<序>

東京の閑静な住宅街に住む中高年ヤモメ父子の日常を描いた

シリーズ第3弾(第2弾まではエキブロにて掲載)。


これからポチポチ気が向いたときに書いていきます( ・ω・)ノ


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「5のタテのカギは・・・おーい、梅になんだ?」


父が老眼鏡越しに見上げ私に、訊いた。
最近の父はクロスワードに凝っている。


「なんだ?って、どんな問題で何文字までなんですか?」


父は鼻眼鏡の状態のまま、私をジッと見つめていた。
思わずシャツにアイロンをかけてた手が、止まる。


「梅にアイロン、まぁ埋まるには埋まるな」


そこで私は漸く父の求めている文字数が4文字であることに気づく。


「梅に…ウグイスではないですか?」


ハッとした表情で父がまた私を、見た。


「なるほど、スクイズでも埋まるな」


そこで少し大人しくなった父が、突然怒り出した。


「おい!スクイズだとヨコの答えがズワンになるじゃないか」


どうやら父にとってのクロスワードは脳トレではなく
ただの暇つぶしのようにも見える。
そうして、その暇つぶしの相手は、この家で唯一の話し相手である私のようだ。