変革を推し進めるもの

著者: 三枝 匡
タイトル: V字回復の経営
おもしろくて一気に読み終えてしまった。
ストーリー仕立てなので読むのに難しさはない。
面白いように話が展開していくので楽に読み進められる本である。
変革を実行するというのはまさにこういうことなんだな、と納得した。
というのも、以前、自分の所属する部門の方針に疑問があり、自ら戦略立案を申し出たことがあるからである。
上司からOKをもらい、部門内の人にヒアリングして現状の部門の弱点の原因を整理したり、あらたなコンセプトをたちあげたりした。
上司は私の提出したアウトプットを高く評価し、次の期の部門のビジョン・戦略として、事業部全体にそれを発表したのである。
しかしそこから先がまずかった。
リーダーとなってその戦略を実行プランに落とし、遂行するひとがいなかったのだ。
私自身も「自分はまだ若すぎるから」と言い訳をして、なにもしなかった。
結果、期首にぶち上げた花火はその翌月にはあっさりと勢いを失い、だれも口にすることがなくなってしまった。
ときどき誰かが「そういえばあれってどうなったんだろうね?(笑)」と皮肉交じりに私に問いかけるくらい。
そのときは悔しかったが、自分の実行能力のなさを棚に上げて、上司のリーダーシップの欠如、戦略に対する理解・知識の不足などを、失敗の理由として自分自身に言い訳をしていた。
それが、本書を読んで、そうか、そういうことだったのか、と納得した。
組織がだめになるときは、上層部だけが悪いのではなく、危機意識・当事者意識のない組織構成員すべてに責任がある、という指摘は胸に突き刺さった。
読み進めるうちに、自分に何がかけていたのかも思い知らされた。
説得性のないコンセプト、データや論理的裏づけのない戦略、実行プランへの落とし込み能力の不足、リーダーシップ・当事者意識の欠如、政治的軋轢の処理能力の不足、部門内のメンバーへの継続的な説明・コミュニケーションの不足、そして何より独りよがりに進めてしまい協力者を得ようとしなかったことが失敗の原因だったと痛感した。
本書を読んでも即、変革ができるようになるわけではない。
分析ツールについて解説されているわけではないし、戦略立案のハウツー本でもない。
変革のステップ、要点はまとめられているが、断片的なノウハウである。ノウハウは一人の人間もしくは組織の中で有機的につながって、実際の作業・タスクに反映された形でなければ役に立たない。そのノウハウが自分の目の前の仕事にどう役立つか、どう実践するかを考え、実行しなければ身につかないからである。
本書で鮮やかに描き出されているのは(ビジネス書だがあえて描く、という表現が適切だろう)改革に向かう人々の心理や状況の変化である。
それは変革をするときの心構え、変革を成功させるイメージトレーニングとして有用であろう。
結局は、変革しようという熱意、人を巻き込む過程こそが、変革を成功させる秘訣なのではないか、本書を読んでそう強く思う。
だからこそ、本当に変革を起こそうと思うときに、変革に付きまとう障害や苦労をあらかじめイメージトレーニングできる、それが本書の意義ではないかと思うのである。