管理会社や工事業者などが大規模修繕工事を促す際によく使われるのが、「大規模修繕工事をすれば、マンションの資産価値が上がります」という殺し文句です。しかし、大規模修繕工事をすることが、マンションの資産価値の向上に直接つながるかというと、私はそうは思いません。
そもそも「資産価値」とはなんでしょうか? わかりやすくいえば、マンションの中古での売買価格だと思います。
ここで、大規模修繕工事とマンションの資産価値を、会社経営で使うバランスシートを例に考えてみましょう。大規模修繕工事を実施する手前では、建物の劣化が進み、建物の資産価値は減少していますが、修繕積立金はこれまでの期間でたくさん貯まっています。一方、大規模修繕工事を実施した後では、建物の資産価値は上がりますが、その分修繕積立金は大きく減少しています。
バランスシートのトータル面積は、大規模修繕工事の前後でも変わるものではありませんので、「マンション全体の資産価値は、実は何も変わっていない」といえるのです。その証拠に、中古マンションの販売価格を見ても、大規模修繕工事の終了後にマンションの売買価格が一気に値上がりしたなどという話は聞いたことがありません。つまり、大規模修繕工事の実施の有無自体に、マンション全体としての資産価値が左右されることはないのです。
マンションの資産価値を高めるためには、
◆支出を抑え、修繕積立金をしっかりと貯めておくこと
◆管理費と修繕積立金がリーズナブルであること
◆マンションの財政が長期的に破綻を迎えないこと
ということがポイントとなります。
マンションの資産価値向上につながるのはこうした側面であり、大規模修繕工事ではないということを覚えておいてほしいと思います。