私が信頼しているジャーナリストの山岡淳一郎さんは、「生き延びるマンション」という自身の著書の中で、こんなケースが報告されていました。
2017年の春、京都市右京区の団地型マンションが数年前に実施した大規模修繕をめぐって激しく揺れていました。大規模修繕は、入居して日の浅い管理組合理事長のリードで行われました。マンションの個数は350戸、築約40年で3度目の大規模修繕でした。
理事長は管理会社の紹介で改修系大手設計事務所をコンサルタントに選び、手続きを進めます。理事長は、コンサルタントの設計事務所から「工事はおよそ3億円程度で可能」と聞き、施工会社4社を集めて相見積りの入札を企画します。住民環境の集会で、公正を期して同時に4社の入札書が開かれました。すべてが順調に進んでいるようでした。ところが、見積書の金額を見た瞬間、理事長がパニックに陥ります。
「5億2,000万円」。最も低い工事費の見積り額がこの金額だったのです。理事長は「話が違う」とコンサルタントに抗議の書簡を送りますが、「三億円と確約した覚えはない」と、跳ね返されます。打つ手が見出せないまま時間がズルズルと過ぎ、着工が近づいて押し切られました。蓄えていた修繕積立金だけでは足りず、管理組合は1億5,000万円もの借金をして3度目の大規模修繕工事を行ったのです。
その間、大多数の住民は「専門家に任せておけばいいよ」と傍観していました。しばらくして、管理組合の理事が一新され、40代の女性心理士がある会社に相談し、設計事務所の悪質さに気づきました。女性で上を語ります。
「事前に他のマンションと情報交換していたら、2億円近くもドブに捨てはしなかった。悔しいです。理事長のなり手がいなくて、事情にうとい人に任せた結果です。管理組合が目をさまさないと何も変わりません」
高額の工事費は、どのように使われのでしょうか。こう推測します。「その設計事務所は京都の一頭地に会社を構えていますが過去に何度もトラブルを起こしています。今回も設計監理のコンサルティング料を安くして管理組合に近づき、施工会社に高い費用で工場を請け負わせ、キックバックを受け取ったのでしょう。管理組合には高い買い物になるのです。あの設計事務所の仕事はしないと宣言した、下請けの工事会社もいます」
大規模修繕工事の終了後、管理組合は、大規模修繕工事を請け負った施工会社と一緒に建物点検をしました。建物点検は契約書に含まれています。あちこちで不具合が見つかりました。特に屋上の防水がずさんで、施工会社は全てやり直します。費用は施工会社持ちです。管理組合は、コンサルタントを通さず、直接、施工会社と交渉してアフターフォローを進めています。