経営危機に陥っている米自動車大手クライスラーの公的支援継続の条件であるイタリア大手フィアットとの資本提携の交渉期限を30日に控えて、米財務省は29日、破(は)綻(たん)回避のためのギリギリの調整を続けた。
財務省が主要債権者グループの間で69億ドルの債務を約7割圧縮することで基本合意に達し、交渉締結の最大の障害は取り除かれた格好だが、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した後に、フィアットと提携を結ぶ選択肢も残されており、予断を許さない状況だ。
米紙の報道によると、債権者の一部の金融機関やヘッジファンドが条件に難色を示しており、大統領の特別作業部会が説得を続けている。46のすべての債権者の同意を得られなければ、クライスラーは連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請に追い込まれることになる。
オバマ大統領は29日、ミズーリ州での集会で、債権者が最終的に同意するか否かは「分からない」と述べた。米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)によると、オバマ大統領は30日朝にクライスラーに関する声明を発表する予定で、同社の破綻、破綻回避の2種類の草案が用意されているという。
一方、クライスラーの退職者向け医療費負担の軽減で暫定合意した全米自動車労働組合(UAW)は29日、組合員による投票を実施する。UAWは譲歩の見返りに同社株55%を保有することになる。
フィアットは全債権者のとUAWの最終合意を得られた段階で資本提携を結ぶ方針。ただし、破産法適用を申請した後に提携した方が、ディーラー網削減などスリム化が進み得策とする業界関係者の見方もある。