こんばんは、日下です。









『希望の灯り』 
トーマス・ステューバー監督





今年観た洋画の中で一番好きな作品




なんなら、今まで観た映画のなかでも、上位に食い込むくらい好き。



まず何が良いって、とにかく一つ一つのカット

どこを切っても、構成に狂いがないし、ハズレもない。

で、カット割りに関しては、習得して得る監督と、感性でできちゃう監督がいると思うのですが、この監督は間違いなく後者


まあ、観てる本数が少ないのでなんとも言えないのですが、そこをそう切り取ったらこの映像ができるんだ!みたいな発見が今回はかなりあった。


個人的には、スーパーの天井近くから見下ろすカットがかなり好み。ニヤリ



そしてそれに伴う、キャラクターの描き方

色々な理論があると思うのですが、やっぱり役によって少しずつ変わってくると思うのです。

そして、物語が進むに連れての変わりゆく関係性を、セリフに頼るのではなく、カットだけで説明する技量が物語全体をスムーズに見せていて良い。

あと、人間って無意識のうちにやってる行動ってあると思うんです。
そのさりげなさの切り取り方が、とてつもなく良い



物語面では、スーパで働く主人公と上司の関係性が好み。

この上司は、自分のことをあまり語らない。

ボクは、黒澤明監督の『赤ひげ』が大好きなのだけれど、何が好きかっていうと、“赤ひげ” はあまり語らないで、観客や映像のキャラに対しても基本的に、生き様だけを見せてる点
でも大きく自分語りしてないのにも関わらず、観客は “赤ひげ” を理解できてる心持ちになる、あの作品構造がすごい好き。

そして、それと同じくらい『希望の灯り』の関係性は好きだし、丁寧に描いている


そして、だからこそ結末が訪れた時の、胸のざわつきや、寂しさが身に染み渡るのだと思う。




あの感じは、間違いなくこの映画じゃないと体験できないんじゃないかな。




他にも、劇伴もとにかく良いとか、女優さんも良かったなとか、東ドイツってこんな世界観なのかだとか、色々話したいし、知らないことも多いし、とにかく良いところが多い!




因みに、英題は『In the Aisles』

和訳すると、「通路にて」となるのだけれど、この通路は、主な舞台となっているスーパーの “通路” と、かつて東ドイツ時代にはトラック運転手だった上司が懐かしむ “通路” (アウトバーン)の二つがかかっていると思うのだけれど、日本語にすると妙にチープになるのがむず痒い。

そういう意味で、『希望の灯り』というのは悪くないけれど、本編とはあまり関係ないのが少し悔しいところ。

と、思ったけど、ここまで書いて、もしかするとトラックのヘッドライトのことを “灯り” としてミーニングしてるのだとしたら面白いな、と思う。




ま、知らんけど。ニコニコ




それにしても、彼らが見ようとしてる海というのは、どのような表情なのだろうかと、少し気になる。