愛する犬との別れは受け入れたくないもので、命を繋ぎとめるためならどんなことでもするのにと渇望する人は多いのではないでしょうか。

 

努力はむなしく終わり、目の前にいるのは冷たくなった我が子。

自分の無力さを呪い、別れに、悲しみに押し潰されそうになっている時に

「500万円払ったら、この犬を蘇らせれますよ」と言われたら、

あなたならどうしますか?

 

リミットは5日間。

すぐに決断しなければ間に合わなくなります。

 

猫なら250万円。

リミットは3日間です。

 

 

安い金額ではありませんがそれでも、愛した子が甦るのなら安いくらいだと思う人も多いのではないでしょうか。

犬なら500万円、猫なら250万円。

それで、一緒に暮らすことが出来るのです。

失った我が子の一部を生かすことが出来るのです。

 

 

 

 

 

1996年、スコットランドで産まれたクローン羊のドリーに世界が驚きました。

その後、猫、牛、馬、豚、ウサギなどのクローンが成功して、

クローン犬のスナッピーが韓国で産まれたのは2005年。

人間や家畜のクローニングを禁止している国は多いですが、ペットのクローニングは今やビジネスとして成立しています。

 

火葬場であちゃの帰りを待っている時、このビジネスのことを思い出しました。

画像でしか会えないあちゃの笑顔を見つめながら、

あちゃと似た子を探してネットサーフィンしながら、

あちゃを抱きしめられない苦しみに耐えながら、

あちゃのクローンについて何度となく考えました。

 

貧乏人の私には、500万円なんてとんでもない金額です。

でも、もし500万円用意出来たら?

火葬前にクローンビジネスを思い出していたら?

あちゃの遺伝子を冷凍保存していた・・・?

 

 

クローン犬が元の犬と全く同じ犬になることはありません。

愛した犬と同じ遺伝子を持ち、同じ姿をしていても、同じ気質であったとしても、育つ環境が少しでも違えば全く別の犬のように育ちます。

遺伝子が同じでも、性格までは引き継げないのです。

 

それに、同じ姿で産まれる保証もありません。

一卵性の双子でも顔が似てなかったり体の大きさが違ったりすることがありますよね。

同じようにクローン犬も、性別は同じでも、目の色や毛色その他いろいろ違うこともあります。

 

健康の保証もありません。

多くのクローン犬は健康な状態で産まれていますが、奇形児の報告もあります。

クローン犬は代理母犬に移植されて産まれてきますが、1回のクローニングで成功するとは限らないので複数の代理母犬に移植されます。

そうやって産まれてきた中に奇形児がいたとしても、私達はそのことを知らないまま成功したクローン犬を家族に迎え入れることになります。

 

スナッピーの時、123頭の代理母犬に移植が行われ、妊娠したのはわずか3頭。出産(帝王切開)まで至ったのは2頭。

産まれた子犬は2頭。うち1頭は直後に死亡して、生き残ったのはスナッピーのみです。

技術が進化した現在、成功率はケタ違いに高いと思いますがどれだけの代理母犬が必要なのかは公表されていません。

 

韓国のクローニングを行っている会社では、1頭の犬に代理母をさせるのは一度切りだそうです。

それはつまりクローニングが代理母犬に与えるリスク、もしくはクローン犬が産まれるリスクがそれだけ高いことを意味しています。

その会社の代理母犬は全て雑種ですが、その犬たちはどこから来て、役目を終えた後はどこへ行くのでしょうね。

代理母犬をするためだけに産まれ生かされているのだとしたら・・・と考えるとぞっとします。

 

 

 

近い将来、クローンビジネスは身近な存在となり、価格ももっと安くなって依頼しやすくなると思います。

お散歩で会った犬が、動物病院で会った猫が、クローン。なんてことも珍しくない話になるでしょう。

 

その時、ちぃとるぅのクローン犬が欲しいかと問われたら、答えはNOです。

欲しくありません。

 

私は遺伝子を愛しているわけではありません。

野犬の子として産まれ人間の世界に怯えているところも含めて、今一緒に暮らしているありのままのちぃとるぅを愛しているのです。

クローン犬は全く別の犬です。

しかも、多くの問題を抱えて産まされた犬です。

そんな悲しい犬を自分の都合と感情のためだけにつくるわけにはいきません。

 

クローンビジネスは社会貢献の道も歩んでいるみたいです。

それを思うと複雑ですが、やっぱりクローンビジネスは廃れて欲しいと願います。