2003年9月11日に椎間板ヘルニアの手術を受け、「生きていることがいやになるほどの痛み」から解放され、痛みを伴わずに座ったり歩いたりできる世界を手に入れた、その翌年の夏休み(8月)に、またその痛みはやってきました。
それはぜんぜんたいしたことの無い、ちょっとした痛みでした。でも。それを感じた瞬間、私は自分の顔から血の気が引き、青ざめていくのがわかりました。
「あっ、これは・・・、あの時と全く同じ痛み」じわじわと不気味に、しかし確実にやってきました。想像もしていなかった「再発」という二文字が頭に浮かび、地獄の苦しみに耐えていた日々のことが思い起こされました。
しばらく様子を見ていましたが、痛みはあっという間に、前回の痛みを超え、もう杖なしでは歩けない生活に戻ってしまいました。
このとき、杖を突いて歩かなければならず、初めてわかったことがいくつもありました。
まず、雨が降ってきた時の経験です。カバンから折りたたみ傘を出してさそうとすると、右手にカバン、左手に杖、傘をさす「手」がありませんでした。杖をつく人の気持ちが初めてわかった瞬間です。そして、カバンをリュックに代えて傘がさせるようにしました。
また、駅の人ごみや、満員電車が恐ろしく怖いのです。杖を突きながら、痛みをこらえて歩くので、スピードが遅いのです。人の波に乗って歩くことができません。この怖さを初めて経験しました。ラッシュ時には駅に降りたら、隅っこのほうで、人の波がなくなるまでじっと待って、それから階段の手すりを伝わって降りていきます。
肩が少しぶつかっただけで転倒してしまうし、くしゃみや咳は、失神しそうなほどの激痛が走ります。
私が健康なときには、そんなこと考えもしませんでした。
杖を突いて、そして、そんな経験をして、初めて学ぶことがたくさんありました。
そこで「人間力」が養われたと思います。