岐阜県の昔話

むかしむかし、ある寒い冬の日、猿とどんびきが連れだって村へと歩いておった。どんびきとは、かえるのことじゃよ。

 

さて、くたびれて歩くのが嫌になった猿どんは悪知恵を働かせ、「グーなしのじゃんけんで、勝った方が負けた方におんぶしてもらって村まで行く」という勝負をどんびきどんにもちかけた。

 

 

「じゃんけんぽん!」どんびきどんはパー。猿どんはチョキ。どんびきどんの手は水かきじゃからチョキは出せんのじゃ。負けたどんびきどんは、村まで猿どんをおんぶしていったそうな。

 

村の家の庭ではちょうど餅をついておって、二匹は早速、餅を盗み出すことにした。まず、どんびきどんがおとりになって家の台所で大きな声で鳴いた。すると人間達が台所に集まってきたんじゃと。猿どんはその間に、白いふかふかの餅が一杯入っている臼を持って、丘の上へ逃げて行ったそうな。

 

じゃが、猿どんは餅を一人占めしたいと思いはじめた。そこで、猿どんは「丘の上から餅の入った臼を転がして、先に餅にたどり着いた方が全部食べる」という勝負をどんびきどんにもちかけた。こうして二匹は、また勝負をすることになった。

 

 

ところが臼を転がしたとたん、猿どんは臼の上に乗っかったそうな。猿どんを乗せた臼はどんびきどんを後ろに残し、凄い勢いで坂を転がっていった。じゃが途中に大きな石があったから堪らない。臼は大石に乗り上げ、猿どん諸共跳ね飛ばされてしもうたんじゃと。

 

そうして臼の中の餅も投げ出され、大石の傍のツツジの木の枝に花のようにくっついてしもうた。そうしてそのツツジの木の下には、どんびきどんがちょこんと座っておったんじゃ。

 

こうして勝ったどんびきどんは、ツツジの枝から落ちる餅を一人で美味しそうに食べたそうな。その後、猿どんは山に帰り、どんびきどんは里に降りて冬ごもりをしたそうじゃよ。

 

それから、ツツジの枝についた白く柔らかいものを“つつじ餅”と呼ぶようになったそうじゃ。

 

出典:日本昔話データベース