実際に行われた、あるマンションの大規模修繕工事に関する談合・リベートの事例を紹介しましょう。
このマンションでは、大規模修繕工事の工事業者を公募する際に、「資本金が1億円以上」という条件のほか、いくつかの見積り参加条件がつけられていました。その結果、5社の業者が見積りへの参加を希望し、見積金額を出してきました。その見積金額の一覧表には、次のような金額が並んでいます。
A社:1億9200万円
B社:1億9800万円
C社:1億9900万円
D社:2億100万円
E社:2億500万円
この数字を見て、何か感じないでしょうか? 5社の見積金額はあまりにも近しいと思いませんか? そうです、これは明らかに談合をしている金額なのです。
実は、この見積りはコンサルタント(設計監理者)が入って取りまとめたものです。そして、公募の前にコンサルタント(設計監理者)が作った設計概算予算は2億100万円でした。この設計概算予算を100とすると、5社の見積金額はそれぞれ、A社が99.5、B社が98.5、C社が99.0、D社が100.0、E社が101.9となります。
最終的には最安値をつけたA社が工事を受注したのですが、A社の正体はこのマンションを管理する管理会社の工事部門でした。コンサルタント(設計監理者)が出した設計概算予算、5社の見積金額、最終的に受注したA社の正体……、どこをどう見ても談合の案件です。完全に「やられてしまった」ケースだといえるでしょう。
そもそも、コンサルタント(設計監理者)を選定する時点から怪しいところは伺えました。管理会社からの提案で、コンサルタント(設計監理者)を選定する際にも厳しい見積り参加条件が課せられており、選ばれたのは見積りに参加した3社のなかの1社だったのですが、そのコンサルタント(設計監理者)を紹介してきたのも実は管理会社だったのです。
このケースは、前述の見積金額を見てもわかるように、誰が見ても談合であることは疑いようのない事例です。
ただし、最近はこのような明快でわかりやすい談合事例は減ってきています。より巧妙に、より秘密裏に談合が進められるようになり、談合の存在を見抜くことが難しくなってきているのです。