結局、昼過ぎまで眠れずに、起きたら19時半。


何に追われるでもない、火曜日。


布団の中で、スマホ。


まあ、YouTubeをなんの気もなく開けるのです。


で、20時からのこのプログラムがあることを忘れてることを思い出す。




GRAPEVINE -“『In A Lifetime』特別編”




急いで、つけると、一曲目の「いけすかない」。


いけすかない、ってタイトル。


まんま、自分に返ってきてる気がするなぁ。


そう思いながら、見入る。


魅入られる。


変な話、この手の長い動画は途中で飽きるのがボクの悪いところで、キリのいいところで夕飯の支度でも…と思っていた。


うん、無理だった。迂闊だった。


ロフトから降りて、パソコンを急いで起動。


二曲目の『スロウ』を片手に、様々な後悔を浮かべてる。


なぜ、もう少し早く起きれなかったのか。


なぜ、トイレに行けないままなのか。


なぜ、ビールがないのか。


酔いしれない民。


しかし、ショーマストゴーオン。


轟音なら、ウォールオブサウンド、そのアレンジなる「スロウ」。


セカンドアルバムの再現ライブである『In A Lifetime』であるが、もう手馴れたものの、楽曲の円熟味。


ようやく年齢が追いついたか、とも目されたり。


だからこそ欲しい、ビール。


嗚呼、冷えたビールがないなんて。


いや、これでは MOONRIDERS になっちまう。


好きなバンドの条件、というか共通項。


1、多作。

2、多彩。

3、多数の作曲者。セッション曲があればなお良い。


これを満たしている、GRAPEVINEと、MOONRIDERS。


そして多作故に迷う、黒のWALKMAN。


何を入れようか。


そう思ううちに、来たるは『光について』。


代表曲がここに来て、あとの盛り上がりは大丈夫なのか。


無論、大丈夫である。


名盤『Lifetime』の凄さは、『スロウ』『光について』を序盤に置きつつ、キチンとそれらと同レベルの楽曲をラスト前に置いてあることにあるから。


そこから、インスト「RUBBERGIRL」。


デビュー2枚目にして、インストを入れるバンド。


演奏技術があるからこそできる、恐ろしき冒険。


ここからの三曲は、深淵部。


「Lifework」のユラユラと漂う、もしくは伸びきったテープから歌われる倦怠感。


「25」は一転、転がり落ちるような、ロックンロール。
この危なっかしさで成立する、ロックンロール。
誰かが、「最近のロックンロールは、ロックだけど、ロールが足りない」と言ってたけれど、この曲はロールしてる、ロックンロール。

と、今日観て思う。

こんな、ロールしてる曲、逆にこの曲以外に知らないかも。

なんて。


「青い魚」は、カバー曲。
作曲は、大瀧詠一さん。作詞が松本隆さんではないことは覚えてる。
そういうとこの抜け具合が好き。
王道は、王が行け。そして蛇の道は、蛇。

「スロウ」を聴きながら、ウォールオブサウンドだなぁと思うけれど、そういうアレンジを好みとして求めたのは、大瀧詠一さんだったのを、何かで読んだ。(不確定な部分が多い。)

そのリスペクトをサラッと混ぜたのかなぁ。

なんて思う。

そして、楽曲に溢れるこの “モノにしすぎ感” 。

カバー曲が少ないバンドだけれど、やればこんなに “モノにする” バンドは他にない。

その代表として挙げられるのが、UNICORN の「ニッポンへ行くの巻」。
作詞作曲者の奥田民生さんをして、「してやられた」と思ったとか。
所感としては、同じ『七人の侍』を参考としながらも、UNICORNは、「スターウォーズ」っぽくなり、GRAPEVINEは、「荒野の七人」になった感じだ。


全く伝わってないと思う。


ここから、再びインスト「RUBBERGIRL No.8』から、間髪入れず『白日』へ。

くるりの岸田繁さんが、思わず “白目” を剥いたとか剥かなかったとかいう、ストレートなロックンロールチューン。

曲順の緩急の付け方が良いことがよくわかるな、ここら辺で。


そして、「大人(NOBODY NOBODY)」。

ベース担当の金田さんがトライアングル(楽器)を持つだけで起こる笑い。

ここら辺の “抜け” のユーモアセンスが、GRAPEVINEたる所以だよな…。

そして、一旦始まれば有無を言わさない演奏。
(ドヤ顔で楽しそうに演奏する、ベーシスト金田さんがいちいちツボに入る。)

トライアングルを使った楽曲でこんなにカッコいいのは、くるりの「ワールドエンドスーパーノヴァ」のライブバージョンくらいだと思う。


後半のセッションパートでもう一度、盛り上がりをつけて、大名曲「望みの彼方」へ。

もう題名から大名曲。

この曲があるから、序盤で出し惜しみせず、「スロウ」や「光について」を置けるし、「Lifework」のようなゆるい世界観の楽曲から、「青い魚」というカバー、「RUBBERGIRL」というインスト、「大人(NOBODY NOBODY)」で見せるユーモアも、引き立つというもの。


「望みの彼方」、一時期死ぬほど聴いたなぁ。


そして、本編ラストは「HOPE(軽め)」

GRAPEVINEは基本的にアルバムの最後に、肩の力の抜けた、良い塩梅の楽観的な楽曲が来るのだけれど、この曲も「望みの彼方」で約束されたクライマックスを壊すことなく、それでいてエンドロールのような安心感とともに、元の生活に返してくれる楽曲として機能してる。

(どうでも良いけど、この「HOPE」って、タバコの銘柄の方なのかな…。そうすると、“軽め” の意味も変わってくるな…)


さて、ライブ自体はここまでが第1部、第2部ではこのアルバム以外の楽曲、このアルバムでは見せきれないバンドの魅力が発揮される楽曲が演奏されたのだけれど、今回はここで終わり。


ボクは勇んでトイレへ行ったのだけれど、「ここで終わりなのか…!」と、パソコンへ戻って、文字通り膝から倒れ落ちたわけである。


しかし、アンコールではないけれど、もう一曲「熱の花」がこのあと配信された。

この曲、ファーストアルバムのボーナストラック的な立ち位置で収録されているのだけれど、完成版は音源としてまだ発売されてなかったりする。


そんな楽曲をアンコール曲として、この特別編に入れるあたりが、GRAPEVINEのクセになる “抜け” のユーモアセンスだと思うし、観続けることの出来るライブ映像だよな…と思いながら、二周目を観終えている


いやぁ、やっぱビールを飲みながら観る、GRAPEVINEは至高。


多分、今夜はこのまま、ライブ映像ばっか観るんだろうな。