれて、その子どもたちが自発的に学校の担任や校長に、同事業を学校の事業としてやらせてくれと懇願したそうです。そこから、霞ヶ浦近隣の小学校に同事業が広がり、飯島氏にはたくさんの学校から出前授業の依頼が来るようになったのです。出前授業の中から、驚くべき成果が出てきます!2005年に牛久市立神谷小学校で始められた谷津田(やつだ)再生事業です。「谷津田」とは、谷地にある田んぼであり、大型の流入河川のない霞ヶ浦・北浦では、この谷津田の一つひとつが大切な水源となっているそうです。しかし、現在、谷津田は耕作放棄が増えて荒れているのです。2005年、アサザ基金が出前事業を行った神谷小学校の4年生は、生きものの視点で学校付近の環境を観察するなかで、谷津田の荒廃が生きものたちの道を閉ざしていることに気づいたそうです。そこで、子どもたちは生きものの道をつくるために、土地を所有する牛久市への提案、地元への計画説明、測量や生物調査に基づいた設計図の作成、工事という実際の公共事業の段取りを踏んで、大人や専門家の意見も聞きながら、3年がかりで谷津田の再生を実現させたというのです!小学生がですよ!しびれませんか?これが、アサザ基金が「市民型公共事業」と呼ばれる所以なのです。その後、神谷小の事例をモデルケースとして多くの谷津田が再生され、企業との協働事業にも発展しているのだそうです。まさに私の理想!

 

 現在では、アサザプロジェクトは、三井物産やNECなどの企業と協力しての谷津田開発、地元の酒造会社とコラボレーションしてのブランド地酒づくり、さらには、行政を巻き込んで常陸川水門を開放させ、霞ヶ浦周辺を世界一のうなぎの産地にしようという試みまで始めています。このアサザプロジェクト、今では市民、行政、企業など、述べ20万人以上が参加する事業となっているのです。

 

 ここから私たちが学ばなければならないことはたくさんありますが、私が特に感銘を受けたのは以下の2点です。

 

(1)問題解決型から価値創造型へ

人は問題を考えるよりも、価値(良いこと)から考える方がポジティブに思うものです。これを純粋に考えることができるのが、すでに縦割りの枠の中にずっぽりはまってしまった大人ではなく、子どもなんだろうなと思います。そういう意味で、飯島氏が、新しい試みを今でも子どもたちと一緒に考えているということは理にかなっています。行政や政治家だって、どうせ街の問題点や、課題、「あれをやってくれ、これもやってくれ」としか言ってこないであろう大人たちの話や陳情を聞くよりも、「私たちはこの街のこういうところが好きです。だから、その部分をこうやって伸ばしていきたいと思うのです。そのためにはこれこれこういう試みが必要になると考えています。そのための支援をお願いします。」という子どもたちからの話を聞く方が嬉しいし、協力したくなるでしょう。「悪いものを減らす」のではなく、「良いものを増やす」という発想が大事なのではないでしょうか。

 

そういう意味では、私がこれから船橋市内で実施していこうと考えていた計画も、もう少し考え直さなければいけません。私はこれから、私の専門分野であるプロジェクト・サイクル・マネージメント(PCM)という市民参加型手法を用いて、市内でワークショップを開催し、地域やコミュニティの問題を解決していく試みを考えていました。もちろん、この取組みにも意義はあると思いますし、効果もあると思っています。しかし、出発点が「問題(課題)分析」というネガティブな要素を考えることなのです。これに対して飯島氏の発想は「将来の希望」というポジティブなものから始めるというものです。そして対象は子ども。もちろん私は地域の大人と一緒に、「問題」から入っていくPCMワークショップを行っていくことを引き続き考えているのですが、子ども(小学生・中学生)を対象にした「希望」から入るアプローチも実践してみようと思っています。これから早速、知り合いの小学校教諭に連絡を取って、協力してくれる学校、先生を探してみることにします!

 子どもたちの意見を引き出す秘訣(私が昨日、飯島氏へ質問した際の同氏のお答え)。まずは子どもたちに好き放題言わせるべし。子どもたちに全部出させてあげる。そうすることによって子どもたちの心を開いていく。子どもを信じること。「感じる」を投げかけてあげること。そうすると、「共振」が起こり、子ども同士で「感化」し合っていく(共感)。そうなると、自然に意見はアイデアや意見はまとまっていくというのです。正直、後半の部分はよくわからないのですが、それは私が未体験なため。これからやっていこうと思います!よくたくさんの政治家が、よく「子どもの未来のため」とか「子どもが宝の社会」とか言いますが、空虚に聞こえるのは私だけではないと思います。そのために何もやったことの無い人に言われても説得力が全く無いのです。私はそういう政治家になりたくはない。

 

(2)動く線(竜やウナギのイメージ)になれ!

 先ほども書きましたが、問題は単独ということは無いのです。全て包括的に繋がっています。これを解決するためには、一つひとつの問題解決につながる事業や取組みをつなぎ合わせること(つまり、ネットワーク構築)が大切なのです。問題だけでなく、価値創造も同じ。一つひとつの価値創造事業をネットワークでつなぎ合わせることが大事なのです。断言しますが、現在の縦割りで硬直化した行政では横の広がりを生み出すことはできません。絶対にです。私は、横のつながり(ネットワーク)を生み出していけるのは、市民活動であり、NPOであり、さらには縦割り社会のしがらみに毒されていない政治家だと思います。私はそうなりたい。PCMワークショップや市民討論会、さらには子どもたちとの未来討論等を通して、一つひとつの問題解決、あるいは、価値創造の事業を作っていく。しかし、ただ個別に作っていくだけではない。作られていった事業を「船橋市をもっとよくするために」という一つの大きな目標のためにつなぎ合わせて行く(ネットワーク化する)ことをしていきたい。アサザプロジェクトが教えてくれるのは、こういう新しいロールモデルを作れば、人や行政や企業といった全てのステークホルダー(関係者)は、後から自分たちのほうから「入れてくれ」と言ってくるのである。むしろ、行政や企業を我々が活かしてあげるのだという気概で臨むべきでしょう。正直、私は、今後の自分の活動を過小評価していました。市民活動やNPO活動は、行政の手の届かないところを「補完」すること。こう考えていました。これは典型的なお上ありきのパラダイムですよね。むしろ、市民活動やNPO活動こそが主役であり、新しいネットワークやモデルを作って、そこに行政や企業を適材適所に活躍させてあげる(チョット上から目線ですが…笑)という時代になるのです。

 

 昨日の飯島博氏のお話は、私に上記のようなパラダイムシフトを起こしてくれました。飯島氏の斬新な発想とこれまでの実績に敬意を表しまして、アサザプロジェクトのURLを以下に。そして同時に私の決意でもあります。是非ご参照ください。
アサザプロジェクトのリンク

 

2013613日(木) 石川 亮(いしかわ りょう)