窓の外には秋晴れの薄い水色の空が広がっている。
もう昼を過ぎたというのに事務所の電話が鳴ったのは一回だけ。
グルコサミンの錠剤を買わないかというセールスだった。
こんなふうに書き始めると、
いまぼくが書いている短篇小説『探偵』の書き出しのようだ。
40歳近くで職が見つからず、
経験を生かして探偵事務所を開設したものの依頼はなく、
半年経って開業資金も底をつき、
いよいよ夜逃げでもしなくてはというところから物語は始まる。
この短篇はもう10年以上前に書き始めたのだが、
そのときは完成できずにパソコンのなかで眠っていたもの。
それをいま書き直している。
今回は小説の書き方もいくらか身につけ、
面白いキャラクターも増えたので読者をウンザリさせない作品になっていると思うのだが、
アッとさせる結末がまだ思い浮かばない。
いまのアイディアは、
実際に自分の身近でそんなことがあったら驚くだろうが、
小説としてはインパクトが足りない。
それで書きあぐねている。
習作だからそんなに力まなくてもいいのだろうが、
習作といえども作品は自分のこどもなので、
できるだけいい作品に仕上げたい。
小説家の川上弘美さんも、
山形での小池真理子さんとのトークショーで、
目の前の30枚の作品に自分のすべてを出す。
出し惜しみなんかしてられない。
という意味のことを話された。
そうだと思う。
30枚の簡単な依頼だからテキトウに書こうなんて思ったら、
迫力に欠けるものになるだろうし、
それ以降の作品にも影響するのではないかと、
アマチュアながらに想像する。
作品には命を吹き込みたい。
登場人物がその小説のなかで生き生きと感じられるように。