昨日の日曜、
ぼくは作家の三浦しをんさんが講師をされた作家養成講座に出席した。
山形市の遊学館で毎月第4日曜日に開催される、
その名もズバリ「小説家になろう講座」だ。
山形在住の書評家池上冬樹先生が世話役をされている講座で、
池上先生の豊富な人脈により、
毎回第一線で活躍する作家が講師として山形市に来てくださる。
東北の地に居ながらにして日本文学の頂点に接することができる講座なのだ。
その効果、そしてレベルの高さは、
既に5人の受講者が作家としてデビューし、
さらにもうひとりが上梓を待っているということにも現れている。
ぼくも参加する度に刺激を受けるわけだが、
昨日はいつもよりさらに興奮して帰ってきた。
講座の前半は受講生のなかから3人の作品がその回のテキストとして選ばれ、
それについての講評をする。
後半は講師に池上先生がインタビューをするという形式で行なわれる。
前半の講評で早くも三浦しをんさんは受講生のこころをつかんだ。
ぼくは3番目に取り上げられた、
29歳の女性が交友を通して新たな世界に旅立っていく過程を描いた小説
『蛇のぬけ殻』(原稿用紙72枚)
についての三浦さんの講評に驚き、あっけにとられ、声を上げて笑った。
今回取り上げられた3作品はどれも文章が上手く、
文学賞の最終選考に残った作品でもこのレベルに達していないものがあると言ってくださったほどなのだが、
その巧みな文章によって表現されている女性のパーソナリティに対して、
講師口調からがらっと変わって、
「あなたそんなものじゃないですよ、性愛というものは。」
「もっと生々しくていいと思う。」
主人公の隣に住む性同一障害と思われる幼なじみの男性に対して、
「こんな男いないって。女もいない。」などなど
ズバズバと小気味よく自然体の三浦さんのことばが飛び出してくる。
ですます調で語られる「講師の先生」としてのことば遣いではなく、
まるで文学好きの友人と議論しているような感じだ。
そこでぼくはこころをつかまれた。
彼女にならなんでも言えるような感じ。
そのご後半のインタビューは三浦さんの構えない態度と率直な発言に会場が沸いた。
ぼくは講座に毎回は参加していないのだが、
ぼくが知る限り受講生に最もウケたインタビューだった。
講座のあとは恒例の懇親会が日本料理屋で行なわれ、
その席でも三浦さんの周りには受講生の輪ができ、
そこだけではなく他のスポットでも話が弾んでいるので、
大きな声でないと話が通じない。
かくして大賑わいの懇親会となった。
こんなに盛り上がった懇親会もぼくが知る限り初めてのこと。
さらに場所を変えてバーでの二次会。
その二次会の参加者はいつもは十名ほどなのだが、
今回は二十名もいて、
テーブル席に着けなかった人はカウンターに腰掛けた。
三浦さんがお好きな宝塚の話、
漫画の話、
好きな男性の話、
最後は池上先生の霊の話まで、
二次会もにぎやかな会となった。
バーに入ったのは8時頃だと思うのだが、
出たのは午前1時だった。
講座は午後2時40分にスタートしたのだから、
三浦しをんさんと同じ空間に10時間以上ご一緒させていただいたことになる。
ぼくにはとてもとても濃密な時間だった。
印象的だったのは彼女が人の話を聴くときの目。
目の輪郭は三日月型にやさしい弧を作っているのだが、
見据えるといってもいいほどその目に力がある。
そこに作家三浦しをんの集中力を見たように思った。
ぼくも話す機会があったのだが、
彼女に見つめられると、
ぼくのなかでなにか心地よい感覚が微かに湧きあがる。
その感覚は彼女の目を想いかえす度に、
いまもぼくのなかに生じる。
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