蝮がいつもやって来ては水を飲む泉があった。そこに住む水蛇は、蝮が自分の餌場に満足せず、他人の縄張りまで押しかけて来ることに腹を立て、その都度邪魔をしようとした。こうして争いがひどくなるばかりなので、二人は決闘をして、勝った方が土も水も自分の領分にすることに取り決めた。

戦いの日取りも決まった時、水蛇を憎む蛙たちが蝮の所へやって来て、助太刀を約束して激励した。さて、いよいよ決戦が始まると、蝮は水蛇を攻めたてたが、蛙はそれ以上何もできないので、ただ大声で鳴いていた。

蝮が勝ったが、彼は蛙を非難した。助太刀を約束したくせに、戦いの間、少しも助けなかったばかりか、歌など歌っていたではないかと。すると蛙たちが答えて言うには、「いですか、我々の加勢は手でするのではなく、声でするのです」。

手が必要な時に言葉だけの援助は何にもならないとこの話は解き明かしている。

 

 

「出典:イソップ寓話集90」