設定だけで “勝ってる” 映画。
でも、それだけじゃない。
『蜂の巣の子供たち』
清水宏 監督
戦争から帰ってきた復員兵が、下関から東京へ向かう列車に乗らず、そこで合流した様々な理由を抱えて戦災孤児となってしまった子供たちとともに、自身の育った孤児院のある広島へと向かうロードムービーって言う、「こんな映画、どうやったって面白いだろ!」っていう映画。
もうこのあらすじを見ただけで、観に行くこと決めたよね。
ロードムービーがそもそも好きなんですけど、復員兵と戦争孤児が一緒に旅をするっていうのが、そんな発想ありなの⁉︎っていう驚き。
しかも、その戦争孤児たちは実際に監督が保護している浮浪児。
だからかわからないけれど、ときどきの表情の切なさにドキッとするんですよ。
フィクションなのだけれど、その瞬間瞬間はリアルで、演技でないのが染みる。
ただ、そのような切なさがあるのと同時に、どこか間の抜けていて、気楽で楽観的な雰囲気が、面白いんですよ。
というよりどちらかと言うと、そういう陽気で向こう見ずの雰囲気が続くから、ふとした瞬間の切ない瞬間にグッとくるって方が合ってるのかも。
そして、ロケーション。
全編を通してオールロケなのだけれど、陽気な瀬戸内海の海浜沿いが続く所々で戦争の傷跡が見えるのが不思議な感覚。
そしてその不思議な感覚に輪をかけているのが、ロケーションの場所がハッキリとわかっていないのところ。途中の印象的なシーンに、どう考えてもギリシャあたりの石造の建物が爆撃で壊れたあととしか思えないようなロケ地で撮影されているのだけれど、これがどこか全くわからない。
今では、おそらく何かしらに直されてるはずなので、そういう意味で二度と撮れない映像があるというのも面白い点。
というような、瀬戸内海の気楽な海洋気候に呑まれた陽気なロードムービーなのだけれど、ところどころで戦争の傷跡と共に、出演者それぞれの辿ってきた痛みをもリアルに魅せる、間違いなくこの時代にしか撮れない映画。
書けば書くほど、これほどインディペンデント色が強い映画はないような気がしてきたし、日本映画の不思議なところでもある。