“もみ上げ新さん”“さすらいの料理人”――。こんなニックネームで90年代の料理番組やワイドショーで引っ張りだこだった料理人をご記憶の読者は多いだろう。藤田新さんだ。堂々たるもみ上げがトレードマークで、一見コワモテなことから、「修羅がゆく」「修羅のみち」などの任侠Vシネマにも出演した異色の存在だった。しかし、最近はテレビで見ない。さて、今どうしているのか。
●「新商品開発、飲食店のプロデュースやコンサルティング、それに講演会だろ。けっこう忙しいんだわ」
「自分の店の切り盛りに加え、新商品開発、飲食店のプロデュースやコンサルティング、それに講演会だろ。けっこう忙しいんだわ。最近手がけた新商品には鹿児島の黒豚肉をはじめとした国内産食材にこだわった『浜っこ餃子』、北海道のあるメーカーに依頼された特製コロッケなんかがある。飲食店関係なら浅草・花やしきにある日本料理店『花福』と中華風ファストフード店『熱熱しょうろんぽう』ね。ちょっと前には調布市の小学校で“子供と一緒に台所に立とう”をテーマに話してきたよ」
新宿・四谷三丁目交差点そばにある創作日本料理店「とき和」で会った藤田さん、まずはこう言った。もちろん、同店が「自分の店」。ランチは850円から、コース料理は3500円からだ。
ちなみに、もみ上げは相変わらず立派。黒々している。
「テレビに出るようになったのは30年くらい前だね。六本木の割烹料理店の料理長を任されてたとき、知り合いのテレビ朝日の制作関係者に番組の料理シーンの“手タレ”を頼まれたのがきっかけだった。それ以来、ほかの局からもちょくちょく声がかかるようになったわけさ」
佐賀県有田町の元窯元に生まれた藤田さんは福岡・中洲の日本料理店を皮切りに、大阪や都内の料理店で腕を磨き、28歳の若さで六本木にあった総席数250の割烹料理店の料理長に就いた。「とき和」をオープンしたのが81年7月。
「新しい食材を求めて全国を歩き回って、ついたニックネームが“さすらいの料理人”。自分の店があるのに、さすらってちゃマズいよな、ハハハ。しかし、レギュラーを3本持ってたときはタクシーの中で着替えするほど忙しかったけど、おかげで名前が売れ、今もコンサルティングの仕事が舞い込む。感謝しないといけないね」
美食家、料理好きで知られる松方弘樹とはVシネマ「修羅のみち」シリーズで共演。出番待ちの間に料理談議がはずみ、今も店に食べに来るとか。
「オープンキッチンだから、カウンターに座るとオレが包丁握って料理作るのが見えるんだ。それを楽しみにいらっしゃるお客さんも多いんだよ」
ところで、最近はテレビで姿を見ないが……?
「オファーは相変わらずあるんだ。だけど、テレビは拘束時間が長くてね。店とテレビって二足のワラジは正直、難しい。で、これからは空き時間を見つけ、若い人に和食の良さ、おいしさを知ってもらうイベントや講演に力を入れていきたいと思ってる」