ランドリーいけました、日下です!
椎名林檎『三毒史』
スガシカオさんと同じく、中高生の頃から聴いているアーティストです。
シンガーソングライターのオリジナルアルバムとなると、どうしてもリリースの間隔が広がってしまうのですが、それ以上に充実した内容。
まず、一曲目の『鶏と蛇と豚』が読経から始まったのはビックリしましたが、
それこそ、スガシカオさんのアルバムが、1音目の安心感から入ったのとは、真逆。
曲としては、アルバムラストの『あの世の門』と相対する仕様で、こんなにオープニングとクロージングがハッキリしているのも珍しいな…
と感じていたのですが、思い出してみるとそうでもなかった。
ファーストの『正しい街』にしても、セカンドの『虚言症』と『依存症』にしても、サードの『宗教』と『葬列』にしても、アルバムの入口と出口は用意してくれてたんだな…と、今更気づく。
とは言っても、それを堂々と打ち出してるのは初めてな感じもする。
あと、一曲目で “生まれ”、ラストであの世へ、というコンセプトがはっきりしているのも、初かな…
そして、間髪いれず『獣ゆく細道』へ。
今回は偶数番が、男性とのデュエットなのですが、それぞれのアーティストと対峙している感じが、凄くいい。
個性のぶつけ合い、“&” じゃなくて “VS” な感じ。
しかも、全身全霊の。
その中で一番如実なのが、エレファントカシマシの宮本浩次さんと共演しているこの曲であり、アルバムの二曲めに配置した理由なのかな、とも。
ここから三曲目の『マ・シェリ』。
一聴目で、全体を通してこの曲と11曲目の『ジユーダム』の声が心なしかリラックスしてるな…と思ったのですが、歌詞カード見て驚き
…東京事変!
この、してやられた感というか。
知ったきっかけが、東京事変から入った組なので、
凄く嬉しい
そして。相変わらず刄田綴色さんのドラムは手数が多いのに、タイトでムダがなくて、カッコイイ!
そしてこの “緩” の後に、圧倒的 “急” の『駆け落ち者』。
個人的に、まさかの BACK-CHIK の櫻井敦司さん。
持ち味がギュッと詰まってる、スピード感たまらん。
そこから、『どん底まで』、『神様、仏様』、『TOKYO』。
今回のアルバムは、全体的に曲が短いことと、
かつ楽曲間ののギャップを省くという椎名林檎さんのこだわりも相まって、
一見バラバラに見える既発のシングル群が、
メドレーのように聴こえる不思議。
現代の、物語絵巻みたいなイメージ
(ビジュアルイメージは中世ヨーロッパですが…)
そして、向井秀徳さんの “冷凍都市” フレーズに導かれて始まる『TOKYO』の流れ。
レベル高すぎやて…
個人的ハイライトの二曲、
『長く短い祭』と『至上の人生』。
『長く短い祭』は、もともと浮雲さんの声が好きというのもありますが、
東京事変の『御祭騒ぎ』の世界観にも通じる、椎名林檎さん特有の刹那感がとても心地よいのです。
“まして若さはあっちゅうま〜” のフレーズとか。
そしてそこからの『至上の人生』は、一匹オオカミな歌唱に心打たれる。
デュエット曲あり、東京事変とのコラボあり、みたいな面がクローズアップされるほど、この曲の孤独が際立つのが、なんともドラマティック。
ここから、ヒイズミマサユ機さんとのデュエット『急がば回れ』、
再び東京事変がバックにつく『ジューダム』、
トータス松本さんとのデュエット『目抜き通り』。
緩急と硬軟自在のナンバーで最後のスパートをかけて、『あの世の門』へとたどり着く、一代スペクタクル。
それにしても、『目抜き通り』の歌い始め、トータス松本さんって、始め気づかなんだ…
もちろん、既発シングルが多いということもあるけれど、
楽曲の充実とともに、短めの楽曲群とコラボ曲の配置、
またその緩急で魅せるアルバム全体の流れが、
現代の一生を描く物語の完成度を押し上げている…気がします。
いや、ホントに途切れどころがないから、電話取るとき困るもんな…この一枚