新潟県の昔話

阿弥陀様の夢のお告げを信じなかった爺さんの末路

昔ある山裾に一軒の家があり、そこに後生願い(死んでも極楽に行けるよう願う事)で有名な爺さんが住んでいた。ある日爺さんは、いつものように村でも上等な阿弥陀様の前で後生願いに精を出していたが、夜枕元で阿弥陀様が爺さんの日頃の信心に応え、「表にある井戸に飛び込めば西の方から五色の雲がたなびいてくるので、それに乗れば極楽浄土へ行けるであろう」と告げる。

 

 

早速次の日爺さんが井戸を覗いてみると井戸は何の変哲も無いので、爺さんは試しに大きな石を井戸の中に投げ込むが何も起こらない。やはり昨夜の事はただの夢に違いないと爺さんは阿弥陀様のお告げを信じずにそのまま家に戻ってしまう。するとその夜また枕元に阿弥陀様が現れ、先程は石をぶつけられ痛かったが明日もう一度井戸に飛び込んでみるよう爺さんに告げる。

 

 

次の日再び井戸を覗いてみたが昨日と変わりは無く、爺さんは半信半疑で井戸に飛び込もうとするもやはり怖くて中々飛び込めずにいた。そうこうしているうちに猟師が井戸を通りかかり、何事かと思った猟師は爺さんから阿弥陀様の夢の話を聞いた。猟師はそんなに迷っているのならその夢を自分に譲ってくれとせがみ、この男で試してからでも遅くはないと考えた爺さんは、猟師の鉄砲を交換条件に夢を譲ってしまう。少し怖いが何としても極楽に行きたかった猟師は勇気を出して井戸に飛び込んだが、しばらくすると西の方から五色の雲が井戸の方へやって来て、猟師を乗せると元来た西の方へ去っていった。

 

あの夢のお告げが本当の事だと知った爺さんは、えらい事をしたと慌てて自分も井戸に飛び込むも五色の雲は現れず、代わりに井戸の上には阿弥陀様が立っていた。阿弥陀様は、自分の言う事を信じずに夢を売ってしまった爺さんはもう極楽に行けなくなったと嘆き悲しんだが、爺さんの日頃の信心に免じて地獄には落とさずに、これからは井戸の中の主としていつまでも生き延びるよう告げた後、深くため息をついて消えていった。

 

その時から爺さんは亀になってしまったということだ。

 

「出典:日本昔話データベース」