新たな模索期?










正直、あんまり聴いてこなかったアルバム。
一聴して、“ポップ過ぎる” んですよ。
なんで、前回の『最後の晩餐』のレビューを書くくらいまでは、「何曲かは好きだけど、全体としては微妙」と言う立ち位置だったのだけれど…。




最近、カッコよくね?と思い初めて、かれこれ一ヶ月くらい結構聴いてます。
とは言っても、全体としては毒少なめ。
また、編曲者を岡田徹さんと白井良明さんに絞っているので、音像として前回ほどのまとまりのなさがなくなってるのも、大きいかな。



そんななかでの一曲目の「幸せな洪水の前で」は、まんまAOR。作曲と編曲は白井良明さん、そして作詞は鈴木慶一さん。ちなみに、このアルバムは初めの段階で鈴木慶一さんが全ての作詞をするというコンセプトがあったらしく、そこでも統一感を出そうとしているのが面白いところ。
そんなこの曲。個人的に、和製AORの名曲を出せって言われたらこれを出すくらい完璧すぎて、言うことがない。
そんな曲を一曲目に置くから、他のアルバム曲がまあ薄れる薄れる。笑


ほんと、いつ聴いてもいい曲だし、マスターピースの中のマスターピース。



からの「ダイナマイトとクールガイ」も名曲。作編曲は岡田徹さん。作詞は鈴木慶一さん。
ええ、暫くはこの二曲だけでこのアルバムが終わるって時期がありました、ボクも。
だって、この二曲が完璧なんだもんなぁ。
この曲に関しては、レゲエっぽい能天気さの中に、恋人たちが持つ倦怠期の少しの冷たさが入っていて、そのバランス感覚が絶妙なんですよ。
ベストアルバムに入っていたり、ライブでも演奏される頻度が高い、代表曲でもある。


続く「シリコン・ボーイ」は「ダイナマイトとクールガイ」のカップリング。作詞曲は鈴木慶一さんで編曲は白井良明さん。アップテンポのナンバーでポップなんだけど、個人的には今のところ、なにかが足りない一曲。
で、今日聴きながら思った。
このアルバム、全体的に『MODERN MUSIC』っぽいんですよ。で、ボクはまだそんなに『MODERN MUSIC』がピンと来てなくて、だからそんなに『A.O.R.』自体がピンと来てないのかなぁ…なんて。


まあ、急がず耳を慣らしていこう。


さよならを手に」は、直球のA.O.R.バラード。
というか、MOONRIDERS 全歴史を見ても珍しいくらいなんの捻りのないバラード。ここまでくると、逆に個性って感じ。作編曲は、岡田徹さん。レコーディング中にギターを弾いてたらできた曲らしい。作詞は、鈴木慶一さん。
A.O.R. って縛りがあったからかなぁ…。余計な細工をしなくて済んでて、一周回って好きな佳曲。


現代の晩年」も隠れ佳曲。作曲は、岡田徹さんと鈴木慶一さんの連名。編曲は岡田徹さん。作詞は鈴木慶一さん。


僕が生まれた頃は 科学のたけなわで”


って言う歌詞が好き。
「シリコン・ボーイ」では『MODERN MUSIC』が顔を覗かせるけど、この曲は『青空百景』収録の「二十世紀の鋼鉄の男」を思い出す。

ただ、曲自体はポップなんだけど、タイトルから冷戦の終結を想起させるこの時代性。いっときの休息というか、風通しの良さが、心地良くもあり、いま聴くと羨ましかったりもするそんな一曲。


さて、続く後半戦一曲目の「WOO BABY」が、このアルバムを通しで聴けるかどうかの肝。
「さよならを手に」「現代の晩年」「WOO BABY」の三曲が、テンポも同じだし、盛り上がりという盛り上がりがあるというわけでもなく、かと言って聴きどころがないというかといえばそんなこともない、みたいな絶妙な並びなんですよ。前回の『最後の晩餐』のラスト三曲の派生形なのかどうかは分からないけれど、“決してテンポが速いわけではないけれどポップスとして成立するギリギリのラインを狙う” ってのの、拘りを不思議と感じるんだよなぁ…。

で、そんななかのかしぶち哲郎さん作曲なんですけど、まあまあの難敵。ちなみに作詞は鈴木慶一さん、編曲は岡田徹さん。(かしぶち哲郎 / 鈴木慶一 の並び、めちゃくちゃ珍しくて、面白い。)
かしぶち哲郎さんの楽曲って基本的に MOONRIDERS のなかでも異彩を放ってることが多いんですけど、めずらしく溶け込んじゃってる珍しい例。そして溶け込んじゃってるせいで、アルバム全体としては若干ダレるって言う、良いのか悪いのか…。
ただ、ひさしぶりに聴くと、めっちゃベースラインが変なんですよ。なんだ、この曲…。スルメにも程がある。


からの「ONE WAY TO THE HEAVEN」は実にあっけからんとしたレゲエポップ。うん、タイトルを除けば。笑
作曲は武川雅寛さん白井良明さんの連名。編曲は白井良明さん。作詞は、武川さんと白川さんと共に鈴木慶一さんも参加してる。
天国に行けるから明るいのかどうなのか分からないけれど、とにかく明るい。佳曲。



で、来ました。



最近の、激推し曲!



レンガの男」!



これね。
最近まで、イントロのポエトリーリーディングの印象が強すぎて、その後の部分をあんまりちゃんと聴いていなかったんですよ。

でも!

いや!

この曲、めっちゃカッコいいじゃん!ポーン

ってなって!
ハウスっていうの?知らないけど、MOONRIDERS にあるまじき、超絶ダンサブルな楽曲。
どうした?MOONRIDERS!
A.O.R. にかこつけて、実にやりたい放題。
ホントに!この曲だけでも、聴いて欲しい!めちゃくちゃカッコいいから!
ちなみに、作詞曲は鈴木博文さん、編曲は白井良明さん。あー、この並びを見ると、なんか納得してしまう。この、“やったもん勝ち感” 。最高。ニヒヒ


からの「無職の男のホットドッグ」は短めでシンプルなロックンロールチューン。作詞曲は鈴木慶一さん、編曲は岡田徹さん白井良明さんの連名。
…てか、このアルバム、やたらと “男” って使われてないか?
「ダイナマイトとクールガイ」「シリコン・ボーイ」「レンガの男」「無職の男のホットドッグ」…。歌詞をもう少し精査すれば、もっと出てきそう。
なんでだろう。作詞が鈴木慶一さんに集中させたからかなぁ…。でも、「レンガの男」の作詞は鈴木博文さんなんだよなぁ…。謎だ。真顔


ラストは「月の爪」。
なんかね…変な曲。
作詞曲は鈴木博文さん。編曲は白井良明さん。
まあ、でも何回聴いても、これでアルバム締める?ってなる。
ある意味、浮いてるからここにしか入れれなかったって感じがしないでもない。

ホント、不思議。









メンバーの個性が収集つかなくなってきたので、一旦統一性を感じるアルバムづくりををした結果出来たアルバムというイメージ。まあ、編曲を岡田徹さんと白井良明さんの二人に任せ、作詞は鈴木慶一さんが担当した結果なのだけれど、結局制御しきれなかったのでは?という印象。そしてそれは次回作の『ムーンライダーズの夜』に大きく反映されることになっていく…のだけれど、それはまた次回に。

こう見ていくと、一見アルバム間になんの繋がりがなさそうな90年代 MOONRIDERS も、目的意識があるんだなぁ…。