ある谷間の森に、大勢の虫たちが仲良く平和に暮らしていました。その中でも百本の足を巧みに操り、華麗にダンスを披露するムカデは森の仲間たちの大の人気者でした。そんな虫たちの中に、みんなから喝采を浴びるムカデを妬む一匹のカマキリがいました。カマキリはさっそく踊っているムカデに言いました。

「ムカデさん、百本の足を絡み合うこともなく、整然とステップできるなんて凄いですね。是非そのコツを教えて下さい」。

この言葉を聞いてムカデは、ふと考えてしまいました。

「なぜ、自分はこれほど上手に百本の足を動かせるのだろうか。カマキリさんの言うとおり、絡み合うこともなくステップが出来るのだろうか」。

そう頭の中で考え始めた瞬間に、ムカデは一歩も動けなくなってしまった。先程まで、何の苦もなく無意識にダンスをしていた足を一歩も動かすことが出来なくなってしまったのです。

 

この寓話は、我々人間の心の姿を教えてくれています。人間は1つのポイントを褒められるとそこを過剰に意識してしまい、自意識過剰になって本来持っている素晴らしい力を発揮できなくなってしまうのです。