その2。楽曲編のA面。
一曲目の「悲しいしらせ」は鈴木慶一さんの作詞作曲によるもの。
今のところ、なんて形容すればいいのかわからない楽曲。ロックンロールというには激しくはないし、ポップチューンと言えるほどキャッチーではないし、だからといって聴き難いわけではなく、しかし曲の途中でガラッと雰囲気が変わったりするので、まんま一筋縄ではいかないこのアルバムを表すには最適だけども、個人的にはまだ “キテナイ” 一曲だったりする。
いや、一曲目からそんな調子で良いのかと思われるかもしれないが、あとからグッとくる楽しみというのもあるでしょ?
ちなみに、着想の一つにたこ八郎さんが絡んでいるらしいのだけれど、後年からしてみるとその存在が見えにくいってのもある。
ちなみに、動物縛りはそこから。
“生きているのか 死んでいるのか
わからない気持ち”
そんなフワッとした印象の一曲目から一転、わかりやすいギターロックの「犬にインタビュー」が始まるのだから面白い。
作曲は、白井良明さんで、作詞は白井さんと佐伯健三さんの共作。
ただ “わかりやすい” ギターロックンロールなのだけれど、言うほど “単純ではない” というのも一曲目から受け合い。この単純じゃなさが、このアルバムっぽさだし、好きなところ。
でも、本能的に乗れるってのはやっぱ楽曲として強い。即ち、動物的。
犬から狼へ、遠吠えとともに始まる「ウルフはウルフ」。
ここら辺の動物のチョイスが似通ってしまっているのが個人作業の結果?
鈴木博文さん作詞作曲の楽曲で、言われれば楽曲の設計自体は『青空百景』あたりの作風を感じなくもない。激しい展開ではないのに、徐々に熱を帯びて行く作風。
でも、全体的なシリアスさとその音像はこのアルバムまでアップグレードされてるのが面白いところ。
さて、まだまだアップテンポは続いて、「羊のトライアングル」。
これは、岡田徹さんらしいポップチューン。作詞は、佐伯健三さん。
ただ前の二曲の印象からか、あんまり印象に残らない楽曲。でも、この三曲の連続が不思議とこのアルバムの印象を明るくしている気がする。
「さなぎ」は、一聴してわかるかしぶち哲郎さんのお得意のバラッド。うん、バラッドっていう形容が合ってる。そして、この曲調はこの人しか作らないし、作れない。
餅は餅屋というもの。
そんな、作曲だけ見ると変化が分かりにくいけれど、だからこそ如実にサウンドや音像の変化が起こるのが彼の楽曲。
前回の世界観から更にディープに耽美、ますます捉え所はなくなっている気がする。
そして、A面ラストを飾るのは、かなりひさびさの作品提出となる、武川雅寛さんの「Asid Moonlight」。
なんというクラッシックの趣。当時の最先端に行く、コンテンポラリーに近い作風の今作において、何故これがサラッと入ってて違和感がないのかわからない。
これがグルーヴを持ったバンドの恐ろしさ?
だって、ピアノとストリングスだけのインスト曲だぜ?
それまでの曲は、打ち込みの音も入ってたのに。
ホント、なんで違和感がないのか、わからない。
…というわけで、A面だったのだけれど、正直ここまでは前哨戦。![ニコニコ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/002.png)
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間違っても、このアルバムが好きという人で、A面の方が好きという人は、おそらくいない。
メインはB面。
しかし、A面がダメというわけではない。
それは、各個人の作家性を強く出しながらも、どこまでバンドのグルーヴを感じさせることができるかという試みだ。
高らかな、バンドのグルーヴの完成宣言、
といっても良い。
それは、何者でもない “我” の発見。
いや、“我々” といおうか。
そんな確固たる “我” を発見したことで、そこからは応用編、もっというと実験であり、この素晴らしい実験成果が次回作まで繋がるのだ。
…って、纏めるのは、まだ気が早い。
我々には、目眩くB面が残っている。