群馬県の倉渕村の山奥に、カエルの村がありました。そのカエルの村で、長老カエルが「誰かあの山に登って、頂上にある薬草を取って来てほしいのだが、だれか志願する者はいないかね」といって、村中に通知を出しました。
そうしたら10匹のカエルが志願してきました。
10匹のカエルは我々が行ってきますといって、麓の集会所に集まりました。集まったカエルに対して村カエルは「やめとけ、やめとけ、あそこは高すぎる、行っても命を落とす危険性が高い」といいました。それを聞いた10匹のカエルのうち2匹は「やっぱりやめときます」といって登山をあきらめました。残り8匹のカエルは我々が行ってきます、といって山を登り始めました。途中で野ウサギに出合い「貴方たち何処へ行くのだね」と聞かれたので、「頂上に登っていくところだ」というと、野ウサギに「この先はとても険しいのでやめたほうが良い、君たちには無理だ」といい、それを聞いた3匹が脱落しました。
残りの5匹のカエルは、また山を登って行きました。その途中で鹿に擦れ違い「頂上なんて無理だ、僕らみたいに爪があってもこの先は岩だらけで無理なのだ、君らの柔らかい皮膚では裂けてしまうよ」といわれ、ここでも2匹のカエルが脱落しました。それでも、残り3匹のカエルは山を登って行き、途中でネズミがやって来て「頂上はとても寒いぞ、僕らみたいに毛皮があれば良いが、君らみたいな皮膚ではとても耐えられない」といったので、ここで2匹のカエルが脱落しました。結局1匹のカエルが少しずつ、少しずつ頂上に登って行って薬草を手に取り戻ってきました。
村カエルは「お前は良く戻ってこられた、すごいなぁ」といって驚き讃えました。カエルはその薬草を手にして、皆の讃える声が聞こえたのか、聞こえなかったのか、何の反応もしませんでした。
そうなのです。そのカエルだけが耳が聞こえなかったのです。他のものの忠告も聞こえず、ただ、お触れとして廻って来た、薬草を取って来てほしいという通知だけしか見ていなかったのです。
山に登るという課題に挑戦したカエルですが、色々な示唆を含んでいます。一匹を除いたカエルたちは、途中でその課題に挑戦することをあきらめました。理由は、「お前には無理だ」という他者の言葉であったわけです。ただ一匹頂上にたどりついたカエルは「お前には無理だ」という他者の言葉が聞こえなかったゆえに成功しました。「無理だよ。やめとけ」でなく「できるんじゃない。頑張ってやってみろ」を連発するような仲間に囲まれてみたいですね。
参考文献《物語は、インターネット上に掲載されている動画と「座右の寓話(戸田智弘)を基に一部をアレンジしています。》