岐阜県の昔話

昔、ある山里のはずれに小さな池があって、そのほとりには大小の二つの石がありました。この二つの石は、水を掛けるとハマグリのような模様がでるので「蛤石」と呼ばれていました。

 

この池に、孫と一緒に水を汲みに来るばあ様がいて、この蛤石を大切にしていました。野良仕事の合間をみては、いつも石に水をかけてあげていました。

 

そんなある夏の事。村には一粒の雨も降らず日照りが続き、村中総出で行った雨乞も全く効き目がなく、池や田畑がカラカラに乾きはじめました。ばあ様は、この日照りで石も不憫に思えて、わずかに残った池の水を石にかけてあげました。

 

 

すると、力ずくでも動かせない蛤石がグラグラと動きはじめ、ゴロンゴロンと転がり枯れかけた池の中に飛び込んでいきました。水にぬれた石にハマグリの模様が浮かび上がると、それと同時に空には黒雲がわき起こり、なんと雨が降りはじめました。雨は何日も降り続け、おかげで村の田畑はすっかり生き返り、池にも清らかな水が満々とたたえられました。

 

不思議な事に、この蛤石は雨を降らせた後、ちゃあんと元の場所に戻っていたそうです。それからもばあ様は暇さえあれば蛤石に水をやり、孫たちは石のまわりで戯れました。今でも、どこぞの池のほとりにこの二つの蛤石は並んであるそうです。

 

出典:日本昔話データベース