「音のバーコード」の可能性 | まる for work

「音のバーコード」の可能性

電車広告である大学が「音のバーコード」の研究開発をしている、というものがあった。
テレビなどの映像コンテンツに「音のバーコード」を埋め込み、携帯でそのバーコードを読み込む、ということができる技術だという。
もしこの技術が実現段階レベルに達したとき、どんなビジネスモデルがあるのか考えてみた。

考慮しなければならないのは次の3点が考えられるだろう。

1.音声情報の瞬間性
映像コンテンツは、その瞬間に消費され消費者の手元に残らないものである。
たとえばテレビCMはほんの15秒~30秒のあいだだけ消費者に届けられ、その後消費者のもとにのこるのは記憶だけであり、その情報に直接アクセスするための糸口は残らない。
「××って会社のデジカメで、ほら、あの女優さんが宣伝してたCMが気になってて。あー女優の名前が思い出せない、なんだっけ???」というように、記憶はとてもあいまいで、消費者がその商品を思い出す手がかりは消費者まかせである。(あるいはCMの企画者やクリエーターの仕掛けまかせ)
そういう意味で、テレビCMから「音のバーコード」で直接商品についての説明や購入プロセスに遷移できるのは、企業にとって魅力的であるに違いない。
しかしその一方で、消費者が必ずしも携帯を常に手元においてテレビをみているわけでない、ということも考慮しなければならないだろう。
あ、っと思った瞬間に、その「音のバーコード」をキャプチャーしなければならないのだ。
これはテレビCMに限ったことではない。
テレビ番組だって特定の商品やサービスについて言及するのはわずかな時間である。そのときに、携帯でキャプチャできなかったら意味がない。
映画の宣伝番組(週末に映画のメイキングを含めてよく1~2時間の宣伝番組をやっているが)やテレビショッピングのように、比較的長い時間ある特定の商品・サービスについて言及しているものも同様である。
その時間(5分か2時間かの差こそあれ)にそれを消費者が見ている、ということが前提である。
見終わった後に「あの商品やっぱりほしいかも」と思った人にとっては、その映像はすでに消費された後なのである。
音声情報の瞬間性をどう乗り越えるか、その点を考慮しなければ投資対効果が低くなってしまう可能性がある。

2.携帯で扱えるコンテンツの特性
「あ、この情報!」と思って運よくキャプチャできたとする。
問題はその後だ。
携帯で見ることができるコンテンツの量には、(今の携帯では)限りがあることを考慮しなければならない。
現在の携帯ブラウザは、ブラウズするものではなく、消費者がかなり強い利用動機を持ってアクセスし、ある特定のコンテンツに指向性をしぼって到達するのに向いている。
たとえば「この曲を着うたにしたい」とか「このお店のクーポンがほしい」とかである。
したがって、キャプチャしたバーコードがアクセスする先は、かなり指向性の強い情報である必要がある。
たとえば、テレビで見た商品を携帯で買う、という指名買いはそのよい例である。

3.消費者の購買行動と携帯という機器の特性
その一方で、テレビで見た、ということと指名買いがかならずしも直接つながらない危険性もある。
テレビでちょっとみただけの商品を、携帯でキャプチャしてすぐ買うか?
よほど消費者に購買意欲をわかせる商品・サービスでない限り、そのような衝動買いは難しいのではないだろうか。
上述のように、携帯は大量のコンテンツをブラウズするには向いていない。
となると、携帯でカバーするのは、決済やチケット、クーポンのように、それ自体が購買や消費のプロセスの一部であり、携帯で「情報の収集~商品・サービスの比較~購買意思決定」までの一連のプロセスを実現することは難しい。
よほどその商品・サービスが購入されることを前提に情報提供(たとえば商品の説明など)をするか、その商品がほしいと思わせるだけの説得力をもったコンテンツを作るか、である(あの雑誌のあのモデルがもっているからこのバッグがほしい、と思わせるのは、そのモデルの存在自体に消費者が魅力を感じており、そのモデルと同じものを持つことに価値があるからである)
消費者が自分で情報を収集したり商品・サービスの比較をして理解を深める、というプロセス抜きに、商品・サービスの認知から購買に直接つなげるにはそれなりの仕掛けが必要だということではないだろうか。

ということを考えると、テレビショッピングばかりやっているケーブルテレビのチャンネル、なんかは「音のバーコード」を実現しやすいかもしれない。
かなりニッチな市場だけれども…