お気に入りのおもちゃのボール。
さて
あれほどきつく頼んだのにも関わらず、叔父は口を割ってしまったようだった。
そのいきさつは、母の話をまとめるとこうだった。
私のからの電話を、愛人だか浮気相手と勘違いした叔母は、
私と会って帰宅した叔父を問い詰めたそうだ。
叔父は当時もう70近い、特段モテる系でもない普通のおじさんだったが、
長年銀行で役職についていたためお金もあったし、
そもそも叔母のような顔だけの女を妻に選ぶような男だしで、女遊びを疑われたのだ。
叔父は、潔白を証明するために、叔母に正直にすべて打ち明けてしまった。
せめて義理兄のことだけでも隠しておいてくれれば良かったのに、それすらも。
私の相談の内容を知った叔母は、驚いて兄である父に電話を掛けてきた。
その件を、父は母の家へ来て話したそうだ。
「いったい、こんなに経ってから何をするつもりだったの。」
母は私にそう問うてきたが、母の理解など期待出来ないのはわかっていたため、
私は「謝って欲しいと思っているだけだ」と答えた。
今さら謝らせたって何が変わるの、と母は言った。
ほら、どうせ私の気持ちなんてまったく理解していない。
私は返事もしなかった。
すると母はこう続けた。
「あんた、まさか今付き合っている男にお金でもせびられているんじゃないでしょうね」
一瞬で頭に血が昇った。
母は、私がお金目当てでこんなことをしたと思っているのだ。
もう話もしたくない。
「お母さんにはわからないんだよ!!」
ドラマのようなセリフを投げつけて、私は自室にこもった。
母はその後もひとりぶつぶつと、みっともない、恥ずかしいったらない、とつぶやき、
でも私に向かってはそれ以上何も言わなかった。
何もかも滅茶苦茶な気分だった。
みんな大嫌いだった。
誰を憎むべきなのかわからない。
誰も信じられない。
誰も味方はいない。
この時以上の孤独は感じたことが無かった。
これからどうやって生きたらいいのか。
今すぐ誰もいないところへ行きたかった。
ひたすらに、大好きな漫画を読みふけったが、
いつものように別世界には行けなかった。
頭が、迷うことをやめなかったから。

