私がお手伝いさせていただいている経営者の勉強会において、昨年東海バネ工業株式会社 代表取締役社長 渡辺 良機さんのお話を伺うことができ、あまりもの感動だったので、その哲学を少し文章にしてみました。
デフレ脱却の道筋が見えない中、多くの業界で消耗戦ともいえる価格競争が激化しています。自社の競争優位を見失ったまま、合理化を求められ続ける現場の疲弊は増すばかり。
今回お話を伺った東海バネは、この悪循環からの脱出に成功し、業界でオンリーワンのポジションを築かれました。その戦略は「フルオーダーメイドのバネのみを手がける"多品種微量生産"に特化し、価格競争はしない」というもの。
「やること」だけでなく「やらない」ことを明確に定めた戦略によって、現場は不毛な苦労から解放され、働き甲斐が向上。誇りを持って働く職人の高い技術が各方面で評価され、今や東京スカイツリーや人工衛星など最先端の現場に同社のバネが採用されています。
この「やること」と「やらないこと」を明確に定めたことがポイントです。大量生産のレッドオーシャンには入ることがなく、超微量生産だけにこだわったところが社長の決断だったと思います。
しかも、超微量生産のために、東海バネ工業は、卓越した製造技能を持つ職人の力や、さまざまなニーズに対応できる設計をはじめとする技術力、製造に必要なノウハウの蓄積や活用によって、平均ロット5個という多品種超微量生産に特化した経営を行ってきました。
多品種超微量に応じてきたがゆえに、特定の顧客からの定期的な発注はほとんどなく、既存顧客からの発注が数年に一度であることも珍しくありません。このため、一度でも取引のあった顧客の情報については、何らかの形で保存することが必要であり、30年ほど前からオフコンによる基幹システムを構築してきました。今となっては当たり前となったIT化です。
これらが評価され、ポーター賞という栄誉ある賞を受賞されました。温厚で笑顔の絶えない渡辺社長のまなざしには、「やること、やらないこと」を明確に定義し、ブレない経営の軸に据える。という哲学を渡辺社長から直々に教わりました。
感謝です。